乓楼と參砅のお話。
參砅(みつり)は生まれつき眼球が無く、親や親戚、周りの者達から恐れられていた。
參砅はずっと孤独で、一人ぼっちで…それでも參砅は皆に恐れられつつも頑張って今の生を生きる…
死ぬことは許されない世界で、生きる…
そんな參砅だが、とうとう限界を迎えてきたようで…
死ぬことは許されないと分かっている…でも、もう生きていられない。そう思った參砅は崖の上に来た。
「僕は…生きてても、皆に必要とされない…悲しい…かなしい…かな、し…い──」
意識が朦朧とした中で小さく自身の生をボヤき、落ちようとしたところで後ろから誰かに腕を掴まれた。
「駄目だ。逝っては駄目だ…逝ったら地獄に落ちるぞ…」
後ろの者の言っていることは間違ってはいない。いないのだが…
「逝かせて…僕に生きる価値なんて…無いの…僕は、皆に、恐れられているから…」
…分かってる、分かっているんだ。こんなこと言ってはいけないって…でも…
「そんなことは無い。」
なんで…?
「なんで…そう言い切れるの…?」
「儂がお前を、必要としているからだ。」
「…うそ…そう言って…僕の顔を見て…怖がるくせに…」
「そんなことは無い。」
「っ…僕の顔を見て、言ってよね──」
後ろの者へ振り返るとそこには…
「…あなたは、?」
黒狐のお面を付けている黒服の青年は、參砅の顔に巻かれている包帯に触れ解いていく…
「眼球が無いのか…まぁ、分かってはいたが…」
「…なんで…怖がらないの…?なんで…」
「儂が何故お前を怖がらないのか、か?そうだな…"透視"って知っているか?」
透視とは、壁の裏側が透けて見える。とかそういう感じの能力である。(※雑)
「…しってる…」
「透視のおかげでお前の顔が、包帯越しでも見えるんだ。」
「…そうなんだ……あの、いつ…離してくれるん…ですか…?」
会話をしていて気づかなかったが、この男はいつの間にか參砅をお姫様抱っこしていたのだ。
「…離せばどうせまた飛び降りようとするだろう?」
「…しないよ……あの…いきなり知らない人に…抱えられると…すごく…こわい…」
「…仮面を外せばいいのか?」
…そういう問題ではないんだけどなぁ。(參砅の心声)
「……これでいいか?」
黒狐の仮面を外す青年。
目の色は黄色で左目には傷、右半分の顔には火傷痕…すごく痛々しい顔をしている。
「…あなたの顔は見えない…でも、痛々しい顔をしているのは分かる…なんでだろう…?」
「お前の、そういう能力なんだろうな…とりあえずここから離れて、隣町に行くぞ。」
「え…でも…僕は…」
「安心しろ。お前みたいなやつが沢山いるから、お前だけじゃないから…安心しろ。」
「…本当に…いいの…?」
「嗚呼。…名を聞いてもいいか?儂は乓楼(はうる)」
「僕は…參砅…よろしく…乓楼…」
參砅は生まれて初めての笑顔を、乓楼に魅せた。
「ふん。良い顔をしている…こちらこそ、よろしくな。參砅」