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華麗なる一族

今の私は無職の身分であるが社長クラスの知人が何人かいる。その中で1番のビックネームは私の住んでいる地域でチェーン展開をしているうどん屋の社長だろう。今回はその華麗なる一族の話だ。

その人の出会いは姉がかつて働いていたカラオケバーだった。従業員は店長の兄貴分と姉の2人で切り盛りしていて、盛況な時は座る場所がなく立って飲む人がいる人気店だ。

その当時その界隈では姉は有名人で全く関係の無いお店や人々の前で「姉の弟」と言えば話が通ってしまうぐらいの有名人だった。

私がまだカラオケバーに通い始めた頃、その日の夜は兄貴分と何やら親しげに話している人がいた。その人こそ今回の主役の社長だった。初めこそお互いに接点がなく無視し合っていたが、その内に兄貴分が気を回してくれて「姉の弟」である事を紹介してくれた。

私も例に漏れず「姉の弟です。」と自己紹介をした。そうしたら相手は驚きそこから話が弾んだ。まさか今日に至るまでその一族と因縁があるなんて当時はゆめゆめ思いもしなかった。

その日からその人とは度々カラオケバーで出会いよく話す関係になった。性格はとても陽気で破天荒、良い意味でぶっ飛んだ人という印象を持った。最初こそは姉の弟と記憶してもらえたが次第に名前で呼んでもらえて更に仲良くなった。そうしていく中で次第にうどん屋の社長であることを知った。

後々になって知った事だが、私とは2回り歳が離れていて兄貴分とは幼なじみだ。出会って30年40年の仲なのだと言う。私はその話を聞いて羨ましいと思った。近場にそんな親友がいたらさぞ楽しいのだろうと思った。

1度だけ家に招待してもらえた事があった。高そうな車が何台もあり家も広かった。そのうち時計の話になり200万300万する時計がパッと見だけでは分からないぐらいあった。と言うことは年収1000万はくだらないだろうと思った。なんとも豪華な話である。

その後もその人とは仲良くしてもらえたが、ある日新たな事業展開として地ビールを作るという話を持ち出して来た。

初めての試みで、まずはビールを何円で売るかについて兄貴分と何時間にも渡り話し合う場面に立ち合えた。

正直な話帰るタイミングを失い暇なので聞いていただけに過ぎない。素人が口を挟める空気では無かったので黙って聞いていた。何を言っているか分からない反面、経営者目線のコンセプトが事細かに聞けたので非常に有意義な時間だった。ただ私が経営について素人だった為に非常に惜しい場面ではあった。

何やかんやあり、地ビールが完成。ビール専用のバーも開業した。そこの店長は当時まだ中学卒業したての長男が務める事となった。本人も乗り気であったので、さすが華麗なる一族。考え方がまるで違うと思った。

そのビールは、ホップが効いていて口当たりがとても柔らかく炭酸もキツくない。女性でも飲みやすい印象を持った。それでいて店長がビールやバーに出す食べ物に関してとても勉強熱心で、日夜試行錯誤を繰り返し1週間前とは違い味や雰囲気が改良されている事がある。親子でバーというものを研究しにヨーロッパ中を駆けずり回った時もあった。中学生と言えど侮ることなかれ。

私もこのビールバーにちょくちょくとだが顔を出している。そのおかげか社長と会ったら毎回抱きつかれお礼を言われる。「いつも守ってくれてありがとう。」と言われるのだ。もちろん悪い気はしない。私はそんなつもりで通っていなかったので、なんだか頭を掻き恥ずかしい気持ちになる。

そんな感じでこの華麗なる一族と仲良くなれた。

だが1番驚いた事は、このうどん屋の先代と大叔父が仲良しであった事が驚いた。なんでも大叔父の作る焼き物のファンで大叔父が経営しているカレー屋に顔を出しているとの事だ。試しに大叔父に聞いてみたが、確かにうどん屋の開業当初よく手伝いに行っていたと聞き裏が取れた。

私はその事を聞き、なんという偶然、運命というはなんとイタズラ好きなのだろうと思った。この華麗なる一族と私の一族との因縁は確かに存在するのだと思った。

この出会いは運命か必然か……どちらにせよこの先も仲良くしていきたいものだ。


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