ワールドトリガー第245話「若村麓郎」感想
ジャンプSQ2024年10月号 ワールドトリガー第245話「若村麓郎」感想です。
まずは恒例掲載予告。
1ヶ月引っ張って来た質問の答えを待ちわびていた読者を豪快にうっちゃる展開に、Twitterは大ウケでした。
1ページ予告というシステムまで利用する、情報の出し方が本当に巧みだと唸らされます。本誌派ならではの楽しみですね。
今回は(今回も?)非常に考えるところが多い回でした。
若村は葛藤を表に出してこなかったから、若村と修の違いを唐突に聞かれても何を言い出すのかというヒュースの疑問は至極妥当です。
若村は自分と修を比較していますが、実は今の閉鎖環境試験で諏訪7番隊が躍進しているのは諏訪隊長の手腕です。けれど、若村には7番隊での諏訪の姿が見えていないので、今の諏訪隊の成績も修の手柄だと思っているかもしれないと思いつきました。
閉鎖環境試験で、自隊はずっと10〜11位のままなのに、11位スタートの諏訪7番隊が2位にまでなっている、まさにB級ランク戦の三雲隊を思わせる上昇。それに加えて、試験中に電話やメールで若村にアクセスしているのが修だけ。
B級ランク戦で『三雲隊長』の実績はよく知っている+香取隊は諏訪隊より上位だったから『諏訪隊長』の実績を評価できていない、のかもしれません。
修は対外的には、9月入隊で12月にB級昇格、1月の大規模侵攻ではA級隊員に並んで一級戦功をおさめ、初参加のB級ランク戦で2位に躍り出た隊の隊長ですが、本人は全然センスを感じさせないヒョロ眼鏡。若村じゃなくても俺と何がちがうのか不思議に思っても仕方ありません。
戦闘面では修より若村の方がずっと強いから修にコンプレックスを懐く必要はないし、半崎が意外に思うように周囲もそう思っているのでしょうが。
若村と修の唯一の対戦成績が黒星なので、ROUND5後の修と対戦してない半崎達が懐く『三雲修像』とは大きな乖離があるのかもしれません。
若村の話を聞いただけで、犬飼の意図を察したり修との違いを把握出来たりするヒュースが優秀すぎます。次回明らかになるのでしょうが、ヒュースが把握した「若村と修の違い」って何なのでしょう。そしてどんだけキツイことを言うつもりなのでしょう。
千佳といい若村といい、ヒュースは第三者の立場から鋭く指導できる立ち位置なのですね...今回苦言を呈するのに若村本人の許可を待ったのは、千佳を追い詰め過ぎた反省でしょうか、千佳のケースと違って閉鎖環境で若村を慰める人がいない状況を鑑みたのでしょうか。どっちもかなと想像します。
半崎のモノローグが読者の思いを代弁するもので、台詞ばかりでもスッと読み進められるのが本当に見事です。モノローグが半崎ばかりで笹森の意見が出ていないのは、案外笹森はまた別の、読者とは違う視点の意見を持っているのかなと思いました。考えすぎ?
若村と犬飼の師弟関係への配慮はヒュースの真面目さや、彼自身も師弟関係に恵まれていたことを伺わせます。ヒュースが近界民だと知っているA級隊員もこのやりとりを見ているはずですが、評価が上がっているでしょうか?
遅番の審査員だから、冬島隊風間草壁隊加古隊…今のところ師弟関係エピソードのある隊員がいないですね?次の早番に玉狛第1が入って、ログを見てくれるといいのですが…
239話で16歳組が麓郎さん連呼して驚きましたが、あそこで若村が年上に可愛がられ年下に慕われるキャラなのだと描写していたから、今話で明らかになった犬飼の時間を無駄にしたことへの責めが軽減されたんじゃないかと思いました。
『麓郎』のルビがそれぞれ違います、犬飼・笹森・天羽は『ろくろう』で半崎・一条は『ろくろー』、ヒュースは『ロクロー』。器のルビも、犬飼は『うつわ』で半崎は『ウツワ』。半崎があまり理解していない感じが出されています、日本語の表現は奥が深いですね。
比喩で花を育てる話が出てきましたが、隊長レベルだと花壇、幹部レベルだと庭園や公園を造ったりするのだろうなと思いました。
濡髪伏し目の犬飼に情緒を破壊される人が続出していましたが、去年の二宮に続き犬飼もこれほどの湿度を抱えていたとは…「おれがいなくなったらどうすんの」実際に置いて行かれた弟子を知っている影浦にも刺さる発言でした。半年も成長を見守ってくれるのは良い師匠でしょう。
修は2月10日に嵐山達の教えを受けて15日にROUND4、16日にスパイダー習得と、教えを無駄にした反省からの立ち直りを爆速で走り抜けているので、期限を切られているとはいえ展開が早すぎます。学業と任務にバイトまでこなして、若村より更に手のかかる修を3か月で育てあげた烏丸先輩はマジ聖人で超人。本当にありがとうございます。
犬飼先輩の時間を無駄にしない、と凹む覚悟でヒュースに食らいついたところで次回に続く、どれだけキツイこと言うつもりなのか今からワクワクです。
色々と妄想がはかどる回でした。ここから長文ですが、妄想を多く含みますことを前置きいたします。
犬飼と若村の師弟関係について色々明らかになりました。
週2で2時間。高3の2学期3学期、ボーダー推薦で進学先が決まってるなら学業には少しはゆとりがあるかもしれませんが、任務にランク戦に自分の訓練もして、合間に弟子を見守るとか、犬飼先輩忙しすぎです。
半年も成長を待つのは腰が据わっていると思いますが、師弟関係の開始時点、玉狛第2がいなかった状態でのタイムスケジュールだと、二宮隊の2期縛りが解けてA級に返り咲くのが次の年の4月。
従来の遠征選抜の仕組みが不明ではありますが、A級昇格すぐでは資格が得られないと仮定して、A級昇格すぐのランク戦が終わるのが8月。遠征に行けるとしても1年は先、まだ若村と訓練する時間があると思っていたからのんびり構えていたのではないかと推測します。大規模侵攻は修と遊真だけではなく、色々な人の事情を変えたということでしょう。
遠征選抜の前倒しが発表になった頃にちょうどROUND5がありました。
若村と香取隊が何かを掴みかけた感触があって、犬飼はもう少し見守り継続の姿勢に入ったのではないかと妄想します。ROUND5が2月19日なので、半年のうち1ヶ月くらいは前向きな様子見だったのではないでしょうか。
若村は犬飼の半年を無駄にしたと悔やんでいましたが、反省するのは大事だけど気に病む必要はないと思います。
『自分で考える』も確かに大事だけど一長一短で、自分で考えたい照屋はシミュ対策の時間を消費してしまっているし、自分でしたかった千佳は戦闘シミュで大きくつまづきました。
でも、それを水上隊長が良しとしたなら全く問題ないし、隊長の指示で隊員が動いている限り、責任は隊長にあると二宮隊長も言っています。
師匠と弟子も同様に、弟子が師匠の指示に従っていたのだから、半年間の責任は師匠である犬飼にあるはずです。弟子の若村が気に病むことではないでしょう。
更に妄想を重ねますが、犬飼自身にもメリットのある半年だったのではないかと思うのです。
試験が行われている3月中旬から半年前、ランク戦のお休み時期の方が始めやすいだろうから、多分9月から師弟関係が始まったとして。
二宮隊がB級降格した1回目のランク戦が終わったところ。多分1位で終わってるだろうけど、10月からのランク戦もB級残留が決まっていて。
高校では周囲が進路について真剣に取り組んでいる頃で、神田がボーダーやめる話も出ていたりして。でも犬飼自身は、除隊したら間違いなく記憶封印の対象で。
二宮に気をつかって深刻な雰囲気にしないようにふるまって、影浦隊に誤解されていても真実を教えることも出来なくて。
表面的には普段通りに振る舞っていても色々と八方塞がりな中で、真面目な後輩に指導をする時間は犬飼にも良かったんじゃないかなと、若村が気にするほど迷惑じゃなかったんじゃないかなと思います。
10月からのランク戦、二宮隊も香取隊も上位同士で対戦している中、香取隊隊員の力量を過不足なく測れた犬飼にもメリットはあったはずです…ROUND3前に村上と模擬戦をした時の遊真のような腹芸が、若村に出来るとは思えません。馬鹿正直に全部見せていそうです。
若村を半年無言で見守ったのに、太一にはガンガン物申す犬飼。
半年前には大規模遠征なんて予想もしていなかったから時間をかけて若村を育てていたけれど、太ーにはもう時間がないから気づきを待ってあげられない、環境の変化が大きそう…と考えたところで、目標の違いではないかと思いつきました。
犬飼も二宮と同じように鳩原の件を引きずっていたと判明した今、犬飼も遠征への切符を強く求めていると考えられます。
太一は弟子ではなく試験を共に戦う仲間で、成長よりも点数を稼ぐことを求める相手である、と。特別課題でも、太一向きの特別課題なら勧めるけれど向いてない課題はさせられない。
二宮は千佳とユズルを育てることを課題にしている様子だから、犬飼達とは前提条件が違います。犬飼の選抜合格条件に、隊員育成は含まれていないでしょう。
二宮犬飼の思いを踏まえると、辻や氷見はどうなのだろう、と考えました。
236話「鳩原未来」の感想で三雲隊と二宮隊の対比について考えましたが、ここにもう一つ『遠征参加の動機を大っぴらにできない』が加わりそうです。
三雲隊が遠征参加を目指していることやその動機は多くの隊員が知っていますし、臨時隊でもその目標が共有されています。
二宮隊は、一番強い動機を持っていた鳩原が不在で、残された二宮達には具体的に語れる動機がおそらく存在しない…二宮達の家族が攫われている描写がないし、近界にいる鳩原を追っていることは公言できません。アフトに連れ去られたC級隊員に知り合いがいるとも思えません。
そんな状態では、臨時隊のメンバーに遠征に行きたいから点数を稼いで欲しいと要求しにくいのではないでしょうか。
辻が生駒にまじめにやれと訴えたのは、得点が伸びないことへの焦りだったのかもしれません。
辻「この部隊の戦績が……その……仁礼さんや帯島さんの評価にも繋がるんですよ?」(220話)
言い淀んだ……に、説明出来ないもどかしさが含まれているのでは?仁礼達を動機に持ち出すことで誤魔化した?考えすぎ?
王子の「いろいろ考えてる」に辻の焦りも含まれているといいなぁと、妄想するのです。
2023年9月4日が「鳩原未来」、2024年9月4日が「若村麓郎」でそれぞれ二宮犬飼の感情面が明らかになりましたが、これ来年は辻ちゃんの感情面が明かされるでしょうか。二宮とユズル、犬飼と影浦で双方のもつれを解きつつあるけど、この先辻ちゃんとヒカリにも何かあるんでしょうか。この二人にも、鳩原が残した傷があるでしょうし。楽しみです。
『修と若村を入れ替えたら香取隊は今より上位にいける』について妄想します。
若村だと人目や評判を気にして迅やヒュースを加入させられないだろうと推察されるので、若村だと玉狛第2が2位になれないのはわかります。
修は多分、葉子が不調でも責めないだろうなと。多分そこが大きな違いじゃないかと。華さんが葉子に接しているのと同じような距離感になると思います。
妄想を重ねすぎたので何行か削除しましたが、色々妄想しているうちに、華さんが順位よりも葉子の自主性を尊重していたから香取隊が不調だったのではないかと思いました。華さんが順位を上げる為に動いていたら、多分香取隊はもっと上位にいっていたでしょう。
この香取隊の話は前述した犬飼辻にも共通しますが、『目的をチームで共有し、目的に対して正しい努力をする』ことが出来るかどうか なのかなと思いました。うん、たぶん違いますね。これだったら若村が傷つく必要はないので。
「若村と修は何が違うのか」を一か月引っ張ったからか、Twitterでの論調も『若村は<修と違って>〇〇』という評価が多くなっていましたが、異論を申したいところです。
※若村は犬飼先輩への迷惑を真っ先に考えられているので銃手仲間に好かれている
確かに最近の修は千佳を狙ったり師匠を売ったりしていましたが、修もROUND4で落とされたときに真っ先に浮かんだのが教えてくれた先輩達のことで、『いろんな人に力を貸してもらったのに』でした。
そして修は面倒見の鬼で師匠3800人予定の男です。
『真っ先に他人へ配慮できるから人に好かれる』、メガネ以外の共通点がありました。
※修は人に恵まれている
修が隊員にとんでもなく恵まれているのは確かですが、若村だって師匠や優しい銃手の先輩、厳しくも頼れるオペに優しいチームメイトもいます。
犬飼の説明の中に、若村が嵐山からアドバイスをもらう描写がありました。ROUND4前の修と同じです。
修はその後木虎から的を射た教えを受けて躍進しますが、若村は『見下されてそう』と木虎を敬遠しています。厳しい意見を受け入れられる器かどうかが分かれ目だったのでしょうか、人に恵まれていたのではなく、恵みを生かすか否かだと思います。
成長を見守るフェイズだったから停滞していたけど、ヒュースの厳しい意見を受け入れる覚悟を決めた若村、ここから変わっていけるはずです。
お悩み相談室もクライマックス、次回も楽しみです!ここまで読んでくださってありがとうございました。
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