「ワールドトリガー the Stage B級ランク戦開始編」感想2(原作との比較)
ワーステ「B級ランク戦開始編」感想、今回は漫画原作と絡めての感想を集めました。
ステージ特有のスピード感
漫画は、作者が視線誘導やコマ割りなどでどれだけ工夫しても、読むスピードは最終的には読者に託されてしまいます。好きなコマで止まったり読み返したりを読者が自由に決められるので、リアルタイムな時間感覚はどうしても薄くなります。
アニメは漫画よりも製作者側の裁量が大きくなりますが、それでも一時停止・巻き戻しを視聴者が行うことができます。ステージを録画したものの円盤や配信もここに分類されるでしょうか。
それらとは真逆で、舞台の進行は全く観客の自由になりません。
ワーステ大規模侵攻編では、次々に敵の襲撃を受ける、自分のミスで千佳をキューブにされる絶望感が怒涛のように襲ってくる、その中ですぐさま立て直す修の精神力、切り替えや判断の速さが優れていることを強く感じました。
今回のB級ランク戦開始編でも、策に嵌められたり対応をミスったりしたときに、時間が限られた状態でのリカバーがいかに難しいかが漫画よりも良く伝わりました。
だからこそ相手を先読みしたり盤面を整えたりして先手を取ることが重要になるのだと、当たり前のことですが改めて思い知りました。
ROUND2の荒船隊や、ROUND4の修がわかりやすいですね。ハメられたことに気づいても取り返しがつかないし、そこで逆転の手を打てることの価値が更に高まります。発想・決断の早さが理解できるのはステージならではの楽しみだと思います。
原作との比較
今回のステージでは、原作単行本10巻途中から13巻までを2時間30分に収めていますが、どちらかというと時間よりも登場人物が限られてしまうことの方が制限となっているように思います。ランク戦に登場しないキャラクターが多いから、ランク戦の間に挟まる、観客や捕虜関連のエピソードがごっそり省かれてしまっています。ワールドトリガー、登場人物が多すぎます。
原作と並べて円盤を視聴すると、細かく台詞が省略されたり、言葉が補われたりしていることに気づきます。耳で聴いて状況を理解しやすくする為の的確な言葉選び、シーンの抓み方に唸らされます。
もう冒頭の修の回想から、取捨選択の鋭さに痺れます。修と千佳の動機を説明し、更に二宮との因縁を短いシーンできっちり印象付けるテクニックは流石の一言です。
ROUND1、対戦相手は全然出てきません。でも当時の原作には未登場の隊長達が登場してのB級ランク戦のシステム説明は豪華で満足度が高いです。それこそ往年のジャンプ漫画だったらシルエットで登場するようなキャラまでいっぺんに登場するのですから。
11巻頭、原作だと試合中に挿入されている修とレイジの会話がランク戦前に入ります。それは合理的だよねと納得の展開ですが、ここで納得する分、ROUND3で那須隊の回想が戦闘中に挿入されることに意表をつかれます。3人分の早着替えを平然と組んでしまうのですね。
ROUND2終了後の隊室、原作では荒船→諏訪→玉狛第2の順ですが、ベイルアウトが早かった千佳の玉狛第2が先に来ています。各1コマしかないのに隊室再現は本当に尊くありがたい…レイジと堤の反復横跳びは何度でも擦ってしまいます…
ROUND2終了後、古寺がいないので解説も短いし、三輪隊や風間隊を交えての会話は一切ありません。
修「緑川と勝負する約束があるみたいで」モブ「A級(の緑川)と30本やって勝ち越した」と、さらっと補われる台詞がきれいで状況がわかりやすいです。
以下、少々冗長ではありますがせっかく書き出したので、原作にはない補足された台詞などを自分用備忘録に並べます。【】内が追加された台詞です。わかりやすくするために補われる言葉選びが的確で、勉強になります。
適宜読み飛ばしをお願いします。
ボスが来る前の屋上で遊真「【次はおれがむらかみ先輩を止めないときつそうだ】」(原作では村上との戦闘中に回想)
太一「【後から入った】鋼さんにあっという間に」古寺や小南がいないので、荒船がアタッカーに転向した話はここで初めて明かされる
三上「熊谷隊員、レイガストに炸裂弾を仕掛けていました。村上隊員はこれを看破」「これは…堤防を破壊!?」(状況を台詞で説明している)
遊真「アフトクラトルのまともな情報が手に入った」(ヒュース、エネドラッド尋問をバッサリカット、相手も菊地原から宇佐美に)
ROUND3から4の間に、狙撃手訓練が次の日の回想に並べ替えられている。
出水「ウチのお荷物くん【、銃手の唯我尊】だ」(原作だと画面に文字で表示されている情報を口頭で補っている)
出水「【ウチ来る前に嵐山さんとこにも行ってたんだろう、】嵐山さん【達】はなんて言ってた?」(嵐山隊は入り口しか描かれていないので台詞で補強)
加古「あの位置だと【銃手は】援護しにくいのよね」(原作だと【犬飼くんは】。銃手が乱戦で~と台詞が続くので合成した形)
修「迅さん【お願いがあります】」(逆にこのセリフがないことに驚きました、ステージの方に記憶が引っ張られていました)
解像度が上がること
田内さんが挨拶で、ワーステ鑑賞後にまた原作を読み返すことを勧めていらっしゃっていましたが、確かにワーステを観たことで原作の印象が変わった部分があります。
背景やセリフのみだったりで原作では描写されていない部分を役者さんが演じることで、隙間が補完されて解像度が上がるのですね。
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特にオペ関連が多いのですが、まずは実況オペが非常に優秀だということ。
役者さんが大量のセリフを記憶するのも滑舌の良さも尊敬するのですが、原作の実況オペ達は話す内容も自分で考えているのですよね。
9〜12人の動きを実況・分析し、各隊の戦術を言語化しアウトプットする。優秀すぎます。
特にこの言語化とアウトプット部分、戦闘で戦闘員を相手に状況を伝えるオペレーターならではの技術なのだと思います。実況をオペレーター以外が担当することもある、とQ&Aで明かされていましたが、戦闘員で同様の言語化が出来る人ってだいぶ限られるのではないでしょうか。この記事を書く流れでROUND2を読み返しましたが、東さんは出来ますね、流石の解説ぶりでした。
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ステージで各隊オペレーターがダンスに参加することで、オペも隊の一員なのだという認識が深まりました。
私はまだワ民になって3年程度ですが、アニメ1期のオープニングやグッズに採用されていたメンバー達を見ても、ランク戦の連載当時は戦闘員とオペは別枠扱いになっていてあまり注目されていなかったのではないかと思います。多分閉鎖環境試験でオペ達の存在感が大きくなったのではないかと想像するのですが、ワーステでも前作大規模侵攻編ではオペは声だけしか出演しません。それを経ての今回、うって変わって隊のオペレーター、実況オペレーターとオペちゃん達が大勢登場して大活躍です。
原作の戦闘では目立たないオペレーター達が、隊員と一緒にペンライトを振ったり会話に相槌をうったりする様子がそれぞれ個性的に描かれていました。特に印象的だったのが、終始指導的立場の栞ちゃんが、ROUND4で修と遊真が犬飼影浦とマッチアップした時に珍しく頭を抱えて慌てているのですね、でも東に落とされて呆然としている修には微塵もそんな様子は見せず、落ちたことも責めずに次の指示を出すのです。栞ちゃんの可愛らしさと優秀さを感じました。
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前述したように、舞台は進行が一方通行で見返すことができないので、原作より『わかりやすく』なっています。特に顕著なのが感情面で、原作の印象やワニメよりも感情表現が大きくなっているように思います。
ROUND2、荒船の「ここまで100点だな」。原作では小さなコマだし、ワニメでも淡々としたセリフ回しだったりしていたので気づきませんでしたが、ステージでは言い回しが嬉しそうでテンション高く、更にその後に荒船隊のダンスまで入っているのですごく「楽しそう」な印象が強いのです。
原作を読んでいた時は新人の策にあっさり引っかかり過ぎでは?と思っていた部分もありましたが、『うまくいっている時は操られても気づかない』もあったのだなと今更に気付きました。
同じくROUND2、諏訪が荒船に接近しての解説シーンで、加賀美が玉狛第2を悔しそうに見ています(0:16:23)、全景でもわかるくらいはっきりと。
ROUND2前の作戦会議で、修の対戦ログについて「10-0で負けてた」と笑みを浮かべる加賀美。あぁ今修を軽んじた、油断が生じたなと感じました。だから策に引っかかった時に玉狛第二を睨む加賀美がさらに味わい深い。侮っていた相手にしてやられた悔しさが表れていて良いですね。
戦いの後に贈られるという、加賀美の粘土人形に込められた思いが感じられます。今の閉鎖環境試験中に千佳と思い出話をしてくれていたら良いなぁと思いました。
その流れで、修&遊真と緑川との個人ランク戦は、大規模侵攻前に緑川の鼻っ柱を折って成長させる為のエピソードだと思っていましたが、修を侮らせる為もあったのだと気づきました。
修を侮っていたから狙撃手相手に狙撃手有利マップを出されても「狙撃手とやるの初めてなんだろう」で済ませられる。諏訪隊は緑川vs修戦に対してはコメントしませんが、一緒に行われた緑川vs遊真をチェックしているのですから当然見ているでしょう。
講評の中で緑川が「笹森が修を狙ってれば諏訪隊がもう1点取れた」と考えているけど、諏訪隊は1対1でいつでも修を倒せると判断したから、2対1で戦える時に遊真を落とすことを優先した。遊真に向って両攻撃する諏訪、ROUND2当時では気づかなくても、ROUND8の二宮対策を経た後に読み返すと諏訪が全く修を警戒していないことがわかります。
文章だけの一級戦功より、実際にぼろ負けしている戦闘ログの方が正しい材料だと判断したということでしょうか。1月上旬の緑川戦から2/5のROUND2まで(うち1週間は昏睡してましたが)修の成長が目覚ましかったということでもあるのでしょう。刮目して見よ。
ゲストに呼ばれた緑川も、遊真に8-2で負けた話をしても修相手に10-0で勝った話はしない。紳士的です。まぁそんなことをしたら、多分あとで遊真にシメられます(笑)
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ROUND4、コアデラの連携について。
解説の風間に連携のレベルが高いと評価されていますが、ステージ上で二人が辻を相手に連携して動いているのを観て、二人ともすごく練習したんだろうなと初めて感じました。トリオン体で運動能力が上がっても、連携などの動きは練習しないと身に付きません。特典映像にも東隊のダンス練習が収録されていますが、コアデラ2人もこうやって練習して連携できるように訓練したのだろうなと連想されて、解像度が上がった気がします。そしてその連携を捌く辻ちゃんの強者感もアップいたしました。
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熊谷vs村上、メテオラを打つ熊谷「玲の動きをイメージしたら〜」の傍でイメージ映像として登場する那須、大規模侵攻編で修が遊真をイメージしている時にも同様の演出がありました。トリオン体を動かすのはイメージが大事だと言われていたのを改めて思い出しました。
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玉狛第2が本当に遊真頼りのチームであること。
もうずーっと遊真が出ずっぱりで戦いっぱなしなのがステージだとより鮮明にわかります。
遊真vs村上の模擬戦の後や、ROUND3終了後に出水二宮が会話しているシーンなど、本来なら舞台にいてもおかしくないタイミングで遊真がさりげなく退場しています。着替えるわけでもないこの退場は、植田さんの休憩時間なのでしょうね。とか円盤発売前にのんきに書いていましたら、特典映像の凄まじさ…もう本当に頭が下がります。
特典映像の48:59、シアター1010で2日目のROUND3終了後に出水二宮が会話しているシーン。円盤は銀河劇場凱旋公演の映像ですが、シアター1010では遊真がそのまま舞台に残っていたのですね!気がつきませんでした!慌てて着替え時間を測った時の資料を見てみましたが、ここだけ遊真と宇佐美の退場時間を記載していませんでした、信じられない…休憩時間を挟むために時間を測る必要がないから、記録抜けに気が付かなかったようです。インシデントってこういうところで起こるんだよなぁ本当に…我ながらがっかりです。
凱旋公演は連日で公演も多いから、植田さんの休憩時間を増やす必要があったのでしょうが、東京凱旋公演からの変更だったのでしょうか、大阪ではどうだったのでしょう?二宮に注目が集まっちゃうシーンだから、気づく人が少なそうです。
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展開が忙しく、ステージ上でみんながバタバタと走り回る中、一人悠然と歩く二宮の姿が非常に印象的でした。ステージの二宮があまりにも走らないので、原作ではどうだったのだろうと考えてしまいました。
BBFによると二宮は機動6、犬飼辻は7。二宮の機動も決して低くはありません。
ROUND4で、二宮は絵馬を倒した後に北添をシールドで守っています。北添は絵馬のフォローに行くことを考慮するくらいに近くにいたとはいえ、屋上にいる北添の傍まで寄れたのだから、クールに見えて結構急いで走っていたのかもしれません(笑)
ROUND8で犬飼辻両隊員が弓場を相手に時間を稼いでいる時に、二宮もまさか歩いていたわけではないでしょう。走って駆け付けていて欲しいですね(笑)
長々と書いてきましたが今回はこの辺で。ここまで読んでくださってありがとうございました。