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なぜ今世界の中銀は「金」を買うのか?

中銀の金購入量は1971年以来最多を記録


金の国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、世界の中央銀行の金購入量が2022年第3四半期に過去最多の399トンだったと発表した。中銀による保有率は1971年のニクソン・ショック以来過去最多を記録。世界全体での金需要は世界全体で1181トンと前期比28%だった。

ニクソン・ショック
1971年8月、当時のリチャード・ニクソン大統領がインフレ高騰や失業に対する経済政策として金と米ドル兌換 (交換) 停止を発表した。米ドルは金によって相場価値が保障されていたことから、その後はドルが急落。国際通貨制度 (ブレトンウッズ体制) が崩壊し、各国は固定相場制から変動相場制に移行した。

金購入のクジラ(大口投資家)は中国か?

金保有は中銀にとって有事の際に有益な資産となるほか、長期的にも安定的な価値をもたらし、また高インフレに対するヘッジとして有効である。WGCの調査では、トルコ、ウズベキスタン、カタール、インドなどの中銀で金購入が目立っており、物価高やロシアのウクライナ侵攻といった地政学リスクなども含め世界全体で中銀の金保有は増加傾向にある。

しかし、一方では、情報を一部公開しないために国の金購入額を把握することが出来ない国、「中国とロシア」が大量に金を買い入れていると言われている。専門家筋の多くは、特に中国は対ドルへのエクスポージャーを最小限にするため、大量の金を購入していると見ているほか、台湾有事に備えている、デジタル人民元へのシフトのためドル保有を減少させ金を買っているなど様々な憶測がささやかれている。

エクスポージャーとは
投資家の金融資産が価格変動リスクや特定のリスクにさらされている金額や残高の割合のこと。

2023年は金価格が倍になる?

デンマークのネット銀行サクソバンクは、今月初めに「とんでもない予想2023年」と題して、来年の大胆な経済見通しを発表した。それによると2023年は、中国が完全にゼロコロナを克服するため、コモディティー価格が上昇。米連邦準備制度理事会 (FRB)の金融政策に対しハト派路線が台頭するためインフレ高は更に継続し債券市場を混乱させるという。各国はそのため「戦時経済」という考え方に転換。中銀は外貨準備金を減らし金保有率を増加させるため、金の価格は少なくとも3000米ドルまで急上昇するという。

この予想は一見余りにも突飛のように思われるかもしれない。現在の金価格はおよそ1800米ドルで、3000米ドルまで急騰するとはなかなか考えにくい。しかしながら、米国市場は来年の経済見通しについて、FRBの利上げ終了を見据え株式は下振れ、暗号資産市場はFTXトレーディングの破綻により迷走し、米ドルは売られ代わりに金や安全資産の円が買われると予想している。中銀が金を大量購入している理由はリスク回避である。また、我々が金を投資のポートフォリオに入れれば、強力なヘッジになることは間違いなさそうだ。

金価格推移 資料 トレーディング・ビュー


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