短編小説「 並み の快適さ」
美容が趣味である。
美しくなければ価値がないとさえ思っている
毎日美顔器をかけ
まつげ美容液で、まつげを育毛し
髪も常にサラサラを保っている。
あっもちろんシミが嫌なので、日にはあたりません。
でもその反動で休日は何もしたくない。
顔も洗わず、風呂も入らずそのままだらっとすごす。
そしてそのまま外に出たりもする。
今はマスクで顔の半分は隠れるので
良いのだが
さらに帽子をすっぽり被り
毛玉だらけ、だぼだぼのズボンのまま出る。
夏はさらにサングラスをかける
完全に別人。
この”並み”の快適さを味わってしまうと
やみつきになる。
やぶけた服も捨てずに取っておき
並用ファッションとして活用する
カバンはズダ袋、穴の空いた手袋をし
普段は絶対に入らない立喰い蕎麦に入る。
あの香りはそそられます。
いつものす、す、す、すすっなんて食べ方はしない。
ずずずずずっ。ざざざざざっ。5メートル先まで聞こえるように食べる
その時、本当に生きる喜びをかみしめる。
そんな1週間を繰り返している。
人の幸せは人それぞれです。