「時空列車」~プリモ・アモーレ~
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4人劇 (男2女2)
登場人物
白鳥麗華:女 時空列車のオーナー兼 車掌、白鳥財閥の孫娘 小さい頃から病弱で短命な運命 礼儀正しいお嬢様
長谷川:男 時空列車の運転手、白鳥財閥の執事、誰よりも麗華の身を案じている
未来:(みらい) 男子高校生 天体観測が好き、いつか新しいの星を見つけて名前をつける夢がある
希星:(きらら)女子高生 未来の夢を応援してる、スポーツ万能
作品紹介
時空列車は上り(未来)下り(過去)へタイムスリップ出来る、その動力は人の寿命、時間指定出来る、集まった人の寿命は麗華へと注がれる
白鳥家の呪い、短命が故に人の寿命を吸い取り、今日まで生きながらえている
白鳥家は裏世界では有名な財閥、世界経済の礎を築いた
本編
麗華:私は何の為に生まれて…何の為に死んでいくのだろうか?
麗華:…わかってる、悩んでもきっと、答えなんてでない事を…でも…希望を信じて…救いを求める人々がいるなら…きっと…私は…
0:マンションの屋上 (夜)
未来:…えっと…星の位置があっちだから、もう少し右かな?
0:夜空に向けて、望遠鏡の位置を合わせている
希星:未来〜!
0:屋上へ繋がるドアを開ける
希星:未来?いるんでしょ?どこ?
0:屋上の給水塔から顔を出す未来
未来:あ、希星、ここだよっ
希星:ちょっと未来!そこ、立ち入り禁止だよ?
未来:あはは、でも、ここからの方が星が綺麗に見えるんだ!
希星:(ため息)…未来はホント、星の事となると周りがみえなくなるね?
未来:あ、ねえ?希星も上がっておいでよ、今日は雲がないからよく見えるよ
希星:へぇ〜!まあ、もう未来も入っちゃてるし、怒られるなら私も一緒か
未来:ほらっ!手出して、ハシゴ途中からしかないから
希星:ふふん!大丈夫です!私、陸上選手だよ?毎日ハードルをバンバン飛んでるんだから、このくらいの高さならジャンプしたら届きます〜お気遣いありがとうございますっ
未来:もう〜希星はホントに素直じゃないな〜そんなんだから男子からモテないんだよ、顔はいいのに
希星:えっ?(照れる)ちょっと、急に何を言い出すのよ!もうっ未来のバカっ!
未来:僕は事実を言ったまでさ、早く上がっておいで、ほらっ?手、出して
希星:…ん…じゃあ、お言葉に甘えて…
未来:よいしょっ…と!
希星:…と…あ…ありがと
未来:ふふっ…上見て
希星:え?…うわ〜満天の星空、やっぱり高い所から見る空の方が手が届きそうでいいね〜
未来:でしょ?ほらっ望遠鏡合わせたから覗いて見て
希星:ん〜どれどれ?これはなんの星なの?
未来:今は夏だから、それは天の川で1番明るく輝いてる星で…
希星:わかった!こと座のベガだっ!
未来:おっ!よくわかったね?
希星:そりゃ〜もう耳にタコが出来るほど、どこかの星博士に聞かされてますからねー
未来:へぇ〜星博士か〜1度会ってみたいものだねっ
希星:(ため息)それ、自分の事だってわかっていってる?
未来:ふふふっ、僕も本当の星博士みたいに新しい星をみつけて、名前をつけるのが夢なんだ
希星:はいはい、それも何度も聞かされてますよ〜、で?見つけたらなんて名前にするの?
未来:え?…それは…まだないしょ
希星:えー?まだおしえてくれないの?いつになったら教えてくれるのよ?
未来:さあ…新しい星が見つかったら…かな
希星:ん〜それまで待てっていうの?私、おばあちゃんになっちゃいそう
未来:大丈夫!そうなったら僕もおじいちゃんだし
希星:そっか…なら待つ!でも、それまでに素敵な男性が現れて結婚しても知らないからねー
未来:ふふふっ……あ、ちょっと待って…この星は見覚えがないな
希星:え?何か見つかったの?
未来:ん〜倍率をあげてもう少し左かな…
希星:ちょっとっ…狭いんだから気をつけてよ
未来:うん…もう少し…もう少し…と…うぁっ!
希星:未来っ?!危ないっ!
未来:うぁぁ!…と、とっ…ありがとう…希星…支えてくれて…希星?…はっ!…希星〜!!
0:希星は屋上から転落する
0:数日後…駅のホーム
未来:…希星…僕のせいで…希星…っ…
0:駅のホームに列車が入場して停車する
長谷川:ご乗車ありがとうございます!
この列車は過去、又は、未来方面行きでございます、現在の自分に後悔や希望を持てないお客様はお乗りください、まもなく、扉が閉まります
未来:…はっ…電車…乗らないとっ
0:列車のドアが閉まる
未来:…ふぅ…ん?…え?乗客がいない…誰も…
0:キョロキョロと辺りを見回す未来
長谷川:ご乗車ありがとうございます!お客様っ!
未来:うわっ!…と、びっくりした…え?誰ですか?
長谷川:これはこれは、失礼を、わたくし、この「時空列車」の運転手をしております、長谷川と申します、以後、お見知り置きを
未来:「時空列車」…え?…どういう事、僕は駅のホームで、普通の電車に乗ったはずだけど…
長谷川:いいえ、あなたは自分の意思で、この「時空列車」にご乗車されました、それに普通の幸せな方には、この列車に乗ることは出来ません
未来:乗ることが出来ないって…僕は乗ってるんだけど?
長谷川:ええ、ですから、あなたには乗る権利がありましたからね〜
未来:権利?
麗華:長谷川、ここからは私が説明するわ、あなたは、下がって
長谷川:はい、麗華お嬢様
未来:え?誰?
麗華:私は麗華、白鳥麗華です、この「時空列車」のオーナー兼、車掌をしております、あなたは…ここ最近、何か悩み事や不幸な事故に合われた経験がありますね?
未来:!?、なぜ…そんな事がわかるんですか?
麗華:この「時空列車」はそんな人の前に現れ、その人の願いを叶えるお手伝いをしているのです
未来:願いを叶える…あ、じゃあ!死んだ人を生き返らせる事もできるの!?
麗華:それは出来ません、生死に関わる事や不治の病など、欲しいもの、富、権力、名声等々は叶えられません
未来:え?そんな…さっき、願いを叶えるっていったじゃないか!
麗華:私は願いを叶えるお手伝いが出来ると言ったのです、この列車の名前「時空列車」とは、過去や未来に行き、自分自身の行動や近い関係の人との出来事を変える事が出来ます…ですので、間接的には…人の命を救う事が出来ます、病や寿命では無い事に限り
未来:過去や未来に…じゃあ過去にいけば、希星を、希星を助けらるんですね!?
麗華:事故であれば、その起こる前に戻れば可能かもしれません…ですが、絶対に助けられる保証はありません、それに代償も必要になります
未来:代償?…お金ですか?
麗華:いえ…お金ではありません、それはあなた自身の命、寿命をもらう事になります
未来:僕の寿命?…でも、それで希星は助かるんですよね?
麗華:それはあなた自身の行動次第です…どうしますか?私は無理には勧めませんが…
未来:…お願いします…どうしても…希星を助けたいんです!僕の代わりに死んでしまった…希星を
麗華:…わかりました…長谷川っ!準備を
長谷川:はい、お嬢様…すぐに発車致します、お客様…いつに戻られますか?
未来:…3日前の午後9時で…お願いします
長谷川:かしこまりました、それでは「時空列車」まもなく過去に向けて発車致します!ご乗車のお客様は座席にお座りくださいませ
未来:待っててね…希星…いま行くから
麗華:……
0:3日前の午後9時 マンションの屋上
希星:ねえ?未来?未来ってばっ!ちょっと聞いてる?
未来:…え?何?
希星:(ため息)ホントに未来は星が好きだね〜ずっと呼んでるのに…ぼ〜と星ばかりみて…もう
未来:…ごめん…(戻れた、確かこの後、望遠鏡を覗いて…)
希星:で?何が見えるの?
0:望遠鏡を覗き込もうとする希星
未来:あっ、ダメだっ!希星っ!
希星:きゃあ!何よいきなり!手をつかんだりして、痛いじゃない
未来:ダメなんだ、希星、今日は帰ろう
希星:え〜?星を見るために来たんでしょう?こんなに綺麗な夜空なんだし、ちょっとくらい覗いてから帰ろうよ、それに未来が1番星好きなんだしっ!あははっ
未来:ダメなんだよ!…それに、星なんかもういいんだ…嫌いになった
希星:うっそ〜!さっきまで星々ってテンション上がって早く見て〜て言ってたくせに…
未来:…ねえ…希星…僕の夢…覚えてる?
希星:え?…うん…覚えてるよ、新しい星を発見して名前を付けるんでしょ?何回も聞かされて、耳にタコが出来るかとおもいましたからっ
未来:…知りたい?…名前…なんて付けたいか?
希星:う〜ん…そりゃ知りたいけど…でも、今はやめとく!
未来:え?なんで?
希星:…いつか、未来が新しい星を見つける未来まで、とっておきたいから
未来:希星…
希星:楽しみにしてるからね、あっ、でも、あんまり待たせないでよ、私、おばあちゃんになっちゃうからっ!
未来:…ふふっ…そうなったら僕もおじいちゃんだね(…同じ会話だ…良かった…これで…もう大丈夫だ)
希星:あっ流れ星!ちょっと望遠鏡貸してっ
未来:希星?
希星:あ〜んもうちょっと右…んしょ!きゃあっ!
未来:希星っ!危ないっ!
希星:…痛ったたた…あはは…ごめん、支えてくれてありがと、あちゃ〜…望遠鏡倒しちゃった…
0:後ろを振り返る希星
希星:未来?…え?…うそ…やだっ…未来っ!?…未来ー!!
0:未来は屋上から転落する
0:数日後 駅のホーム
希星:…未来っ…っ…ごめんね…私の…せいだ…
0:駅のホームに列車が入場して停車する
長谷川:ご乗車ありがとうございます!
この列車は過去、又は、未来方面行きでございます、現在の自分に後悔や希望を持てないお客様はお乗りください、まもなく、扉が閉まります
希星:…あっ、電車きてた…
0:急いで列車に飛び乗る希星
希星:え?何この電車…私…だけ?
長谷川:ご乗車ありがとうございます!お客様
希星:え?あなたは…
長谷川:申し遅れました、わたくし、この「時空列車」の運転手をしております、長谷川と申します
希星:「時空列車」?
麗華:やはり、来られたのですね、希星さん
希星:え?どうして私の名前を知ってるんですか?
長谷川:麗華お嬢様っ!個人情報の漏洩(ろうえい)は…
麗華:黙りなさい長谷川
長谷川:…っ…しかし…
希星:…?…何なんですか?あなた達
麗華:未来さんを救いたい、そうですね?
希星:!?なんで、未来の事も?
長谷川:麗華お嬢様…
麗華:…希星さん、あなたを助けるため、以前に未来さんがご乗車しました
希星:私を助けるため?どういう事?
長谷川:麗華お嬢様っ!それ以上は…
麗華:長谷川っ!黙りなさいといいましたよねっ!いいから下がっていなさいっ!
長谷川:はぃぃっ〜!わたくし!運転席に戻っております!何か御用がございましたらお呼びくださいませっ!ではっ
希星:なに?
麗華:未来さんは自分の身代わりに事故にあった希星さんを助けるため、この「時空列車」に乗り、過去の事故の起こる以前の時間に戻り、あなたを助けました
希星:!?…未来が…私を…
麗華:運命を変える事は出来ましたが、今度は未来さん自身が亡くなると言う結果になったのです…
希星:そんなっ!…未来が、それじゃあ意味がないじゃないですか!私が生きていても…未来がいないんじゃあ…どうして…っ
麗華:希星さん…
希星:…わかりました、私が助けにいきます!
麗華:希星さん?また同じ結果をもたらす事になるかもしれないんですよ?
希星:構いませんっ!未来が生きている世界なら、私はどうなっても…未来には…夢があるんです…私なんかじゃあ叶えられないような大切な夢が…だから…なんとしてでも生きていて欲しいんです…お願いします!
麗華:……そうですか…わかりました…長谷川っ!準備を!
長谷川:はい!麗華お嬢様…では、希星様…3日前の21時でよろしかったでしょうか?
希星:…っ…お願いします…
麗華:……
0:それから数年後 駅のホーム
0:寿命を取られ、衰弱している未来
未来:…希星…どうしてっ…うっ…
0:列車が駅に入場して停車する、ドアが開き吸い込まれるように乗る未来
長谷川:おかえりなさいませっ!未来様っ!
未来:?…どうして僕の名前を知ってるんだ?会ったばかりなのに…それにここは…知らないはずなのに…何度も来た事があるような…
長谷川:それはもうっ!未来様と希星様は我が「時空列車」のお得意様ですからっ!はっ…(口を閉じる)
未来:…なんで…希星の事も知ってるんだ…
麗華:長谷川っ!
長谷川:はぅっ!…麗華お嬢様…これはとんだ失礼をっ!白鳥家に使えて数十年、この長谷川!お客様に対してなんたる御無礼を!お許しくださいませ!
未来:…なんなの?
麗華:(ため息)長谷川…下がりなさい
長谷川:ははっ!
麗華:未来さん…私はもう何度もあなたに会っています…それに、あなたの助けたい人、希星さんにも
未来:希星…希星に?希星は今どこにいるんだ!…っ…希星…
麗華:落ち着いてください…未来さん…希星さんはここにはいません、3日前…いえ…数年前の過去に亡くなられていますから、どれだけ過去に遡ってもあなたは助けられなかった…運命として受け入れるしかありません
未来:そんな…希星のいない世界なんて…
麗華:…希星さんもそう仰られて、あなたを助けに過去に戻られました、そして、その度に、未来さん、あなたがこの「時空列車」に乗ってくるんです…何十回、何百回とそれを繰り返して、未来さんも希星さんも、もう寿命が尽きかけています…
未来:希星…どうして…僕なんかの為に…
麗華:あなたの夢を叶えるため…そう仰られておりました
未来:僕の夢…
麗華:ええ…新しい星を見つけて名前をつけるという…
未来:…違う…僕の本当の夢は…希星と共に生きて、おじいちゃんとおばあちゃんになって…一緒に星を見ることなんだ、となりで、こんな僕のバカみたいな星の話を、笑って聞いてくれるだけで…だだ…それだけでいいのに…
麗華:そうでしたか…っ…ちょっと失礼します
0:時空列車、運転席
麗華:…っ…長谷川…
長谷川:!?…麗華お嬢様っ!?どうなされたのですっ!
麗華:わたくし…っ…もう辛いんです…短命な自分の寿命を長引かせる為とはいえ、こんな事を繰り返すのは…それならいっその事…
長谷川:ダメですっ!麗華お嬢様っ!何を弱気な事を言っておられるのですか?お気をしっかり持ってくださいませっ!あなたは白鳥財閥の孫娘…最後の後継者なのですから、先代のお爺様に寵愛(ちょうあい)された、私のご主人様なのですから
麗華:ですが…私の寿命という私利私欲な目的の為に、他人を犠牲にして…そこまでして、生きる意味はあるのですか?
長谷川:ありますとも!大いにあります!他人を助ける為に、この「時空列車」があり、その報酬と引き換えに少しだけ寿命を頂いて麗華様へと注がれる、これこそギブアンドテイク!まさに白鳥財閥に相応しいやり方ではないですか!いや素晴らしい!(拍手)
麗華:しかし、未来さんや希星さんのように…助ける事が出来ないのが…辛いのです…
長谷川:それは…(咳払い)まあ、運命を変えられないケースも…稀にあります…それは、それとして、麗華お嬢様の尊い犠牲とお考えになられてですね…
麗華:なりませんっ!人の命の犠牲の上に生きるくらいなら、私は死を選びます!
長谷川:は…っ…麗華お嬢様…なんという事を仰るのですか!自ら命を絶つなどとっ!…
麗華:ならば、何か…方法はないのですか?あの2人が共に生きられるようにするために
長谷川:…ん〜ん…試した事はありませんが…
麗華:っ…あるのですね!
長谷川:…ですが…麗華お嬢様…
麗華:長谷川っ!早く言いなさいっ!
長谷川:はいぃぃっ!
0:マンションの屋上
0:給水塔の上
未来:希星っ!ほらっ覗いてみて
希星:どれどれ…うわ〜本当に綺麗な星…まさか本当に見つけるとはね…おばあちゃんになる前に見つけてくれて…ありがとうっ!未来っ!
未来:うんっ、しわくちゃのおじいちゃんになる前にみつけられたよ!
希星:ねえ?約束覚えてる?
未来:ん…約束?そりゃ覚えてるよ
希星:じゃあ何て名前にするの?
未来:ん〜ん…そうだなー
希星:ちょ〜と〜!まだ考えてなかったの?
未来:いや、考えたよ
希星:じゃあ聞かせてよ、どんな名前にするの?
未来:希(のぞみ)
希星:のぞみ?私と同じ漢字だね、よかったね〜のぞみだってさー
0:希星は大きなお腹をさする
未来:僕の生きる希望だからね〜のぞみは、ふふっ
希星:で?新しいあの星の名前は何だっけ?
未来:…コイネガウ(希う)
0:
麗華:よかったわ…2人が幸せになれて
長谷川:(ため息)そのおかげで麗華お嬢様は寿命を随分と失ってしまった…だからお止めしたのに…
麗華:いいじゃないの、また困っている人を助けていけば…ゴホッゴホッ…
長谷川:大丈夫ですか?まったく…こんなに弱られて…それにしても、我が白鳥家の「時空列車」はなんて素晴らしいのでしょうか!全てのエネルギーを麗華お嬢様から、お2人に注いだ事で、運命までも変えてしまえるなんて…
麗華:そうね…こんな物を作れるなんて…でもこんな物、本当は無かった方が良かったのに…
長谷川:…麗華お嬢様…あなたは私にとって恩人なのですから…そんな事を仰られないでください、病弱で幼かった私を救ってくださったのは、他ならぬ貴方様なのですから
麗華:長谷川…貴方には私も感謝しているわ…あ、ほらっまた次の駅で止まるみたいよ、お客様を迎える準備をしてね
長谷川:御意でございます!
~完~