新門司港までの高速道路
川平有料道路で270円を支払い長崎バイパスを経て多良見インターから新門司港へ目指しひた走る。
グラストラッカーは非力な単気筒エンジンで高回転は回らず振動が大きめで、さらに250㏄の小排気量でもあり車体も小さく高速道路走行はあまり向いていると言えない。巡航速度は身体的にもバイクに負荷をかけない為にもせいぜい80㎞/hが妥当だろう。後方からいくら煽られても私は動じない、お急ぎの方はお先にどうぞの精神で走行車線をひた走る。道中、60-80km/hでゆっくり走るプリウスが前を走っていて抜くにも抜けず着いていくばかりであったが金立SAでちょうど走行距離100㎞になりそうだったのでそこで立ち寄り小休止と給油の時間とした。走っている最中は気づかなかったがワークマンで買った防振手袋でも手が痺れて手指の感覚が鈍くなっていた。金立SAにある無料の水を紙コップ2杯震える手でさっと飲み下し、ガソリンスタンドで給油し14:30頃金立SAを出発した。
少し時間がおしているが長崎自動車道を抜けて九州自動車道を鳥栖から北上するころには車線も多くあっさり抜けることができるだろうと高を括っていた。が、しかし鳥栖を過ぎ辺りから渋滞。巡航70-80㎞/hがせいぜいであった。16:00に間に合わない可能性が急浮上したが、焦っても仕方ないと思いつつ走れる所は90-100㎞/hで、福岡インター過ぎた辺りからは大型トラックに囲まれる事が多く思った以上に速度を上げられず80㎞/巡航で進むといった感じで新門司インターへ到着。料金3960円で時間は既に16:00ちょっと前。新門司インターから新門司港まですぐ近くだったが、確実に乗船するには道迷いは厳禁だと考え慎重に進み、新門司港へ16:12分到着。係員に乗船可能か恐る恐る尋ねると、QRコードを持っているなら自動二輪待機場で待っているようにと言われ普通に通された。私が到着した後も数台バイクが待機場へやってきたのだが皆乗船できたので、色々あーでもないこーでもないと悩んで計画を練ったり高速道路走行中も焦燥感にかられたりと私の心労は何だったのかと肩透かしをくらった感じがした。
16:50頃、誘導係の職員から乗船可能だから待機場から出るようにと指示があり、バイクのエンジンをかけ待機場から船へ橋を渡って乗船した。乗船後、船内にいる誘導係の職員が「ここに止めて」と言わんばかりに棒を振って誘導、停車後「ひだあろおで!」とわけのわからない言葉をかけられた。まあこれは予習済みで、停車後は「左ハンドル、ローギアで」と聞き取りにくい言葉で言われると知っていた。よって焦らず動じず何食わぬ顔で左ハンドル、ローギアで停車した。ほんと予習しててよかった・・・。停車しキャリアに固定していたバッグから着替えを取り出して、ひしめき合うように止められた大型トラックの間を縫うように歩き、前を進むほかの乗客に着いてエレベーターへ辿り着き、6階エントランスホールへ出た。開放的で白を基調とする清潔感がある作りで、これまでの運転や乗船手続き等で気を張っていたのが一気に緊張の糸が解れた感じがした。
エントランスの案内板を見ても私が予約したツーリストの部屋がいまいちわからなかったがインフォメーションに立つ案内係の職員が親切に教えてくれたので、教えられた通りに移動。部屋はカプセルホテルの様な佇まいで充分プライベート空間は確保できる作りになっていた。私は荷物を置き、貴重品だけ持ってデッキへ上がって新門司港をフェリーが出港していく様を眺めた。港には港の職員と思われる人が大きく手を振って見送ってくれていた。フェリーに乗ること自体初めてというわけではないが、久しぶりに乗ってみると出港するこの瞬間は今までいろいろと旅の計画を立てていたことが遂に実現したといった実感と初めての土地への期待と見知った土地を離れる事による不安が入り混じった何とも言えない気持ちで胸がいっぱいになった。寒いときに温かい飲み物が非常においしく感じるが、この出港のひと時は大きな不安と大きな期待が一気に交じり合って、まさに「冬の暖かい飲み物」感があってとても心地よかった。
その後は船内の浴室でゆっくり風呂に浸かり、アサヒのマルエフ(500ml340円)と家から持ってきたおにぎりを食べながら簡単に夕食を済ませ、船内はネットが圏外でほぼ使えない状況でもあったのでそのまま早めに休み翌日に備えた。
次の日は朝5時半に大阪南港到着予定。