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マジカルシルクハットのススメ


■はじめに

マジカルシルクハットというカードが好きだ。

モンスターゾーン、魔法罠ゾーンとカードの種類に合わせてプレイ出来るフィールドが用意されている遊戯王というカードゲームにおいて、「デッキから任意の魔法罠カードをモンスター扱いとしてモンスターゾーンに特殊召喚する」という唯一無二の効果を持つ。ルールの枠を越えており、理の外に足を踏み出す感覚を覚える。

「なんでモンスターゾーンに魔法カードがあんだよ・・・・・・?」
「そういう問題じゃねぇ!教えはどうなってんだ 教えは!」

それはまるで学校帰りの雑木林でエロ本を見つけてこっそり持って帰る小学生のような、隠れて飲酒や喫煙をする中学生のような、はたまた緑の制服を着たおじさんに見つからないように馬券を買う高校生のような、そんな背徳感を思い出させてくれる。

このカードの主な活用方法についてはwikiを参照してもらうとして、ここではこのカード“で”デッキを組むことについて触れていきたい。

ベースとなる動きが別にあって、その動きを補助するポジションというのが一般的なマジカルシルクハットの使われ方だ。
それに対し、このカードを主軸にするとなると考えなければならないことが結構多くて面倒くさい。
まずこのカードに要求される前提が辛い。
・相手バトルフェイズにしか発動出来ない
・自分フィールドに裏側守備表示にできるモンスターが必要
この2つを満たすことが出来なければ発動することすら叶わないわけで、メインフェイズに除去されるリスクも高くなる。常にバックの除去に震える。

他にも、シルクハットが生み出すアドバンテージを警戒する人を相手にした場合、トラップトリック等でシルクハットが見えている状況ではそもそもバトルフェイズに入ってくれない。
とか、
セット状態で破壊したい魔法罠を特殊召喚する場合にはバトルフェイズ終了時に発動する必要がある。
などなど、
「使う事が出来れば上振れ」ではなく、「使う事がスタート」とするにはあまりにも脆弱なカードで、本来ならデッキの中核に据えるべきではないとまで言えるだろう。

そんなマジカルシルクハットをデッキにすることが出来たなら、シルクハット“で”戦っているデッキが組めたなら、自身のデッキ構築の引き出しが増えるし技術向上にも繋がるのでは、とこれまでこのカードを使い倒してきた。
まだまだこのカードのポテンシャルを引き出せているとは言い難いが、現時点での備忘として今年組んだ最近よく使っているマジカルシルクハットのデッキを残しておきたい。

■デッキ紹介

カルテット99

きっかけは廻る罪宝というカードの登場。シンプルにシルクハットと組み合わせたバウンスを軸にデッキを組んでみたくなったから。
これまでもシルクハットで特殊召喚した魔法罠をバウンスする手段はあったし、そのようなギミックを組み込んだデッキもあったにはあった。
ただ、例えば強制脱出装置のように一枚で一枚分の仕事しか出来ないようなものであったり軸に据えるには些か厳しかったというのが事実。
そんな中で廻る罪宝はメインとなる効果が別にあり、墓地効果によるバウンスなので廻る罪宝自体をシルクハットで墓地に落として2発目のシルクハット発動時にバウンス効果を使ったり、そもそも最初のシルクハットで特殊召喚した廻る罪宝を何らかの手段で墓地に送ることが出来れば即時墓地効果を使えたりという運用が可能になっている。

デッキの軸はマジカルシルクハット+廻る罪宝。
これを中心に構成を考えた。

鼠径部が良い

1. マジカルシルクハットの役割を考える

まず重要な役割はこのデッキを組むきっかけとなった廻る罪宝との組み合わせ。
それに加え、マジカルシルクハットを主軸にする以上、デュエル中に3回は発動できるよう特殊召喚する弾を用意したい。ただし、発動機会に恵まれない場合も考慮して素引きしても役割があるものをチョイスする必要がある。

以下、今回用意したシルクハットの役割。
・廻る罪宝、ビッグウェルカム・ラビュリンスのバウンス効果と組み合わせて任意の魔法罠を疑似サーチする
・バトルフェイズ終了時の自壊を家具のトリガーにする
・メタルフォーゼ・コンビネーションを墓地に送ってメタルフォーゼモンスターをサーチする
・破械の魔法罠をセット状態で破壊して破械モンスターをリクルートする
・砂塵の大竜巻をセット状態で破壊して相手フィールドのカードを破壊する
・巨人封じの矢を墓地に送って自身の墓地効果でフィールドにセットする
・幻影騎士団トゥームシールドを墓地に送って相手の罠の効果を無効化する
・トランザクション・ロールバックを墓地に送って2発目のシルクハットを打つ準備をする

2. シルクハット周りのカード同士のシナジーを考える

選定した弾関連のカードや廻る罪宝に関連した幻想魔族の間でそれぞれシナジーを形成する。
筆頭となるのは廻る罪宝と同じタイミングで登場した原罪のディアベルゼ。
魔法罠がセットされたら自分、相手フィールドのカードを1枚ずつ対象に取って破壊する効果を持つが、シルクハットに関連するカードとして挙げたものとの間に
・メタルフォーゼのP効果が③のトリガーになる
・シャバラ、サラマの効果が③のトリガーになる
・家具の①効果が③のトリガーになる
・巨人封じの矢の墓地効果が③のトリガーになる
・素引きした荒野の大竜巻を③によってセット状態で破壊できる
・素引きしたメタルフォーゼ・コンビネーションを③によって破壊し、メタルフォーゼモンスターをサーチできる
・破械関連を③によって破壊し、それぞれの効果を発動できる
というシナジーがある。

また、例えばメタルフォーゼのP効果の対象を破械にすることで破械のトリガーを引きつつ、シュヤーマの墓地効果を発動するための的(錬装融合)を用意することができたり、「セット」と「セルフブレイク」を中心に弾同士でも細かいシナジーを繋ぐことを意識した。

下腹部が良い

3. マジカルシルクハットの発動条件を考える

マジカルシルクハットで「セット状態で破壊された場合」を条件に効果が発動する魔法罠を特殊召喚する場合、そのカードが戦闘破壊される事態は避けなければならない。
そもそもフィールドに1体でもモンスターがいる状態を維持しなければならない。
その問題を解決してくれるのは廻る罪宝を始めとした幻想魔族関連で、バトルフェイズ中に廻る罪宝で幻惑の見習い魔導師を特殊召喚したり、豊富な悪魔族をバトルフェイズ中にバウンスしてタロンズ・オブ・シュリーレンを特殊召喚したり、幻蝋館の使者を自身の効果で特殊召喚したり、それらの戦闘破壊耐性によってバトルフェイズ中にモンスターを維持しつつ、バトルフェイズ終了時にマジカルシルクハットを安全に発動する準備を整えることが出来る。
ただし、初めからフィールドに戦闘破壊耐性持ちがいる状況ではバトルフェイズに入ってもらえないため、予め破械神ラギアやディアベルゼのような戦闘で突破したくなる餌を置いておいて早々にバトルフェイズに入ってもらうよう工夫する必要はある。
そしてそれはメインフェイズでのバック除去の牽制にもなる。
また、初動で破械を使って動いている場合は高確率で破械雙極がセットされているので、「モンスターの供給」という点はクリアできる。当然これも公開情報故に相手のバック除去を牽制している。

4. マジカルシルクハット+廻る罪宝でサーチする魔法罠を考える

このデッキの根幹。
何を疑似サーチしたら強いか。
例えばサンダーボルトやハーピィの羽根箒のようなわかりやすいパワカは素引きした時にお互い冷めるので極力避けたい。
デッキの内容に合っていて、かつ1枚で戦況をひっくり返し得るカードを状況によって選択する。

・超融合
戦闘効果で破壊されず、効果の対象にならないモンスターを処理する手段の一つ目。
出す先は共命のガルーラと幻獣魔王バフォメット。相手のモンスターを食えるかどうかは状況によるが、「超融合による除去」「ランク6への繋ぎ」に加えてそれぞれ「1ドロー」と「墓地肥やし+除外されているであろうヤマの帰還」と1枚で3つ以上の役割が期待出来る。

・マジックカード「クロス・ソウル」
戦闘効果で破壊されず、効果の対象にならないモンスターを処理する手段の二つ目。
超融合と違って相手の場の状況を選ばないし、上級モンスターが豊富なので扱いやすい。

・RUM-幻影騎士団ラウンチ
このデッキは初動となるベアトリーチェに始まり中終盤もランク6を立てて戦っていくことになる。
中でも交血鬼-ヴァンパイア・シェリダン、百鬼羅刹の大饕獣は闇属性でエクシーズ素材を持たない状態になりやすい。故にラウンチが打ちやすく、覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴンによるフィニッシュを狙いやすい。

5. デッキのエンジンを考える

ここまでで出てきたカードたち+αを使って毎ターンアドバンテージを生み出す機関を組み込む。
エンジンと言えば錬装融合。
「メタルフォーゼのP効果」+「メタルフォーゼの的」+「錬装融合を墓地に送る手段」
これを用意できれば毎ターン1ドローすることが出来る。
メタルフォーゼの的は自己再生可能なラビュリンス・ストービーとし、錬装融合を割る手段はヴァレルロード・R・ドラゴンの②効果、自己サルベージしたヴァレルロード・R・ドラゴンを墓地に送る手段はラビュリンス・シャンドラの①効果。
これならデッキのラビュリンスが尽きるまでドローすることが出来るし、錬装融合を割る手段はシュヤーマでも代用出来る(ただしエクシーズ素材にできる場合に限る)。もちろんメタルフォーゼの的は適宜変えても良い。ストービーの自己再生とシャンドラのサルベージのトリガーはマジカルシルクハットを筆頭に豊富にある。
シルクハット、ベアトリーチェで上記の状況を整えつつ、ロングゲームに備えた立ち回りを心掛ける。

①罠の効果をトリガーにストービー自己再生&シャンドラサルベージ
②メタルフォーゼのP効果でストービー破壊&錬装融合セット
③ライオットドラゴンで錬装融合を破壊してサルベージ
④シャンドラの効果でライオットをコストにラビュリンス魔法罠セット
⑤錬装融合をデッキに戻して1ドロー
①に戻る

6. その他の採用カードについて

・魔界発現世行きデスガイド
 リクルート先の選択肢は魔サイ、シザー、サラマ、シャンドラ。
 基本的にはベアトリーチェを立てることを目標に、二枚目以降は状況に応じて盤面に必要なレベル3を選択してブレイクソード、デスキャスター、ダルクを立てる。
・闇の増産工場
 マジカルシルクハットで特殊召喚した廻る罪宝を即座に墓地に送って②効果を使用するための手段。
・永遠の淑女 ベアトリーチェ
 墓地に落とすカードはトランザクション・ロールバック、ヴァレルロード・R・ドラゴン、家具を中心に、シルクハットに触れていないならシルクハット+ロールバックをセットで、ディアベルゼを握っている状況やシルクハットを構えている状況なら廻る財宝を選択する。
・No.24 竜血鬼ドラギュラス
 マジカルシルクハットで裏側守備表示にすることでリバース効果を狙っていく。
・ヴァレルロード・ドラゴン
 戦闘効果で破壊されず、効果の対象にならないモンスターへの対処。コントロール奪取したモンスターはシェリダンの素材に。

7. デッキ名

デッキ名は某RPGに出てくる技の名前から。
このデッキの中核を為すのは「罪」と「械」。
そのゲームのラスボス的存在は人類の罪により生み出された存在であり、それは人に課された械であるとされている。だから人はその罪を償わなければならない。その世界の人々は約1000年に渡ってそう教えられてきたらしい。
ルール(教え)に反してモンスターゾーンに魔法罠を特殊召喚するマジカルシルクハットの性質から、その「教え」に反する思想を持つキャラクターが作中で使用する技名を拝借した。

■最後に

ここまで読んでいただきましてありがとうございます。
マジカルシルクハットは面白いカードです。
発動した時の対戦相手の反応も多種多様でそこも楽しみの一つです。
テーマごとの強化が目立つ昨今の新規カードですが、どんなテーマであろうと新規カードが出るたびに強化が期待できるカードでもあります。
もし、そんなマジカルシルクハットを使ってデッキを組んでみたいと思って下さったなら幸いです。

まさか読者もアルベドじゃないだろうな

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