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幸せのカタチ おっさんずラブリターンズ

警察学校では鬼教官。公安時代の和泉は、公安のエースでめちゃくちゃすごい人だった。テロリストによって秋斗を殺され絶望した挙句、警察をやめて人生をリセット……してなかった。

春田には「警察を辞め、すべてを忘れて人生をやり直そうと思った」と話したが、これは嘘だと思う。

亡くなった恋人の仇を討つため、毎晩のように復讐に出かけ、血まみれで玄関に倒れ込む。この人は「生きる希望を失って死に場所を求めていた」のだろう。ただ、相手に一矢報いるまでは、絶対に死ぬわけにはいかなかった。

それを支える菊様も辛かったろう。和泉の恋人は、自分の大親友でもあったのだから。和泉に復讐をやめて欲しいけれど、彼の心の中には秋斗しかいない。

「俺には秋斗しかいない。それはお前も知ってるだろう」

警察を辞めたのも、生きている意味がなくなったから。和泉の心の中には、復讐の炎と秋斗への深い愛しかない。どんなに好きでも「好きになってもらえるはずない」は、和泉の本心を知る菊様だから言える言葉だ。

「公安ずラブも姑アーニャもギュギュッと編」では、和泉と秋斗の濃密なラブシーンが満載!

公安ず沼にハマった人には、たまらないシーンが多い。和泉と秋斗のシーンは2つ、涙無くしては見られない。

本編以上に二人の関係性がよくわかり、絶望することも秋斗を忘れることもできない和泉の心の闇を知ることができる。

和泉と秋斗は、お互いがいなくては生きていけないくらいに、深く愛し合っていた。だからこそ、秋斗は愛する和泉を生かすためにかばい、和泉は秋斗のいない世界に失望する。

最後の最後、秋斗の目はゆっくり和泉に向けられて静かに閉じた。まるで、生きているかを確認するように。愛した人を目に焼き付けるかのように。

菊様は、二人が恋人同士であったことは分かっている。それが秋斗の口から語られたのか、二人の雰囲気から知ったかはわからないが。たぶん、二人の雰囲気から察したのではないかと思う。

秋斗は警察学校時代、菊様に和泉が好きだと告白している。

菊が和泉好きだと知りながら、言わずにいられなかったのは「誰にも取られたくない」気持があったのではないか。

もし、菊様が先に「和泉教官が好き」と告白すれば、秋斗は何も言わず苦しい気持を抱えたまま過したはずである。そうしなかったのは「本気で恋に落ちた」からだ。

一方、菊様は和泉に恋心を抱きながら、秋斗を失い絶望の中で狂ったように任務をこなす和泉を支えてきた。好きな人が苦しんでいるのを見るのは辛い。なんとかして過去を振り切らせようとするが、菊様が思う以上に二人の結びつきが深い。

「秋斗のいない世界では生きていても意味がない」和泉を引き止めるのは、大変だっただろう。

春田に惹かれていく和泉

春田と秋斗はキャラクターがまったく違う。目上に堂々と口答えする、命令は聞かない、和泉を翻弄する小悪魔ぶりは、おっさんずラブ警察学校編や公安編でわかっている。

表情や話し方もまったく異なる二人を、傷みで朦朧としていたにしても間違えるものだろうか。

「和泉さん!なんで昨日の朝、俺にキスしたんですか!」に対して和泉は「えっ!?」と驚いた。

記憶がないのではなく、あの時は本当に秋斗だと思っていたのは間違いない。本人は夢でも見たのだろうと軽く考えていたはずである。

ここで面白いのが「うるせぇ唇だな……って」と言った春田に対し、和泉が「うるせぇ……くっ唇」と絶句したこと。これには菊様も「?うるせぇ唇?」と、不思議そう。

公安編では秋斗に振り回され翻弄されているように見えるが、プライベートでは和泉の方がイニシアティブを取っていたのだろう。任務中に和泉を壁に押しつけたり、からかうような素振りを見せるのは秋斗の愛情表現でもある。

秋斗のわがままを受け止めて、愛情を注いでくれる和泉に秋斗は甘えている。自分は愛されている、この人は絶対に俺から離れない・裏切らない確信があるからの小悪魔行動である。警察学校時代から恋焦がれていた人が恋人になり、愛してくれている喜びは至福だったのだろう。「うるせぇ唇」とかいってキスしてたのか……と想像できた。

そして菊様も知らない秋斗の一面は、無邪気な春田の行動にどんどん重ねられている。顔が似ているからだけで、あこまで動揺できるとは思わない。和泉にだけ見せた、秋斗の本当に顔は無邪気で屈託のない笑顔の青年だったのだろう。ペンダントの秋斗の笑顔を見て、そう思う。

あれは、好きな人にしか見せない秋斗の最高の笑顔だ。

それが、会社では先輩として隣に座り、なにかと世話を焼いてくれるのだから好きになるなと言うのは無理な話でもある。

ただ、秋斗の話をするまでは和泉自身も春田に秋斗の面影を重ねて、傷を癒していたはず。決定的になったのは、恋人である牧の父親の面倒を見に行った後である。わが身を省みず、家族でも嫌がる下の世話をする春田、底なしの「優しさ」が、絶望した和泉の光となったはず。

春田に対して「優しいですね」と何度も呟いている。この優しさは、自分だけに向けられているものではないと分かっていても、和泉には嬉しかったはず。

秋斗の話を聞いて悲しみを共有し、秋斗の姿になり自分を鼓舞する春田は、お日様のように暖かく優しい。叶わない恋をするのは自虐行為と見る人もいるが、そうは思わない。

「春田さんにとって、牧さんはどういう存在ですか?」の問いに春田はこう答えた。

「一生……?側に…っていうーか」
「側にいてくれや」
「あっ、そんな感じ。あの、牧はおれのすべて……つーか」

「俺には秋斗しかいない」の回収。
和泉には秋斗しかいないように、春田には牧しかいない。と分かるシーンでした。

諦めるしかない恋にもだえる和泉も見てみたいけれど、やはり幸せになって欲しい気持はある。

かつての仲間と菊様によって、秋斗を殺したやつらは捕縛された。
「やっと捕まえました、秋斗を殺したやつら」と声を震わせる菊様の力強い瞳には、親友だった秋斗への強い思いを感じた。

和泉はこれから、秋斗の分も生きなければならない。
そうでなければ、秋斗が命をかけて守った意味がない。

幸せのカタチは1つではない。

それぞれのカタチを見つけ、最後は笑顔でエンドして欲しい。

黒澤武蔵のシアワセ

ここにきて、急な吐血に余命宣告。
少し無理があるが、エンディングノートまで書いていたので嘘ではなさそうである。

黒澤武蔵の幸せは春田の幸せである。シンプルでわかりやすい、アガペー(無償の愛)だ。

和泉と秋斗はエロスとアガペーが同居し、現在のところ和泉と菊様はストルゲー(家族愛)である。

自分は「姑」として二人を支え、春田と牧の幸せを祈っていたはずなのに……温泉旅行で、春田のことを忘れられていない自分に気づいてしまった。

それなのに、余命宣告で今生の別れとは。セカンドオピニオンも誤診であってほしい。
黒澤武蔵は永久に不滅な春田推しである。