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ファミレス行こ。14話待ち5週目_クラバート読む


さてと、『ファミレス行こ。』14話待ち5週目。
2024/12/18〜2024/12/24 クラバート読む
今週も前倒しで達成したわけなので報告していきたい。

クラバートは聡実くん本棚の狂児貯金と同じ段に置かれている書籍で実在する本だ。

まずは、実在する本が物語に登場することの意味を考えたい。

実在する本を登場させる意図

物語に実在する本を登場させる意図は大きく2つではないかと思う。

1:その本の内容・言葉が物語の結末を示唆している

1つ目は、クラバートに描かれた内容が『カラオケ行こ!』『ファミレス行こ。』の2人のこれからを暗示するため。
要は「ここからのこと、この本に書いてありますよ」というヒントの意味合い。

2:「その本を読んでいる」ことがキャラクターの行動に影響している

2つ目は、聡実くんがクラバートを読んでいるということが彼の行動に影響しているということを示すため。
聡実くんはクラバートを読み、蒲田の四畳半に持ってくるくらいには気に入っている。『ファミレス行こ。』の中で彼が意思決定をする際の背景にはクラバートの世界がありますよ、ということ。

どちらにしても、非常に重要な本。心して読ませていただいた。

クラバートのあらすじ

クラバートのあらすじは以下の通り。

身寄りのない少年クラバートは、あるとき夢の中で自分を呼ぶ声に導かれて、村はずれの水車場へとやってきた。
そこには親方と11人の職人が働いており、クラバートは12人目の弟子として働くことになった。実はこの親方は魔法使いで、水車場は親方が弟子に魔法を教える場所だった。
ブラック企業ばりの過酷な労働に耐えるクラバートは、だんだんと仕事を覚えていった。が、働き続けるなかで次々と仲間が死んでいき、親方との関係に疑問を持つようになり、親方の支配から逃れるために立ち向かうことを決める。
親方の支配から逃れるには、自分に恋をしてくれている相手が、親方の出す試練に打ち勝たなければならない。
その試練とは。クラバートの運命は。

てな感じ。

最初にあるのはクラバートの強い恋慕の情

あらすじを読んだ段階では、私は「なんやかんやあったクラバートを彼のことを好きな子が救う話」というイメージでいた。
メインはクラバートが魔法使いの支配から逃れる話で、そのための仕掛けとして彼を好きな子がいるのかな、と。
『ファミレス行こ。』でいうと、「狂児を好きな聡実くんが彼を救うという意味かな」くらいに思っていた。

が、クラバート本編で描かれる感情の度合いはむしろ逆。
物語の根底に流れているのはクラバート側の強い恋慕の情だ。
クラバートは少女を見つけ、長い間、彼の心は少女にとらわれ続ける。それは本編中でかなり長く描かれる。

まずはクラバートと少女の出会い。

遠い鐘の音とほとんど同時に、シュヴァルツコルムからひとりの少女の歌声がおこった。
(中略)
そのグループには指揮者がひとりいることも、クラバートは知っている。
その指揮者になるのは、グループのなかでいちばん澄んだ、美しい声の持ちぬしで、その少女が先頭を歩き、ソロを歌うのである。

(クラバート「一年目」7章より)

美しい声の持ち主がソロを歌う歌声だと・・・!

クラバートはいつもすぐに、あの夜、ソロを歌った少女のことを思いだした。

(クラバート「一年目」8章より)

歌っている少女の顔が見たい。見たくてたまらない。

(クラバート「二年目」4章より)

クラバートはできることなら一度シュヴァルツコルムに行ってみたいと思っていた。もしかしたら、あのソロを歌う少女が家の前にすわっていて、クラバートが通りがかりにあいさつをすると、手をふって応えてくれるかもしれない
(中略)
この少女のことは、トンダのことが忘れられないのと同じように、生涯けっして忘れられないであろうこともわかっている。

(クラバート「二年目」7章より)

・・ちょっとクラバートが少女を想う場面が多数ありすぎてあとは割愛しますが、こんな調子。
何かっていうと少女のこと思い出してる。
「生涯けっして忘れられないであろうこともわかっている」らしい。

こんだけクラバートが想ってるのに、あらすじでは「クラバートのことを好きな少女が」って書かれちゃったら、少女サイドとしては「え?最初はむこうから来たんですけど」と言いたくなるでしょ、って心配になるくらい。

とにかく、まず言いたいのは
クラバートが美しい声の少女に心を奪われちゃっている、ということ。まずはそこありきのお話なわけです。

ちなみにクラバートも「いい声」で、ひくく太い声らしい。
もうクラバートが狂児ってことで良いですかね。

親方からの試練とは何か?

そうして少女に恋をするクラバートだが、親方への不信は募っていき、ついには親方の支配から逃れることを決意する。

で、クラバートが親方の支配から逃れるには、自分に恋をしてくれている相手が、親方の出す試練に打ち勝たなければならないいうわけ。

おまえにおまえのことを好いてくれる女の子があればーその子ならおまえを救うことができる。つまりその子が親方に、おまえを自由にしてくれるように申し出て、そのうえ、その子が規定のテストに合格したら救うことができるのだ。

(クラバートより)

じゃあ、その試練とは何か?

試練の内容、それは、クラバートに恋する少女がたくさんの仲間のうちで「どれがクラバートか」を指し示すというもの。

けれど、過去に同じように親方の試練に挑んだ者たちは皆失敗している。
失敗すると、自分も少女も死んでしまう。

クラバートは悩む。
自分のために少女を危険な目にあわせてよいのか?

「少なくともおれのせいであの娘まで道連れにはしたくないんだ」
「自分の生命は、あの娘の生命を危険にさらすだけの価値があるというのか?」

少女とは一緒にいたい。けれど、自分のせいで少女を危険な目には合わせたくない。

え、、、それって、岡田の写真発覚後に聡実くんと4か月ほど連絡を絶ってたときの狂児の気持ちなんじゃ・・?

ちなみに私は『クラバート』が『ファミレス行こ。』の内容を示唆しているとしても「親方」=「組長」ではないと思っている。
クラバートの世界の親方は組長のような血の通った感じはない。もっと、利己的。『ファミレス行こ。』がクラバートを体現していた場合、クラバートの親方にあたるものは「ヤクザという概念」ではないかと捉えてます。

少女はクラバートを受け止め、愛し、助け出す

クラバートの強い想いから始まった2人だが、少女はその想いを受け止め、彼を守ろうとする。

「わたしのだいじな人をわたしてください!」と娘は要求した。
「おまえのだいじな人だって?」親方は笑った。
(中略)
「クラバートです」と娘は言った。「わたしの好きな人です。」

(クラバート「三年目」12章より)

で、完全にネタバレしますけど、結果、クラバートは救われます。
そして二人が歩いていくと雪が降り始める。
ふわふわの雪は粉のようにふたりの上にふりかかった。で物語は終わります。終わり方、素敵すぎませんかね・・

もとはドイツの地方の伝説

この「クラバート」という物語だが、もとは「ドイツ伝説集」の中の「ラウジッツ地方の伝説」の中のひとつを作者プロイスラーが編みなおしている物語だ。

プロイスラーは、「クラバート」を書く際の基本計画をこう述べている。

わたしが『クラバート』で表現しようと試みたものは、ひとりの若者がーー当初はただの好奇心から、そしてのちにはこの道を選べば、楽な、けっこうな生活が確保できるという期待からーー邪悪な権力と関係をむすび、そのなかに巻き込まれるが、けっきょく自分自身の意志の力を、ひとりの誠実な友の助力と、ひとりの娘の最後の犠牲をも覚悟した愛とによって、落とし穴から自分を救うことに成功するという物語です。

クラバートより

あらためて、実在する本を登場させる意図を考える

この記事の冒頭に、物語に実在する本を出す意味として、

  • その本の内容・言葉が物語の結末を示唆している

  • 「その本を読んでいる」ことがキャラクターの行動に影響している

をあげた。読み終わった現在、あらためて考えてみる。

1:その本の内容・言葉が物語の結末を示唆している としたら

狂児、ヤメ暴ルートあるかもしれないな。

私が親方を含め水車場の人間(魔法使い)たちを「ヤクザという概念」だと考える理由はクラバートがはたらく水車場の設定でして

  • 職人たちは、お互いに「しるし」をつけあう

  • 親方は弟子の生死すら握っている

  • 親方はクラバートを「後継者」にしようと試みる

という、お互いを他集団と明確に線を引いたうえで成立している疑似家族的な集団に見えるから。要は「ヤクザっぽくね?」ってこと。

で、最終的に親方の出す課題を少女はクリアするわけで。
クラバートが物語を示唆しているとすると「狂児はヤクザをやめる」ということになるのでは?という予想ができる。

漫画としては祭林組のキャラクターも魅力的なので、ヤ継続も捨てがたい魅力がありますけれども。
というか、「親方がクラバートを後継者にしようと試みる」ってけっこう気になる。「親父は年取ったよ」と言われる組長が、後継ぎとして狂児を指名する可能性もゼロではないのかもしれない。

※ちなみに少女がクラバートに「わたしはあなたを知っています」と額の五線星形をぬぐい取る、というシーンもあります。少女を聡実くんとする場合、狂児の印を消すのは聡実くんの役目ってことになる。

2:「その本を読んでいる」ことがキャラクターの行動に影響している としたら

聡実くんの貯金「腕の聡実を消してください」どころか「刺青ぜんぶ消してください」の可能性ある?

聡実くんの本棚には貯金箱、民法1、民放2、たのしい憲法、クラバートの順に置かれている。確実にクラバートを読んでいる。

で、今回気づいたのだけど、

クラバートの位置、動いてません?

クラバートが並んだ棚は貯金箱の棚。
その棚が出てきたのは2回。
1度目はバイト明けに帰宅して500円玉を貯金箱に入れ「しんど」のとき
2度目はリベルテ「僕のために受け取ってくださいね」「努力するわ」から帰宅し「はァ~・・・」のとき。そのとき棚には確実にクラバートが置いてある。

でも、1度目「しんど」のとき、たのしい憲法の隣にクラバートなくない?

リベルテまでの間にクラバートを手に取って読んだのか?
リベルテ帰宅後「はァ~・・・」のとき、貯金箱を見てると思ってたけど、もしかして聡実くん、クラバート見てる?
としたら、何を思ってるの?

「ヤクザ やめさせるには」という検索履歴や
「ぼくが背負える人じゃない」というモノローグを読んだときに少なからず感じた「聡実くん、そこまで考えてたの!?」という驚きは、クラバートを読んでいる聡実くん、と考えると合点がいく。

聡実くんは狂児を救いたいんだね。

想像以上にクラバート

何よりも、和山先生がクラバートを読んでいるであろうことに意味がある。
和山先生の頭のなかに何年も存在していたキャラクター、狂児。
彼を「声」で魅了し、背負おうとする覚悟のある存在。

狂児と聡実くん、想像以上にクラバートじゃん。

今週はここまで。

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