おばちゃんのゆっくり手書きの領収書(週刊文春川柳のらりくらり掲載)
まだ若かりし頃、おばちゃんてなんでこんなにゆっくりなんだ?と思っていた。
がしかし、自分がおばちゃんと言われる年齢になると、やっぱり何をするのもゆっくりになっていた。
みかんを剥くのも、靴を履くのも、そして字を書くのも。
字を書くのは本当にゆっくりになった。
特に、人様にお渡しするメモ書きや、ハガキなど。
領収書に至っては、決して間違えてはならぬ!!と言う強迫観念にとらわれているので、ペンを持つ手が震えてくる。
お名前をしっかり聞いて、脳から手に司令をくだし、手が指令を受け取り、漢字を書くのだ。おそらく、この司令の伝達の時速がゆっくりになったのだ。さらに、司令通りに手が動かない経年劣化に伴う機能の問題もあるので、確認しながら文字を書くことになる。
早く字を書くことはできないが、人様によっては心のこもった丁寧な作業と、好意的に見てもらえることも。実際は心をこめる余裕はないのだ!!
先日、名鉄に乗った時のこと、
私の乗る名鉄の車両は、シートが向かい合わせである。JRのように二人がけがいくつも並んでいるパターンなら、わかりやすいが、名鉄の向かい合わせのシートはシートにすわれる定員が不明なのだ。ズバリ座る人の体の幅による。
私の目の前の人が立ち上がり、シートに隙間が空いたのだ。
立ち上がった人は私と同じくらいの体格に見えた。こ、こ、これは、座ることができる?しかし、私が今たったままその隙間を見ると、私の体の幅よりやや狭いように見える。
両隣の人のコートがふんわりしているだけ?
それとも立ち上がった瞬間に両隣がちょっとだけずれたのか?
え?本当に今立ち上がった人ここに座ってた???
考え抜いた結果、やー!と隙間めがけてお尻を入れてみたら、お尻に隣のおじさんの何か、手?鞄?が当たったような気がしたが、見事座ることができた!!!
それから両腕をクロスさせて肩幅を狭めて座り続けたが、座るんじゃなかった。。。。
いまさら、立ち上がるわけにもいかず。。。。
「おばちゃんのゆっくり手書きの領収書」週間文春掲載