Wezzy「「性交も体外受精もなく妊娠出産した!」と語る女性を全肯定する医師の仰天説法」に戸惑う。
『セックスレスでもワクワクを求めてどんどん子宮にやってくるふしぎな子どもたち』(ヒカルランド 2018)は拙著「妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ」でも取り上げましたが、確かに池川明氏の著書としては極北です。ただそうした主張にもある種の目的が含まれてるわけで、それを理解することが調査の醍醐味だったりするわけなんですよね。
問題は著書の紹介ではなく、最後のまとめです。
「スピリチュアリズム」(spiritualism)とは場合によっては「心霊主義」と翻訳されて、18世紀から19世紀の欧米を中心に見られる霊や霊界の存在の信仰とその流行のことを指します。当時は降霊会や心霊写真を撮ることがブームになりました。江原氏の宗教観は確かにスピリチュアリズムをベースにしていますが、それは<江原氏の主張する>スピリチュアリズムになります。
ただ池川明氏が江原氏の主張を基本概念にしたという推論はどこから来たのでしょうか?私も著書のためかなり池川氏の本を読みましたが、江原氏の名前を見た記憶がありません。こちらは研究者として、ぜひ根拠を教えていただきたいところです(嫌味じゃないよ。本当に。)。
私の見解としては、池川明氏の「胎内記憶」は「胎内記憶」という言葉を最初に書名に持ち出し、「かみさまとのやくそく」にもチラッと名前が出てきた七田眞の胎教論からかなり影響を受けていると踏んでいます。現に両者には共通する特徴があります。特に山田さんが「ニューエイジ」の影響だと言っている以下の主張は、まんま七田眞氏の主張そっくりです。
あともしかしてですが、「スターピープル」ではなくて「インディゴチルドレン」?池川氏はインディゴチルドレン説にかなりご執心でもあったので。
ここまでは見解の相違ですが、根本的に間違っているのが以下です。
「ニューエイジ」とは、ざっくり言えば、1960年代ごろから欧米を中心に広まった脱キリスト教的、個人主義的宗教観・聖性を重視するムーヴメントのことを指します。ヒッピーやフラワーチルドレン、コミューンなどはここに入ります。対してスピリチュアル/スピリチュアリティは個人主義に立脚した聖性とのつながりと、その事象を指すので(ざっくりざっくり言えば)、ニューエイジもこのなかに含まれます。欧米の研究には両者を分けず New age Spiritualityと表記する研究者もいます。
当然のことながら、アセションもチャネリングもスピリチュアル/スピリチュアリティの枠組みの中にあります。例えば、堀江宗正「予言があたったとき――アセンション信奉者の震災後の態度」という論文が挙げられます。また、チャネリングはまさに「宇宙」の「大いなる」存在と出会うためのものです。よってスピリチュアリズムとニューエイジは個別のムーヴメントなので
「相容れない」とかはあり得ません。もちろん、スピリチュアリズムがニューエイジに影響を与えたということはありますが。
確かに、この辺(スピリチュアリズム・ニューエイジ・スピリチュアリティ)の区別はつきにくいしややこしいと思います。関連が強いので似通ってる部分もあり、余計に面倒だと思います。また、スピリチュアリティの定義を巡っては、まだ議論が続いています。ただ、すでに分類についてはほぼ明確になっているので、そちらの知識は以下の本をおさえておけば明快に整理がつきます。
スピリチュアル/スピリチュアリティを論じる上で、絶対に外すことのできない本です。お読みください。
付記
この「ほとんどやりとりしたことがない山田ノジルさんが法的処置云々言ってきたらからぶっちぎって過去の記事の問題を指摘してしまおうnote 」シリーズですが、思った以上に私のメンタルがやられてきたので、金曜日までの更新にします。