ゆるむ
とろけるように柔らかなまどろみを感じる夢の中にいた。多分、夢。
わたしはもはや人の形をしていなかった。実体のない、透明なのかそうじゃないのかですら分からない存在。
わたしの周りには誰もいなかった。何もなかった。
妙に明るく、真っ白で、天国という言葉を聞いて思い浮かべるような風景が一生広がっている。
食欲は感じない。おだやかな睡魔が襲ってきても心地良いだけで、目を閉じても眠ることはない。
わたしは自分が誰であって、どんな世界で、どんな名前を持って、どのように過ごしていたのか忘れてしまった。顔すらも思い出せない。触ろうとしても手を伸ばしても何もない。
そのうち、自分が人間という名の生き物であったことすら忘れてしまいそうになる。
このまま、ぼんやりとした時間に静かにたたずみながら、感情も思考も何もかも全て無くなって、おだやかなこの空間の一部になるのだろう。
そして、私は私ではなくなる。
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