茨城大学理学部化学科 令和5年度3年次編入学試験解答と解説
こんにちは。今回は2022年6月25日土曜日に行われました茨城大学理学部化学コースの編入学試験問題について解説していきます。科目は化学です。
1. 大問1
問1 この問題は与えられた分子について点電子式を描く問題でした。点電子式を描く練習ができているかどうかもそうですが、それ以前に有名分子なので知っているかどうかで片づけられる問題でした。
問2 ここでは反応のエンタルピー変化を計算する問題。(1)と(2)については定義通りに計算していけばよく、(3)については少し想像が必要。
(1)反応エンタルピーは生成系と反応系の標準生成エンタルピーの差であるところを利用して計算する。(2)エンタルピーの定義式から内部エネルギー変化を計算する。エンタルピーやその他の定義はきちんと導出も含めて覚えておくと後に役に立つと思います。ここで液体の体積は無視できるためPVの項は変化がないことに気づけばOK
(3)はベンゼンの水素化による安定化の度合いが理論値の見積もりより小さくなるのはなぜかという問題。これは、そもそも厳密にはベンゼンが2重結合3つで構成されているのではないということに気付けるかがカギ。また、理論値計算はベンゼンが2重結合を3つもつ分子として計算しているため、実際はそれよりも芳香族性を持つため安定化されていると考えられる。このために水素化したときの安定度合いが小さくなると考えられる。
問3 理想気体と実在気体のギャップに関する問題。要素は「分子の自体積」と「分子間力」について触れて記述してあげれば満点。圧力を上げていくと圧縮因子のうち体積Vの項が減少し、圧縮因子も減少するが分子の自体積まで縮むと今度は圧力Pの因子の影響で圧縮因子が増加していく。
2. 大問2
問1 (1)化合物の構造式を描く問題。化学を学ぶものならば間違ってはならない。(2)エタン、エチレン、アセチレンの構造を混成軌道を用いて説明させる問題。それぞれ結合角を明記したうえで回答するとわかりやすかったのではなかろうか。(3)アルケンと塩化水素の反応機構を示す問題。(4)酸性度の比較。酸性度については共役塩基の安定性を議論すればよい。共役塩基が安定ということは、それだけ分子がプロトンを手放したいということ。これは酸性度がより高いことの裏返しであることがわかっていればOK。2,2,2-トリフルオロエタノールには3つのフッ素原子がついていて、電気陰制度によりその共役塩基の負電荷を非局在化して共役塩基を安定化する。
問2 アミノ酸、タンパク質に関する問題。高校化学の基礎的な部分。ぜひ(2)の変換も瞬時に行えるようになっておくとあとあと便利。これは編入に限らず大学入試でも言えること。
3.終わりに
いかがでしたでしょうか。昨年度に比べても難易度にそう差はないかと思いますが、相変わらず入試の倍率が高めなので高得点争いは避けられなかったかなと。大学側も出題範囲は大学1年で扱う程度の化学ということで、茨城大学のシラバスを確認して何を扱っているのか確認したうえで対策は行いましょう。
私はすべての大学編入を目指す方を応援しています。