43歳一独身公務員の旅行記(ニューヨーク編)最終回「新しい世界へ」
「ほんまに空港に着くんやろうか・・・」
根が至って小心者にできている僕は、空港行きの電車に揺られながらも、やはり不安で仕方がないのだった。海外旅行には、一歩間違えたらホンマに帰れなくなる、という怖さがある。ニューヨークやインドのように遠ければ尚更だ。
しかし杞憂だった。その後電車はニューアークリバティー国際空港に静かに到着した・・・。一安心だ!
そしてついに香港行き出発のアナウンスがされた!
僕は慌ててリュックを背負い、飛行機の搭乗口へと小走りで向かった・・・!
どんどん小さくなっていくニューヨークを見ながら、僕は静かに、しかしモーレツに感動していた。
「死ぬまでにやらないといけないこと」がもしあるのなら、そのうちのひとつを確実にやり終えたという充足感があった。
僕はiPad(ソフトバンクで買ったiPhoneに、キャンペーンでついてきたやつだが)をリュックから引っ張りだした。そして、誰に読んでもらう訳でもないのに、夢中で先ほどのペンステーションを探してパニックに陥った話を書き始めた。ともかく書きたくて書きたくて仕方がなかった!!
25歳。僕はCM制作会社の激務に耐えられず、わずか10ヶ月で会社から逃げ出した。六本木の編集スタジオに48時間こもり、発狂しかけたのだ。上司に「もう辞めます。無理です」と泣きついた。その後役者を目指し3年弱活動したが、食えなかった。たまらず大手町の転職エージェンシーに転がりこんだが、担当者には「外食チェーンの店長候補以外に職はないですね」とハッキリ言われた。これは結構なショックだった。30歳目前で100万あった貯金は底をつき、将来への不安が最高潮に達し地元大阪に帰ることを決意した・・・。その時は、自分的にはボロボロな時代だった・・・。執筆しながら、なぜかその時のことを思い出していた・・・。
「けどひとりでニューヨークにいけたじゃないか」
他の誰でもない、僕が僕に囁く。そうだ。ちっぽけではあるが、少なくとも僕は自分でいきたいと思ったニューヨークにいけた・・・!
どうして、僕もなかなかやるじゃないか・・・!
iPadで執筆ながら、いつの間にか眠りに落ちていた・・・。
ニューヨークの夢を見ていたような・・・気がする。
間も無く、飛行機は関西国際空港に着く。
僕は眠っている。眠りながら、瞼の裏で光を感じている。その光に何やら希望めいたものを感じている。
関西国際空港について目が覚めた時、世界はちょっとかわって見える気がする!
43歳一独身公務員の旅行記(ニューヨーク編)
おしまい
読んで頂き、ありがとうございました!