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送球イップスから腕の局所性ジストニア

はじめに

二十代女性、5年ほど前に、ソフトボール部に所属しており、そのころから送球が上手くできなくなっていた。その頃から送球イップスの症状を抱えていたが、引退後も腕をゆっくり上げようとすると、腕が勝手に早く動くようになり、自動販売機で腕を使うときなどには支障があるとのこと。特に意識して何かをしようとしたときに悪化する傾向にあり、だんだんと悪くなってきているような気がするらしい。

目安検査

最初にどのような症状なのか再現してもらう。片方だけ観察すると分かりにくいが、左右、同じスピードで腕を挙上してもらい比較すると、明らかに右腕が早く挙上してしまう。本人が言われるように、勝手に早く腕が動いてしまう症状がある。珍しい症例かもしれないが、局所性ジストニアで経過から予測すると心因性ジストニアの疑いがある。また、仰向けに寝た状態では症状が再現されないが、座位や立位姿勢では症状が再現されるのもジスニア症状の特徴の一つである。調整前の機能評価では現在の症状がPRTで9レベル、メンタル系がPRTで9レベルだった。

1回目の調整

最初はアクティベータ療法で、ハード面の検査調整を行う。脊柱と右肩関節関連に陽性反応。右小脳機能に陽性反応が示された。PCRTのソフト面調整では大脳辺縁系レベルで2つのキーワードが示され、それに関連する内容を質問して誤作動記憶を引き出し調整する。調整後は、現在の症状はPRTで5レベル。メンタル系では1レベルまで下がった。施術後に問題の動作を試してもらったが、顕著な変化は見られなかった。

2回目の調整

最初に1回目の施術からジストニアの症状がどのように変化しているのか試してもらった。1回目と同様に顕著な変化は見られなかった。症状の機能評価は9レベル。メンタル系が8レベル。アレルギー系が9レベル。アレルギー系は前回反応が示されなかったので、「なぜ?」と内心思った。

3層構造のチャートで検査を進めていくと「聴覚」→時系列→過去→8年前→お父さんの声で反応が示された。もしかすると、これがアレルギー系(五感適応系)の反応なのかなと思った。でも、なぜ、前回は示されなかったのだろうと考えると、前回はお父様が付き添いで一緒に来られていたので、無意識がその部分を解放せずにブロックしていたのだろうと納得した。お父さんに関係する声の内容は2つあり、過去の誤作動記憶が陽性反応として示されていたなので調整を行なった。

その後、検査を進めると、「執着心」に関係する内容が2つほど示されていたので、その誤作動記憶の調整も行なった。施術後の目安検査でメンタル系はレベル1まで下がった。調整後の腕の動作を確認すると、なんとほとんど左右の違いが分からないくらいに改善していた。「え、こんなに早く改善するの・・・」と内心、思った。なぜなら、その症状は5年ほど継続していたイップス、ジストニアである。ご本人も喜ぶというか、不思議に感じている様子だった。

ジストニアの患者さんから相談を受ける際、改善にどれくらいの治療が必要なのかと回数などを尋ねられるが、いつも個人差があるので明確な回答はしていない。当院の患者さんの平均的な改善率は出せるが、肉体の構造異常を修復させるような施術ではなく、あくまでも個人の無意識の誤作動記憶を調整する治療なので、そこに齟齬が生じないようにあえてお答えしていない。症状の程度や抱えてきた年数にも関係している傾向はあるが、このように早期に改善するジストニアもあれば、長期にわたって治療が必要な事例もある。

3回目の調整

目安検査で上腕を挙上してもらい、左右比較すると、初検時ほどではないが、若干、挙上スピードが早い感じがする。本人も挙上時に違和感を感じるという。ソフト面の検査をして見ると、8年前の誤作動記憶が示された。部活をしていた時の同級生に対する当時の記憶が影響を及ぼしていた。調整後、肩関節に手を当て、フィンガーテストを行いながら、挙上運動の動きを検査してみると、一定の角度で挙上運動に関係する手動筋なのか拮抗筋の共収縮なのか厳密には分からないが、筋肉の異常緊張が示された。その角度での異常緊張は患者も自覚しており、その感覚は術者と共有することができた。

その後、同じ8年前で、別の誤作動記憶が陽性反応として示された。それを調整すると挙上運動に関係する異常緊張は消失した。患者もその消失を自覚できた様子だったが、まだ違和感があるとのことでさらに検査を進めると、肩関節の内旋の動作での異常緊張を患者とともに確認した。それも内旋運動に関係する手動筋なのか拮抗筋の共収縮なのか定かではないが、調整を行うとその異常緊張も消失した。3回目の調整を終えた時点では、まだ、違和感があるとのことだが、最初よりは良いという。目視検査では初検時よりもかなり改善しているように見えた。

考察

4回目の予約を入れていただいたが、台風などの天候不良で2度キャンセルとなり、その後3ヶ月が経過し来院されていない。3回目の調整からその後の経過をみさせていただきたかったが、恐らく施術の必要がないと判断されたのかもしれない。ジストニアの症状もある程度改善され、ソフトボールの方もキャッチボールなど試したらどうですかと提案させていただいたところだったので、そこまでサポートさせていただきたかった。5年ほど前に発症し、イップスから局所ジストニアに移行した症例だったが、比較的に短期間で症状が改善されたのではないかと思う。どの症状も個人差があるのが当然だが、イップスやジストニアの症状は、程度や経過年数、さらには原因の深さや複雑さによって個人差がある。特にメンタル系が絡んだ症例は、施術者との信頼関係はもちろん、患者さんがその治療法に納得できるかが治療効果を引き出すために大切なポイントにもなるだろう。

2018年12月12日記

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2018年12月12日記


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