第36回ファミカン東京(2023/9/29開催)
事例の概要
事例は数年前に気管支喘息の診断され、喘息発作としての入院退院も繰り返し、ドクターショッピングを重ねていた中年後期の女性。コミュニケーションをあまりとらない疎遠の夫、障がいを持つ息子が最近施設に入所。また、ここ数年で父親は死去、昔過保護だった母親も認知症で入所となった。
プレゼンター(医師)が公立大学内科研修中の病棟で関わった事例であった。入院中に、プレゼンターは心身医学的アプローチを意識しながら関る中で呼吸器症状も軽快し、退院後に減薬するも症状落ち着いて経過している。
ディスカッション
①症状発症時の置かれていた状況について
症状発症前にどのような状況に本人が置かれていたのか。特に、ライフサイク上の変化やライフイベントが重なって何かしらの変化が訪れている可能性がある。
中年後期だと、両親の病気や障害の発症・進行、子どもの自立に伴う役割の喪失、夫婦の再契約が課題になる。特に多いのは、夫婦の再契約の問題で、夫婦として今後の人生について考え直す時期での夫婦交流不全は常に考えていく。
②コミュニケーションパターン
母との密着が強く、母親が気に食わないと本人は無視される、否定されるを繰り返えされてきたため、人から無視されること、否定されることを恐れていた。
そのため、他の家族に分かって欲しい、理解して欲しいという欲求は強く、直接的なコミュニケーションを避け仄めかすような発言が多いが、他の家族はそれをできずにすれ違いを繰り返していた。
また、医療者から否定的な意見には傷つくためにドクターショッピングを繰り返していたと考えられる。
家族療法の観点からは、母の分化度(感情と知性のバランス)は決して高いとはいえず、それが本人や他の家族にも継承されていたともいえる。
③入院前後の家族の対応
依存傾向のある患者であり、入院によって退行し、治療者に依存していくことが多いが、あっさりと退院された。
入院をきっかけに夫との間で何かが起こったかもしれない。本人と夫や子どもとの距離感が変化したことで、本人にとっては好ましい状況になった可能性がある。
研修医として心身医学的関わりをしたことは、病院という組織による継続性を担保することになり、外来受診の継続に繋がったかもしれない。
プレゼンターの感想
家族アセスメントを患者さんに対して立てていくのは初めてのことで、教科書的には学んだ言葉を実際に症例に適用していくという体験をさせて頂き、大変勉強になりました。
初期研修時代に一人でもがいて診療してきたこの症例をこうしてまとめることができて、更に発見や、こうできたんじゃないかなとか、どう機能したのかについて理解することが出来ました。
今後も自分の診療の中に取り入れながら、研鑽していこうと思います。また発表したいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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執筆:宮本侑達(ひまわりクリニック)
編集:田中道徳(岡山家庭医療センター)
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