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第39回ファミカン東京(2024/7/31)
ファミカン東京(隔月水曜日)
心療内科医にしてアメリカで家族療法を学んできた聖路加国際病院心療内科の山田宇以担当のファミカン。都心の総合病院である聖路加国際病院にて、常に院内外からコンサルトの絶えない心療内科の主戦力としてそのスキルを惜しみなく共有されてきました。家族療法的観点にとどまらず、メンタルヘルスの問題や不定愁訴の対応、パーソナリティの評価、各種心理療法の活用など、”切っても切れない心と身体のみかた”も学ことができます。
7月31日に第39回ファミカン東京を行いました。今回のプレゼンターは河北ファミリークリニック南阿佐ヶ谷の高橋快斗先生です。
事例は認知症の診断となった80代の女性で、旦那さんと二人暮らしの方です。別居の子どもたちとの間のさまざまな相談が診療に持ち込まれます。
ディスカッション
1. 調整役の喪失と新たな役割の必要性
今まで家族の調整役だった本人が病気でその役割を果たせなくなると、家族全体がまとまらず、バラバラになってしまう。
新しい調整役が必要になるが、決まるまでは支援者が一時的にその役割を担うしかない。
しかし、長期的には家族内に調整役が必要で、それをサポートすることが求められる。
2. 家族内の力の対立とお金の問題
家族の中で力の対立が起き、お金がその象徴として関わってくる。お金の管理をしたがる家族がいたり、別の家族が「お金を奪おうとしている」と密告することもある。
お金に関する相談が多くなると、その問題に注力しがちだが、根本的な問題は調整役の不在や家族内のコミュニケーション不足にある。
そのため、家族カンファレンスで対話を促し、各自の役割を確認することが重要だ。
3. 認知症の患者との対話
認知症があると、本人が話題から置いてきぼりにされがちだ。本人が置いてきぼりにならないように、積極的に話題を振る。
また、診察室以外での様子を確認する「例外探し」も必要だ。たとえば、デイサービスで元気な様子が見られる場合、その理由を探り、それを自宅でも活かせないか考える。
4. 否定的な話題への対応
家族カンファレンスで、お金を取られたなど否定的な話題が多い場合、そのマイナスをゼロにすることが目標になりがちだ。
しかし、それでは前に進めない。たとえば、「これからどうすれば本人が快適に過ごせるか」といった建設的な対話を促すことが大切だ。
5. 金銭相談への対応の線引き
診療で金銭に関する相談があったとき、つい深入りしがちだが、どこまで対応するか自分の中でしっかり線引きする必要がある。
6. 外来の忙しい時間での意見交換
忙しい外来の中で全員がそれぞれの意見を聞けない場合、チームで分担し、誰かが代わりに他の人の話を聞くような体制を作ると良い。
プレゼンターの感想
以下のコメントをいただきました。
・診察室で俯きがちな本人は夫と一緒だと言いたいことを言えないのではないか。
→本人と一対一で話をしてみるのはどうか(外来で看護師から聞いてもらうのも良いだろう)
→カンファレンスでは本人の発言をどう促すか、本人の希望をいかに代弁するかが大事。
・ケアの問題が中心になっているため、家族カンファの中心はケアマネが担うのが適切だろう。
・緊急性が高い場合は、然るべき場所に通報や相談が必要である(行政、警察、弁護士etc)。
・これまで世代間のハブの役割だった母が認知症になり、家族の中で誰が主導権を握るかで争いが起きている状態と思われる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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執筆:高橋快斗(河北ファミリークリニック南阿佐ヶ谷)
編集:宮本侑達(ひまわりクリニック)、田中道徳(岡山家庭医療センター)