見出し画像

【活動報告】第6回日本在宅医療連合学会大会にてシンポジウムに登壇

2024年7月20日、21日に第6回日本在宅医療連合学会大会が開催され、ファミラボのメンバーでシンポジウム「一歩先の家族支援 〜家族療法の視点から在宅医療を考える〜」に登壇してまいりました。

日本在宅医療連合学会(Japan Academy of Home Care Medicine, JAHCM)は、日本を代表する在宅医療の発展と普及を目的とする学術団体です。多職種が参加され、在宅医療の質を向上させるための研究や教育活動を行っています。

在宅医療の現場で家族療法がどの程度関心を持たれるのかわかりませんでしたが、当日の会場は超満員で、立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。在宅医療に関わる多職種の方々が家族支援に強い関心を寄せていることが伺えました。

シンポジウム内容

タイトル:「一歩先の家族支援 〜家族療法の視点から在宅医療を考える〜」
座長:吉川正宏先生(竹林貞吉記念クリニック)
   久島和洋先生(ドクターゴン鎌倉診療所)

①宮本侑達先生 (ひまわりクリニック) より
「家族志向のケア、家族療法の理論」
家族志向のケアで用いられるシステム理論や、家族アセスメントを中心とした臨床への応用方法について説明。

②山田宇以先生 (聖路加国際病院 心療内科)より
「家族の心理と使いやすい家族療法の技法」
病気を抱える家族が陥りやすい心理と、家族介入の具体的な技法(リフレーミング等)について説明。

③富田詩織先生 (多摩ファミリークリニック)より
「在宅で行う家族志向ケア」
在宅診療における家族志向ケアの特徴を、高齢の女性が離島から上京し家族と同居する症例を交えて解説。

④久保田希先生 (河北ファミリークリニック)より
「多職種連携で行う家族志向ケア」
システム理論を多職種が共有することのメリットや、多職種による介入が点から面に広がる様子を解説。

質疑応答

Q:家族全員に多方向に肩入れする重要性は理解できましたが、実践する際に特定の誰かに肩入れしてしまうことがあるのではないでしょうか。多方向の肩入れをする際、どのように工夫すれば良いでしょうか?

A:肩入れの際に「自分の立場から相手を理解」しようとすると、理解できる人とは距離感が近づきすぎ、理解できない人は距離が離れがちです。その結果、全員に肩入れするのは難しくなります。

「自分の立場から相手を理解すること」を「同情」といい、多方向の肩入れで求められる「共感」とは異なります。共感とは「相手の立場から相手を理解する」ことです。

「そのような立場ならば、そう感じますね」といった声かけが共感であり、多方向の肩入れに必要な声かけです。

多方向の肩入れによって支援者がそれぞれの立場を尊重することで、安全な場作りに繋がり、普段は話せなかったことが話せるようになります。また、他の人の意見が理解し難くても、医療者がその意見を尊重する姿勢を示すことで、別の視点から意見を捉えられるようになります。

Q:家族から「本人に言わないでほしい」と秘密を持ちかけられ、患者さんとの溝が生まれる場合があります。また、患者さんからも「家族には言わないでほしい」と秘密を持ちかけられ、間に挟まれ身動きが取れなくなることがあります。どう対処すれば良いでしょうか?

A:秘密を共有することは、共有された人との関係(サブシステム)を強化する一方で、共有されていない人との関係は疎遠にします。

秘密を持ちかけられる背後にも理由があるため、まずはその理由を尋ねることが大切です。ただ話を聞いてほしいのか、何とかしてほしいのかで関わり方が異なります。

その上で、秘密を共有することは関係性の強化の意味でも別に悪いことではないし、それが治療的に働く場合もあります。しかし、それが続いて患者さんと家族の間で溝が深まる場合は、別の方法を考えた方が良いでしょう。

その場合、システムを拡大するために、直接関係のない他の支援者に共有することも一つの方法です。また、相互が避けている場合は、家族もカンファレンスも有効です。

Q:患者に強く当たるなど、不適切な介護を行う家族に共感を示したいが、問題行為にも肩入れしてしまいがちです。どのように対応するのが良いでしょうか?

A:不適切な介護をする背景には、方法がわからない、焦りがある場合があります。そのため、行為自体を承認しなくても、介護をしようとする気持ちや、その背後にある焦りや不安に対して共感を示すと、より深い共感につながります。

そのように理解してくれる支援者が一人いるだけで、その家族の行動も変わることが多いです。

Q:家族療法のうち「ナラティブ・アプローチ」は中心概念の一つだと考えるが、今回のシンポジウムでそのような言葉を使っていないのはなぜか?

A:ナラティブ・アプローチは、社会構成主義を背景とした比較的新しい家族療法の概念で、医療現場でも非常に有用です。特に「外在化」などの技法は有効です。

しかし、本シンポジウムでは、家族理解に重点を置くため、古い世代の家族療法(構造派・コミュニケーション派・多世代派)やシステム理論を中心に紹介しました。システム理論の「システム拡大」の方法は、臨床でよく使われる技法でしょう。

ただ、ナラティブ・アプローチでも家族療法でも、その本質は「対話」を重視する点にあり、安全に対話を行う中で問題や物事の見方が変わることが重要です。

久島先生より「家族志向のケアや家族療法の考え方で、事例が明確になったことを覚えています」とのお言葉をいただきました。

私たちが執筆した書籍についてもご紹介させていただき、その後の物販コーナーでは売り切れ!

講演を聞いてくださった方たちが買ってくださったようでした。ありがとうございました!

内容は9月20日までオンデマンド配信にて視聴可能です。気になる方は、是非下記リンクより参加登録ください!

https://confit.atlas.jp/guide/event/jahcm2024/top

今後もファミラボでは様々なセミナー、勉強会を企画していきます。こんな勉強会して欲しい等ありましたら、お気軽にお問い合わせください。

●最新情報はこちらからお知らせします。
Facebook:https://www.facebook.com/familabo113rd/
Twitter:https://twitter.com/familabo_113rd

●オンライングループページ運営しています。(医療者限定・無料)
詳細こちら:https://00m.in/QJhJt?fbclid=IwY2xjawEr-n1leHRuA2FlbQIxMAABHVRsLvU68OR5qlVDpfezrN_a4YO7IxJvXShNlxbGrzuZUO6BVfNYStIqcw_aem_zWR9bUJXdheutCph1lD6gw

●お問い合わせフォームはこちら

連絡先:familylaboratoryforpc@gmail.com(ファミラボ事務局)

執筆:富田詩織(多摩ファミリークリニック)、宮本侑達(ひまわりクリニック)
編集:田中道徳(岡山家庭医療センター)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?