第17回ファミカン岡山(2024/6/12開催)
今回のプレゼンターはさんむ医療センターの長谷部理佐です。事例は、アルコール性肝硬変の高齢者です。
■ディスカッション
・本人のライフサイクルの不適応には介入すべきだったか。するとしたらどのようなアプローチが適切か?
→家族ライフサイクルは「中年後期」の段階です。疎遠であった妻・娘が本人の身体的・精神的な衰えにより、介護や見守りが必要な状態となり、再度集合するようになりました(求心性)。関係性が再び凝集する中で、過去の関係性の問題が再燃していると考えられます。
とはいえ、その葛藤を直接扱うのは困難なため、まずは目の前の介護問題に取り組み、その中で対話を通じて問題が変化することを期待します。
また、長女や次女もそれぞれ母親役割、父親役割を担っているように見えますが、これは長くは続かないでしょう。「第三の母」の役割となる施設職員を探すことも、ライフサイクルの移行を支えることになります。
・妻と本人の関係性は希薄なのか。実は共依存なのか。
→本人の過剰要求が問題のように見えますが、妻がその要求に応えることで役割を得て安心している可能性があり、自己犠牲となっているため、共依存といえます。
ただし、本人が理不尽な要求をすることもあれば、そうでない時もあるため、関係が維持されていると考えられます(ハネムーン期)。一概に希薄とはいえません。
妻が自己犠牲的になりすぎず、自身の考えや主張を持つことを医療者が承認し、妻と本人が一方通行ではなく、双方向的にコミュニケーションが取れるようにサポートすることが重要です。
・本人の両価性に対してどのようにアプローチすれば、家族やスタッフとの関係性が根本的に改善できたか。(治療拒否や不満は同居したいが故の発言?)
→アルコール依存は幼少期の愛情不足が影響(口唇期性格)が影響している可能性があります。本当は満たされない愛情を感じていますが、それを率直に求めることができないため、攻撃的なコミュニケーションとなっています。
怒りは別の感情から派生した二次感情であることが多いため、その根本の悲しみ、恐れ、不安といった一次感情にも目を向けてコミュニケーションとなっています。
また、家族やスタッフにも「困った人」ではなく「困っている人」という認識を少しでも共有できるように努めます。これにより、本人に対する理解と対応が多少改善することを期待します。
■一番印象に残ったこと
治療者として本人の根本的な問題にどこまで踏み込むか悩んだ症例でした。妻との関係ばかりに注目していましたが、本人と妻だけでなく母的役割を担う長女、父的役割を担う次女という視点がとても面白く思いました。
第三の母となる職員がいるかつ本人の自由さを受け入れてくれるような施設のご提案というリアルなアドバイスもあり勉強になりました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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プレゼンター&執筆:長谷部理佐(さんむ医療センター)
編集:田中道徳(岡山家庭医療センター)宮本侑達(ひまわりクリニック)