ファミクル「家族ライフサイクルを深める」 第6回 激動の変革期の家族を支える:子どもを巣立出せる時期の家族の理解とサポート
「巣立たせる時期」は、巣立っていった子どもを応援しながら、残された家族がこれから歩んでいく人生を考える大切な時期です。
この大切な時期をどう支え、家族の調和を育てるか、一緒に考えてみましょう。
巣立たせる時期に求められる姿勢とは
「巣立たせる時期」では、子どもが家庭を離れて独立し、新しい生活を始めます。また上の世代(祖父母世代)にも大きな変化が起こりやすい時期でもあり、さまざまな変化を受け入れることが大切になります。
巣立たせる時期における6つの課題
①夫婦システムの再編成
思春期の子どもの時期から親子から夫婦に戻るための準備が始まりますが、巣立たせる時期になるといよいよ子どもが巣立っていき、夫婦の生活になっていきます。
子ども中心だった生活から、自分たちの関係に再び焦点を当てる必要が出てきます。
この過程では、夫婦間のコミュニケーションが重要となり、新たな共通の趣味や活動を見つけることが、関係を深める助けとなります。
②両親と成人した子どもの大人同士の関係の発達
子どもは家から巣立つことで、子ども自身が苦労も含めて様々な経験を重ねていきます(子どもの視点からみると以前に解説した「巣立つ時期」を経て自立するプロセスになります)。その中で“子ども”から“おとな”に成長していきます。
その結果、親子関係でありつつも、大人同士の対等な関係へと発展していくようになります。親は子どもの選択や自立を尊重しながら、新たな形でのサポートを提供することが求められます。
同時に、親自身も子どもからの支援を受け入れる姿勢が大切です。互いに尊重し合う関係を築くことで、家族の絆はより強固なものとなります。
③子育てからの開放による新たな関心/キャリアの探索
子どもが巣立つと、親は子育ての責任から解放され、再び自分自身の時間を持つことができます。
この時期に、新たな興味やキャリアを追求することで、人生の次のステージに向けた自己実現を図ることができます。新しい趣味を始めたり、学び直しをしたりすることで、親自身の生活が充実したものとなり、家族全体にも良い影響を与えることができます。
④新たなコミュニティやより大きな社会システムとの関係を見直す
家族の変化は、社会との関係にも影響を及ぼします。子どもが巣立つことで、地域コミュニティや友人関係、職場など、家族外の社会システムとの関わり方を変えていく必要が出てきます。
例えば、ママ友、パパ友の関係は、薄くなっていきます。このように子どもを軸にしたネットワークが薄くなるため、新しい社会的ネットワークを築いたり、既存のネットワークを強化したりすることが大切になります。
⑤親戚や孫を含む関係性の再構成
子どもが家庭を離れ、さらに結婚、出産を経て、親は新たな役割、特に祖父母としての役割を迎えることがあります。
この新たな家族構造では、親戚や孫との関係性を再構築する必要があります。祖父母としての役割を楽しみながら、親としての役割を徐々に手放していくことが、家族全体の調和を保つポイントとなります。
⑥両親(祖父母)のケア、健康問題、障害、死への受容
この時期、祖父母世代の老いの問題に直面することもあります。健康問題や介護問題、そして死という問題にぶつかります。
このプロセスでは、子どもたちの自立を阻害しないように気をつけつつ、家族全体での支え合いや、外部からの支援を適切に活用することが大切です。これらの問題に直面することで、家族の絆が一層深まることもあります。
巣立たせる時期を迎えた家族を支援する
巣立ちの時期における家族の支援とは何でしょうか? 家族によって直面している課題は異なるもの。支援をしている家族がどのような課題にぶつかっているのかアセスメントして、支援してみましょう。
課題にあわせていくつかを紹介します。
夫婦関係の再構築をサポートする
そもそも夫婦間でコミュニケーションをとっていない場合が多くみられます。そのような家族においては、夫婦間のコミュニケーションを円滑にするために対話を促してみるとよいでしょう。
単純に対話を増やすだけではうまくいかない場合には、新たな共通の趣味や活動を見つける支援を行い、夫婦としての新しい生活スタイルをサポートするのも良いでしょう。
もしくは、ペットを飼うことが、共通の話題となってうまく関係性を見直すきっかけになる場合もあります。
大人同士の関係になれるようにサポートする
親にとってはいつまでも“子ども”。ついつい今まで通り、子ども扱いして親は多いもの。親がどのように子どもと接し、どこまで干渉するべきか、境界を設定するための相談やアドバイスを提供してみるとよいでしょう。
また、親自身が子どもからの支援を受け入れる心構えを伝えておくのも大切なサポートの一環です。
新たなキャリアや自己実現の支援
親自身が今後の人生をどのように過ごしたいのか、未来志向で話し合っていくのがよいでしょう。
専業主婦/主夫として家庭のことをしてきた場合には、新たに働くことを選択する場合もあるでしょう。そのような場合、働くことへの不安を覚えることもあるため、丁寧に気持ちを聞いて寄り添うことが大切です。
場合によっては、キャリアカウンセリングや自己成長を促進するための教育やトレーニングの機会を紹介してもよいでしょう。支援者自身も地域やネット上の資源について知っておくことも大切です。
社会的ネットワークの再構築支援
地域コミュニティへの参加や、新しい友人関係の構築を促進するための機会を提供することができます。
例えば、ボランティア活動や趣味のサークルへの参加を促し、社会的孤立を防ぐサポートが有効です。
新しい家族構造への適応支援
祖父母としての役割や期待を整理し、無理のない範囲で家族全体が調和を保つためのアドバイスをしてみましょう。
家族間の役割分担やコミュニケーションがスムーズに進むよう調整を支援することも重要です。
特に孫ができると家族、親戚の距離が近くなってしまいがちで、それが軋轢を生んでしまう場合もあります。
心地よい距離は人によって異なるもの。適切な距離感を一緒に考えて助言してみるのがおすすめです。
高齢の両親(祖父母)のケア支援
家族が高齢の両親や祖父母のケアが必要になったら、地域の支援機関に橋渡しをしましょう。
特に、家族が介護に直面する際には、心理的なサポートや、ケアの負担を分担するためのアドバイスが重要です。
また、家族全体が高齢者の健康問題や死を受け入れるプロセスにおいて、感情に寄り添い、伴走することが大切。
精神的な落ち込みが目立つ場合には、うつ病などの精神的な病気の可能性もあるため、相談機関につなぐことも検討しましょう。
さいごに
「巣立たせる時期」は家族が大きな変化を迎え、さまざまな課題に直面する時期です。家族が新たなステージに進むために、適切な支援が大切となります。
本記事が、家族をサポートするうえで役立つ情報となれば幸いです。それぞれの家族に合った柔軟な支援を心がけ、一緒にこの時期を乗り越えていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回
「家族ライフサイクル理論:中年後期」お楽しみに!
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執筆:田中道徳(岡山家庭医療センター/岡山県精神科医療センター)
編集:宮本侑達(ひまわりクリニック)