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ファミコン同窓会

僕は、マリオジュニア。
あの世界的スーパースター、マリオの息子だ。
え、マリオの息子なんて聞いたことないって?
そりゃ、そうだろう。
僕は隠し子で、世間には知られてはいけない存在だったんだ。

僕の母はレディ。
『ドンキーコング』でマリオが助けた女性だ。
その後、マリオとレディが結ばれ、僕が生まれたというわけ。
その時は隠すつもりではなかったんだけど、『スーパーマリオブラザーズ』の発売で、すべてが変わってしまった。

ヒロインのピーチ姫を助けに行く主人公が、既婚者で子持ちというのはイメージが悪かったんだろう。
そして、このチャンスを逃したら、父が出世する道は閉ざされてしまう。
そう思った母は、父と離婚することを選び、シングルマザーとして僕を育ててくれたんだ。
その母も、長年の苦労がたたって、昨年亡くなってしまった。

と言っても、父に恨みはないよ。
父は養育費として十分すぎるほどのお金をくれたし、マリオの息子ということを隠している限り、普通に生活する分には何も問題はなかった。

しかし…

ある日、僕は父からの手紙を受け取った。

手紙によると、ファミコン発売40周年を記念した大同窓会を開くので、それに出席してほしいとのことだった。

そして、同窓会の招待状はすでに発送済みで、当日の幹事をお願いしたいとのことだった。
招待状には、僕がマリオの息子であることも書いておいたそうで、マリオジュニアと名乗って大丈夫だという。

いきなり「マリオジュニア」とか言ってしまって、本当に大丈夫なんだろうか?
まぁ、とは言っても、クッパの子どもの「クッパジュニア」もいきなり出てきて、『マリオ3』で子どもだったはずのコクッパも、子どもではないことになったし、別に良いのかなぁ…
そんなことを思いながら、僕は会場に向かった。

ジュニア「ここか」

会場に着いて名前を告げると、予約した部屋に案内された。
どうやら一番乗りのようだ。

(扉が開く音)

ゴエモン「おや?一番乗りかと思ったら、すでに先客が…お前さん、もしや『はやてのマイスト』かい?」

ジュニア「マイストは『邪聖剣ネクロマンサー』のキャラですよね?PCエンジン同窓会なら、来ている可能性もありますが…」

ゴエモン「こりゃ参ったね、冗談だよ、冗談!するってぇと、マリオの息子ってのは、お前さんかい?」

ジュニア「はい、マリオジュニアです。あなたはゴエモンさん?」

ゴエモン「いかにも。一目で俺の正体を見破るとは、お前さん、ただものじゃないね」

ジュニア「いや、分かりますって。黄金のキセル持ってますし、さっき表のコインパーキングにゴエモンインパクト止めてましたよね?」

ゴエモン「こいつは一本取られたな。それにしても、マリオに子どもがいたなんて、初耳も初耳。驚いて、思わずネンコロりしちまったぜ」

ジュニア「ネンコロりって…『ゴエモン外伝』のコバンネコの術名が、スっと出てくる人はあまりいないと思いますよ」

ゴエモン「あんまり褒めるなよ、照れちまうぜ!ジパング一(いち)の伊達男、カブキ団十郎とは、俺様のことよ!」

ジュニア「どうしても、PCエンジンに持って行きたいみたいですね」

(扉が開く音)

ジュニア「おや、また誰か来たみたいですね」

ラルフ「よう、お二人さん」

ゴエモン「お前さん、ひょっとしてシモン?ドラキュラのシモンさんかい?」

ラルフ「よく間違えられるんだよな~。まぁ、同じコナミっこのアンタが間違えるんじゃ無理もないか」

ゴエモン「おいおい、人をドレミッコみたいに言うなよ。はは~ん、さてはお前さん、シモンの先祖のラルフだな?違うかい?」

ラルフ「そうそう、ラルフ・ベルモンドだよ」

ジュニア「ああ、『悪魔城伝説』のラルフさんでしたか」

ラルフ「アンタがマリオの息子さんか。親父さんには、そんなに似てないな。どちらかと言うと、お袋さん似なのかな?」

ゴエモン「そりゃ、お前さんところと比べるのは酷ってもんだぜ。ラルフとシモンのドット絵を並べたら、ほとんど同じだと思うぜ」

ラルフ「確かにそうだ。ワッハッハ」

(扉が開く音)

ジュニア「そう言っている間に、誰か来たみたいですよ」

アキラ「こんばんは」

ゴエモン「おう!お前さんは、えーっと…。悪りぃ、名前が出てこねぇな…」

ラルフ「あー、見たことはあると思うんだが、俺も名前が出てこない」

ジュニア「すみませんが、お名前をうかがっても良いですか?みなさん、久々なもので」

アキラ「あー、そうですよね。僕はアキラです」

ゴエモン「アキラ…」

ラルフ「アキラか…」

ジュニア「えっと、どちらのアキラさんでしょうか?」

ゴエモン「あ、分かった!アレだ、ナムコの『デビルマン』の不動アキラ!目つき悪いし」

ジュニア「ちょっと、ゴエモンさん!失礼ですよ!」

アキラ「すみません、不動アキラではないですね…」

ラルフ「ということは…分かった!『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』の綾城(あやしろ)アキラだ!目つき悪いし」

ジュニア「ラルフさんも失礼ですよ!」

アキラ「いえ、綾城アキラでもないですね。綾城家のアキラは、すでに亡くなっていますし」

ジュニア「さらっと、ファミ探のネタバレしないでください!」

ゴエモン「するってぇと、あとはタイトーの『AKIRA』くらいだが…」

ラルフ「それだったら、金田か鉄雄が来るんじゃない?AKIRAは、ほぼゲームに出てこないじゃん」

ジュニア「すみません、どちらのアキラさんでしょうか?」

アキラ「やっぱり分からないですよね…。僕は『妖怪倶楽部』のアキラです」

ゴエモン「あ~、妖怪倶楽部か~!」

ラルフ「ごめん、分からなかった」

アキラ「いえ、いいんです。同窓会で『あいつ誰だっけ?』って言われるキャラなので…」

ジュニア「そ、そんなに卑屈にならなくてもいいじゃないですか!せっかくの同窓会なんですから、楽しみましょう!」

ゴエモン「そうだな、そろそろ飲み物とか頼むか?」

ラルフ「今日は、ドラキュラとアルカードは来ないから、何を注文してもいいよ。あいつら血液しか飲まないから」

(扉が開く音)

ジュニア「あ、また誰か来ましたね」

サトル「こんばんは!サトルです。みんなお久しぶりー!」

ゴエモン「サトル…あー、アキラと違って、これは分かりやすいな」

ラルフ「確かにそうだな。妹さんは元気にしているのか?」

サトル「え?僕、妹はいないですけど…」

ゴエモン「あれ?おかしいな~」

ラルフ「念のため確認だけど、ナムコだよね?」

サトル「やだな~、ナムコじゃないですよ。テクモです」

ゴエモン「テクモ?テクモのサトル?」

ラルフ「『えりかとさとるの夢冒険』のサトルじゃないの?」

サトル「あー、そっちに行っちゃいましたか。サトルってニックネームなんですよね」

ジュニア「あの、申し訳ないんですけど、ニックネームじゃなくて、本名を教えてもらえますか?」

サトル「そうですね、その方が分かりやすかったですね。僕の本名は、サトルステギです」

ゴエモン「サトルステギ!?」

ラルフ「『キャプテン翼Ⅱ』のアルゼンチンのフォワードの?」

サトル「はい。リオカップでは、コリンチャンスに所属していますけど」

ジュニア「誰もサトルって、呼んでないでしょ!」

サトル「疑うなら、ここで、ダイナマイトヘッド見せましょうか?」

ゴエモン「よしなって!危ねぇから」

ラルフ「アンタ、普通のシュートだって、世界最強クラスじゃないか」

ジュニア「最初から、サトルステギと名乗ってもらえれば良かったんですよ」

サトル「いや~、サトルステギって言うと、絶対に『え、何?ジムダステギ!?連射?16連射!?』とか言い出す奴が、ひとりはいるので嫌なんですよね」

ゴエモン「そんな奴いるのか?」

ラルフ「『ジムダステギ』っていう単語自体、久々に聞いたわ」

ジュニア「まぁまぁ。せっかく久々の再会ですし。そろそろ飲み物を頼んで始めましょうか」

ゴエモン「そういや、今日は親父さんは来ないのか?」

ラルフ「そうだな、マリオにも久々に会いたいな」

ジュニア「えーと、父は仕事があるみたいで、今日はちょっと…」

ゴエモン「なんでぇ、仕事くらい抜けてこいっての」

ラルフ「そうは言っても、世界のマリオだからな」

(扉が開く音)

サムス「ガッハッハ、すっかり遅くなっちまったよ!」

ゴエモン「え、誰だ?このおばさん」

ラルフ「『MOTHER』の敵キャラの『おばさん』かな…?」

サムス「ちょっとちょっと!このファミコン一(いち)の美女を忘れるなんて、頭がどうかしてるよ、アンタたち!」

ゴエモン「あ、怖い言葉を投げつけて来た!」

ラルフ「間違いない。『MOTHER』の『おばさん』だ!」

ジュニア「すみませんが、お名前を教えて頂けますか?」

サムス「何言ってんだい。サムス・アランに決まってるだろ!それ以外の誰に見えるってんだい」

ゴエモン「えー!」

ラルフ「まじかー!」

サムス「結婚して子どもができたら、ちょっとだけ太っちゃってさ~。そこから元に戻らないんだよね」

ゴエモン「ショックで、またネンコロりしそうだぜ…」

ラルフ「うちの嫁のサイファも大分年食ったけど、ここまでじゃないぞ…」

サムス「どうしたんだい、あたしの色気に参っちまったのかい?やっぱり美しさは罪だねぇ、ガッハッハ!!」

ジュニア「で、では、飲み物を頼みましょうか」

サムス「アンタかい、マリオの息子ってのは?こんなに大きな子どもが居たんだねぇ」

ゴエモン「やっぱり、そう思うよなぁ。それにしても、マリオの奴、今日は来ねぇんだって」

ラルフ「仕事が終わらないとか何とか」

サムス「何だって?せっかくみんな集まってるってのに!あたしが電話で呼び出してやるよ!」

ジュニア「え、あ、ちょっと待って…」

(電話コール音)

サムス「あ、もしもし、マリオ?サムスだけどさ、アンタ、今日の同窓会来ないつもりなの?…え?うん、うん、え!?そりゃ、本当かい?」

ゴエモン「何だ、何か揉めてるのか?」

ラルフ「仕事中だったんじゃないの?」

サムス「ちょっとこれ、どういうこと?今日の同窓会のこと、マリオは何も知らないってよ?」

ゴエモン「何だって?」

ラルフ「どういうことだ」

サムス「説明してもらおうかしらね」

ジュニア「あ、あー、その、えーと…」

サムス「正直に言わないと、メトロイドに脳みそを吸わせるよ!」

ジュニア「ぎゃー、それだけはご勘弁を!言います、言いますから!」

(以下、ジュニアモノローグ)
サムスに詰め寄られて、僕は、真相を話すことにした。

僕はマリオの息子ではない。
僕の正体は、アレックスキッド。昔のセガの看板キャラクターだ。

世間ではファミコン40周年と言うけれど、セガのSG-1000だって、40周年だ。
しかも発売日は1983年7月15日で、ファミコンと同じ日に発売されたのだ。
それなのに、ファミコン、ファミコンって、なぜファミコンばかり認めて、セガを認めないんだ。
セガは天才だ。天才は何をやっても許されるんだ。

ゴエモン「それで、マリオの息子のフリをして、同窓会を開いたってことか」

ラルフ「お前は同窓会を開いて、一体何がしたかったんだ?」

ジュニア「ファミコン同窓会をセガの看板キャラクターが開いたということが分かれば、大炎上すると思ったんです。そうすれば、みんながセガに目を向けてくれるのではないかと…」

サムス「そこまでして…。アンタの気持ちは分からなくもないけど、バカなことをしたもんだねぇ」

ジュニア「はい、みなさんを騙してしまって、すみませんでした」

サムス「でも、アンタのセガ愛は本物だよ。そして、セガ愛を持った奴は、たくさんいるってことだ」

ジュニア「え?」

サムス「ちょっと待ってな」

(電話コール音)

サムス「あ~、あたし、サムスだけど。そう、サムス・アラン。実はね…」

ゴエモン「誰と話してるんだ?」

ラルフ「マリオには、さっき電話してたよな?」

サムス「ほら、アンタに代わってほしいってさ」

ジュニア「え?もしもし、アレックスキッドですが…」

ソニック「おう、アレックス!俺だ、ソニックだ。お前今、どこにいる?こっちでセガ同窓会やってるからさ、お前も来いよ!」

ジュニア「え?」

ソニック「お前にも案内送ってたんだけどな、見てなかったのか?とにかくみんな待ってるから、すぐ来いよ!」

(電話キレる。ツーツー音)

ジュニア「セガ同窓会って…?」

サムス「ソニックが言ってただろ?今日はセガ同窓会が開かれているんだよ。
セガは忘れられてなんかいない。アンタは少しばかり視野が狭くなっていたんだ。
曇りのない目で見渡してみたら、世界は、セガ愛にあふれていたってことさ。
ほら、みんなが待ってるよ。行ってきな!」

ジュニア「はい、僕が間違ってました。ありがとうございます。みんなのところに行ってきます!」

(扉が開く音)

ゴエモン「いや~、なんと言うか…一件落着って、かんじなのか?」

ラルフ「まぁ、結果的に良かったんじゃないか?セガの方も同窓会をやっていて、助かったな」

サムス「世の中、捨てたもんじゃないね。じゃあ、せっかく集まったことだし、アタシたちも乾杯と行こうか!」

ゴエモン「おう!」

ラルフ「美味い酒が飲めそうだな」

(以下、ジュニアモノローグ)
セガもファミコンも40周年。
両方祝って、それで良い。
そして、50周年の時は、セガとファミコン、合同でゲーム同窓会を開くぞ!


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