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中洲の王子様
今の中洲のバー文化を作ったといっても過言ではないニッカバー七島。
そのオーナーバーテンダー、七島啓さんが今年の5月に93年の人生を終えて旅立ちました。
若い頃は端正な顔立ちで王子様と呼ばれ、歳を重ねてからは穏やかな雰囲気で最後までお客さんを優しく包んでくれた七島マスター。
僕のバーテンダーとしての価値観にも大きな影響を与えてくれたこと、この場を借りて心からお礼を言わせてください。
ありがとうございました。
覚えている範囲で七島マスターのエピソードを振り返ってみます。
下積み時代から怪物でした
七島を立ち上げてしばらくしてもやってたと思うことではあるのですが。
営業中はメインバーテンダーとしてシェイクタイプのカクテルを毎日2~300杯作って(腕とれませんか?)、
営業終了後はジンを1本空けて、
大濠公園で10km走ってたそうです。
…人間ですか?
お弟子さんが独立するにあたって
七島マスターにはたくさんの、本当にたくさんのお弟子さんがいます。
中洲のバーがものすごく高いレベルで保たれているのは、お弟子さんの活躍が素晴らしいからだと思います。
当時の記事を探しましたが見つかりませんでしたから、記憶を辿ってあるバーテンダーさんが七島を卒業するときにマスターがかけた言葉を書きます。
「うちで教えたのは本当に基本的なこと。
お酒に詳しく、お酒をおいしく作るのは当たり前。
たくさんのお客様に信頼されるバーテンダーになりなさい。
そして立派なバーテンダーであるためには、立派な人間でなくてはならない。
たとえばバーテンダーをやめて会社で働くことになっても、きちんと勤めあげなくてはならない。
ただバーテンダーとして通用するだけではだめです。」
ここからは七島から離れてお店を立ち上げたそのバーテンダーさんの言葉です。
「当たり前のことを当たり前にするのはとても難しく、いつも微笑みを絶やさず、一定の態度で立ち振る舞わなくてはなりません。
毎日が失敗と反省の繰り返しです。
それでも今晩も努力を続けなくてはなりません。
主役である、素敵なお客様のために」
これからも七島マスターの思いは中洲に伝わり続けていくと思います。
リベンジマッチ
七島マスターのオリジナルカクテルといえば。
そうですね、100人中100人が答えるロマノフですね。
当時のお客さんの要望を受けてドライな口当たりのロマノフが誕生して、七島ですごく人気になりました(僕も飲みましたがマティーニより好きです)
そこでカクテルコンペに出ることになって、当時は全国大会がなくて一番大きいのが九州大会だったので、
自信満々にロマノフを引っ提げて参加→まさかの準優勝
七島で飲むようなお酒好きには大いにうけたカクテルでしたが、時代がそこまでドライなものに追いついてなかったんでしょう。
マスターはよほど悔しかったのか次の九州大会にも参加して、関門ウォークっていう作品で優勝をかっさらいました。
始球式
ゾルディック家のじいさんよろしく生涯現役の七島マスター。
80歳を過ぎてからもカウンターに立つ超人ぶりは変わらずでしたが、僕が初めて七島マスターを見たのは福岡ドームでした。
80代半ばのおじいさんバーテンダーが見事な投球を披露してて、大きな拍手が送られていました。絵になる人です。
パッと思いつくのはこんなところです。
中洲のいたるところで話は聞けると思うので、福岡を訪れたときには中洲のバーにも足を運んでみてはいかがでしょうか。
入り口の扉が重くて「一杯いくらするんや」とか思うかもしれませんが、食べログとかでもべらぼうな予算のお店ってそんなにないと思うので安心して飲んでいってください。
好きなお店はありすぎるので、七島だけ掲載しておきます。
お酒が作りたくなったので今日はバーテンダーしてきます…!