星空美咲に落ちた話
先日、御園座でドン・ジュアンを観劇したのだが、そこで見事に星空美咲に落ちた。トップコンビプレお披露目だし、名古屋行ってみたいから見に行こう!というフッ軽だったのに、本当にあっさりと星空美咲に落ちてしまったのである。初めて観劇した時から最近見た作品までの自分の記録を残したい。
・アルカンシェル
そもそも私にとっての初観劇がアルカンシェルだった。永久輝・星空の次期トップコンビが発表され、次はこの二人の時代になるのだなという気持ちで見ていた。
その時に感じたのは、「このコンビなら安心できる」ということである。WOWOW放送の『はいからさんが通る』を見て宝塚にハマった私にとって、柚香光は圧倒的トップスターであり、彼女がいなくなるということに多少なりとも不安を感じていた。だが、アルカンシェルでの現トップコンビが次期トップコンビに繋ぐような演出と、ひとみさの中で既に存在しているように思えた安定感によって、私の中で不安が安心へと変化していったのである。柚香光の有終の美をこの目で見よう、と観劇を決意したのだけれど、結果的に新制花組への期待を膨らませることが出来た。
アルカンシェルからドン・ジュアンまでの数か月で、うたかたの恋やフィレンツェに燃えるなどを見たのだが、星空美咲は「顔かわいい!」くらいの意識しかなかった。新トップ娘役だし、もともと舞空瞳が好きなので、彼女にも注目しようかな?とは思っていたけれど、実際はほとんど男役を見ていたと思う。
・ドン・ジュアン
見事に星空美咲に落ちることになったドン・ジュアン。初演を見た時にも思ったのだが、ドン・ジュアンとマリア、なかなか知り合わない。花組版の方がマリアの出番は多かった気がするけど、それでも序盤はとにかくドン・ジュアンが酒と快楽に溺れているのを眺めるのみ。
やっとマリアとドン・ジュアンが出会って、物語が進んでいく中で、驚いたのは星空美咲があまりにも肝が据わりすぎているということである。本当に、どっしりと構えて堂々とした演技、歌も全く不安にならないくらい上手い。そしてあのビジュアル、かわいい。105期の彼女はまだ研6で、トップスターの永久輝せあは97期の研13。トップ娘役になるのが決して早いというわけではないけれど、御曹司で三拍子そろっている永久輝相手に対等に、堂々としているのは並大抵のことではないと思う。実力が伴っていて、自信を持ってのびのびと舞台に立っている彼女を見ると、本当に気持ちが良い。また、一幕最後のフラメンコでは彼女のスター性が明らかに光っていた。もっと星空美咲のダンスが見たい、もっと星空美咲の芝居が観たい、もっと星空美咲の歌が聴きたい。名古屋の地で、見事に星空美咲の虜になってしまった。
そして最近見た星空美咲出演作品は、『銀ちゃんの恋』と『冬霞の巴里』の2作。
・銀ちゃんの恋
この時、彼女はなんとびっくり出演者の中で最下級生の研3。なのにヒロインだし、役は(元)人気女優、しかも妊婦。この作品で感じたのは、彼女の演技が好きだな、ということ。序盤の女優としてのツンツンとした感じ、銀ちゃんの前ではそれが剝がれてしまうことや、銀ちゃんとヤスへの気持ちの揺れ、そして母としての自覚が芽生えていく様。演技一つ一つが丁寧で、しっかりと研究しているのだろうなあと思った。今まで好きになった方々は顔とダンスから入っていて、ショーやフィナーレが好きなタイプなので、まさか演技から好きになるとは、全く思わなかった。
・冬霞の巴里
そしてラストがこちら。現在の相手役永久輝せあと組んでいる作品の一つなのだが、姉弟モノで、彼女は姉。どこかで永久輝さんが「学年差があるのに、姉役は大変だったと思う」というようなコメントをしていたと思うのだが、全く学年差を感じさせない仕上がりになっている。それは二人が出す空気感はもちろん、星空美咲の実力に穴がないからだろう。姉弟と聞いたとき、禁断の恋でも始まるのかと思ったのだが、それをはるかに超える愛でオクターヴを包んでいたように思える。複雑な家庭環境、復讐を目指す姉弟というねじれた関係性の中で、よく演じ切ったなと思った。
これからも彼女にはのびのびと舞台に立っていてほしいし、活躍を期待している。魅力に気付き始めたばかりだし、最近レビューをあまり見ていないので、演技についてばかり書いてしまったが、これからは歌とダンスにもさらに注目したい。ドン・ジュアンを通して、彼女がトップ娘役にふさわしく、劇団は素晴らしい人事をしてくれたと思ったし、彼女に出会えてよかった。周りからどんなことを言われても、星空美咲が現花組トップ娘役であるのだから、自信を持ってそのままやりたいようにやっていて欲しい。
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