こんな作品の山の中でどう見つけて貰うんだろう?目立ちたいなら一人だけ違うことをしろ。
2021年、キャラクターデザイナーにどうしてもなりたかった私は、みんなと同じことしてもダメだと思い漫画の道からキャラクターデザイナーの仕事を目指すことにした。
私にとって通り道でしかない漫画家の道。
しかし、連載直前まで来て、どんどんキャラデザの道から遠のいていく感覚があり一旦冷静になってしまった。
「私は何のために漫画描いてるんだっけ?」
編集さんのご要望通りに技術を提供する為に漫画を必死に勉強して賞を獲ったんだろうか?
お金を生み出す為に企業の部品の一部になったんだろうか?
いやいや、キャラクターデザイナーになって、誰かの心の支えになれる仕事がしたかったんじゃないのか。
連載、原作者は私をどんな目でみてる?
コミカライズできるなら多少の不満は飲み込もう、ビジネスだからこれは。出せば私の知名度は上がる。
そんな風に思われてないか?
うん、思われてるよな、こいつが作画担当では不安が多いけど知名度に繋がるならって思ってるんだな。
得意の読心でそう悟った私は連載を断った。
超能力と言うほど大それたものじゃないけど、空気や言葉の使い方から伝わる波動みたいなものをキャッチして相手がどんな感情でいるのか、どんな思惑なのか分かる謎のエンパシー能力を持つ私。
行動に移すまでの時間や間、声の高さ大きさでもその人の心の中が透けて見える。
世界でも割と存在していて、日本人は特に使える人が多いらしい。
普段から修行みたいにして人の心を理解しようと努めてきたんだから、鍛えられてしまったんだろう。
いいのか悪いのか、見えなくていいもんまで見えるので、こんな能力はない方が幸せかもしれない。
本当に人間不信にしかなれないから。
だから私はいつも人と目を合わせない。
目を見るといちばんダイレクトにその人の心が入ってくる。それが悪い感情だった場合、かなり精神的にきつい。どうしても目を合わせないと失礼な時は我慢するけど、その時は心はシャットダウン状態で自動接客モードに切り替わる。
なので、信用してる人間とのみ目を合わせられる、みたいな身体になってしまった。
つくづく人に恵まれないな。
と思いながら、次の取り引き出版社を探した。
でもこの時点でもう商業漫画への意欲が失せていた。
表向きは大義名分、素晴らしい仕事として憧れられる漫画の世界だが、その真実とはいかに?
昔はきっと素晴らしい芸術作品をお届けすることが理念だったんだろうけど、今はすっかり変わってしまったと見えた。
業界に長くいる人はどうしても自分は経験を積み重ねてレベルが高いところにいると思いがちだけど、私はそうは思わない。
「そういうもんなんだよ」と言う人はとりあえず信用しない(笑)
長くやったからといって経験値レベルと能力レベル(発想力)は比例しないと思う。長いだけで仕事しないやつは世の中に数多存在している。
そういうのを若者は見ているし、未来に希望なんて持たなくなることを大人は自覚した方がいい。
「そういうもん、受け入れろ」と諦めた時に、あなたの成長は全部ストップしてんだよ。
そういうのは一般ピーポーの発想ではないかな。
理想の為に戦ったことあるやつは諦めずにいつだってこの世界を変えてやろうって思ってるさ。
それに、失敗を避ける人生の経験値と、失敗から理想実現の為に奔走する経験値じゃ質が違いやしまいか。
さて、タイトル回収のお話に入ろう。
私は本屋に毎日訪れて、コミック棚は遠巻きに見ている。昔と比べて随分縮小した。
それでも沢山の作品の山、漫画の海が広がっているわけで。
この中で自分がどんなに奇抜な表紙を描いたり、変なタイトルを付けたりしたところで、見つけて貰うのは無理だろうと思った。
ひとつも目立たない。
だってみんな同じことしてるんだから、当たり前よなって。
奇抜なタイトル、奇抜な表紙、目立つロゴ、みんなやってるからみんな同じに見える。
芸術家で大切なことといえば、他の誰でもなく「コイツだ」と一目見ただけで分かる強烈な個性だ。
正直、商業漫画ではなかなかそういう作品や作者は見かけない。(いるにはいる)
強烈な個性を版元は嫌いがち。
庶民に理解されないと思ってるから。
別にそんなことはないと思うけど…。
自分だけの誰とも被らない何か、をいつだって人は求めてるじゃないか。
「みんなはそうなんだ?あたしは違うよ。あたししか知らないもの持ってるの」
「みんなが分からないと言っているもの、あたしだけは理解できる」
そんな特別感、優越感を人間は本能的に持っていたりする。
だけど私には、今の商業作品からそれを感じられなくなったように思う。
埋もれたくなければ目立つしかない。
みんなと同じが嫌なら、違うことをするしかない。
私は理想の夢を手に入れるにはそれしかないと思った。
とびきり頭がおかしいことをやってのけるしかないんだよ。
だからみんなとは違う方に逆走するしかない。
めちゃくちゃ嫌な顔されるだろうし、バカじゃねぇの?って鼻で笑われたり、なんだアイツって嫌われるかもしれないけど、自分の人生に納得できないくらいなら、人に嫌われてもいいや。
私は成田悠輔さんがすごく好きなんだけどさ(笑)
あんな風に生きてみたいと思ったよ。
社会性も大事だけど、自分の一度きりの人生のほうがよっぽど大事じゃん。