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インハイ決勝の敗戦から進化した王者の貫禄~高校サッカー選手権奈良大会~

 今大会の決勝カードも最終的には奈良育英高校と生駒高校の4季連続で同じ対戦カードとなる決勝戦となり今大会10本目となる観戦記noteで締め括りたいと思います!

 今年のインターハイ決勝では生駒のゲームプランに乗っかってしまい県代表を逃したため、雪辱を期して選手権4連覇は何が何でも果たしたい、その奈良育英の闘い方が気になりましたが見事に雪辱を果たし大会4連覇を達成しました!

 その奈良育英の闘いぶりを観てインターハイ決勝での敗戦からの進化を感じた所を中心に観戦記を書いてみました。

全国高校サッカー選手権奈良大会結果



◼️決勝戦のプレビュー

 まずは前回アップした決勝戦の前に書いたプレビューを添付したので個人的に予想する両校のゲームプランを整理しておきます。

 簡単にまとめると生駒が勝つためには、インターハイ予選以降の成長をリーグ戦であまり感じられなかったので、インターハイ決勝の時と同じ様にロングボール主体のゲームプランで、奈良育英のDF裏へボールを放り込んで敵陣へ押し下げてからの攻撃を起点に、主にセットプレーで得点して最少得点で逃げ切るしかないという所になります!

 逆に奈良育英が勝つためには、インターハイ決勝の反省から前半勝負でハイプレスからのショートカウンター、および中盤を経由してのサイドアタックによるクロスボールからのフィニッシュなど、序盤から積極的に攻め込み前半で試合を決めるぐらいに生駒を圧倒するというところになります!

 この様に両校のゲームプランがガチンコぶつかり合い序盤から主導権を握るのはどっちだ?というプレビューでした。

◼️決勝戦のレビュー

【スターティングラインナップ】

1-4-4-2(ダイアモンド型)

 奈良育英は1ー4ー4ー2のダイアモンド型6番を前にして高さの調節および構造を作る役割にして18番をDFライン前でアンカーの役割を担っていました。

1-4-4-2(ライン型)

 対して生駒のシステムも中継では1ー4ー2ー3ー1と言ってたけど基本は1ー4ー4ー2で2番がポストプレーの役割を担って中盤に落ちてきていたと思います。

【前半戦のゲーム展開】

 立ち上がり早々に主導権を握ったのは奈良育英でした!

ゴールキックからの攻め上がり①
~スペインサッカー研究所より引用~
ゴールキックからの攻め上がり②
~スペインサッカー研究所より引用~

 サイドは逆だけど上記のイメージ図の様なゴールキックを左SHの育英11番に当てる起点から生駒ゴール前に攻め上がるプランが見事にハマり、前半3分と5分に奈良育英のエース9番がゴールネットを揺らす決定力を見せつけました!

 これは2本ともオフサイドとファールでノーゴールになりましたが、生駒DF陣にはいきなり度肝を抜かれた先制パンチを食らい奈良育英の攻撃力の怖さを与えるには十分効果があったと感じました。

ゴール前に押し下げてミドルシュート!
~スペインサッカー研究所より引用~

 これを切っ掛けに序盤から奈良育英に攻め込まれた生駒のDF陣はゴール前に押し下げられるシーンが増えてしまい…MFラインもDFラインに吸収されてしまって空けたスペースに走り込んだ育英18番がミドルシュートを一閃!
 これを決めた奈良育英が前半14分に早々と先制点を奪いました!

対角に前進を意識した攻撃プラン
~スペインサッカー研究所より引用~

 この日の奈良育英は逆サイドを意識した対角に攻め上がる攻撃プランだった様に思います。

左SH⇒右SH(右SH⇒左SH)
~スペインサッカー研究所より引用~
右SB⇒左SH(左SB⇒右SH)
~スペインサッカー研究所より引用~

 上記のイメージ図の様に奈良育英はSBやSHからロングフィードでサイドチェンジによるサイド展開もあれば…

右⇒左(中盤経由のショートパス)
~スペインサッカー研究所より引用~
左⇒右(中盤経由のショートパス)
~スペインサッカー研究所より引用~

 育英6番や8番を中心に中盤で横パスを受けてサイド展開するパターンもあり、生駒の守備対応をスライドさせながら守備の意識を幅を使って揺さぶっていました。

 生駒の守備対応はゾーンではなく基本的に個人能力を生かしたマンツーマンによる1対1のデュエルに勝ってボールを奪っていく守備だったので、この日の奈良育英の攻撃に対しては幅を使われてボールを動かされ過ぎたため、後手後手の守備対応になり奈良育英にはマンツーマンの守備対応は正直厳しかったと思いました。

 他に奈良育英はCKを生駒GKに競らせる様に蹴っており、生駒GKの守備能力が高いので吊り出してゴール前を空けさせて、こぼれ球を狙っているのかな…と感じました。

 それは生駒GKのシュートストップも多い対策でも言える事で、この日の奈良育英はシュートに対して、こぼれ球を狙いゴール前に詰めてるシーンが多かったです。

 これは前半37分の2点目のシーンに生きて、育英9番のポストプレーから繋がれたパスを受けた育英10番がドリブルで仕掛けてシュートを放ち、このこぼれ球を既に詰めていた育英9番がゴールネットへ難なく押し込みました!

 生駒サイドにとって押し込まれ続けた前半戦ここまで何とか1失点で凌いでいた集中力も切れたのか…このあと前半40分には生駒CB5番が育英9番に対して簡単に振り切られてしまい、そのあと直ぐにクロスボールを上げられると生駒DF陣はボールウォッチャーとなり、ファーサイドをフリーに空けて育英11番に3点目を押し込まれました。

 この日の奈良育英は縦に速い攻撃だけでなく、幅を広く使った攻撃を活用して、縦横無尽な攻撃プランで1対1に強い生駒の堅い守備をも簡単に攻略しました。

 これはプレビューにも書いたけどインターハイ決勝では様子見で生駒に対し前半受けてしまった結果、生駒に主導権を渡してしまった奈良育英の反省を糧にした成長ぶりを魅せられました。

 逆に前半戦の生駒は序盤から自陣に押し込まれ続け奈良育英の猛攻を受けてしまいロングボールもなかなか蹴らせて貰えず、マンツーマン守備の影響で空きスペースにこぼれたボール回収も出遅れ奈良育英に先に回収されては再び押し込まれる悪循環で前半戦は全く良いシーンを作れませんでした。


【後半戦のゲーム展開】

 奈良育英の実力を考えると致命的な3失点を喫した生駒は後半早い時間帯で得点して反撃に転じたいため、ハーフタイムに両SH(14番⇒20番/4番⇒11番)の交代カードを切って後半から流れを取り戻そうとベンチは動いてきました。

 対して奈良育英は完璧だった前半戦のゲームプランを引き続き後半も続ければ良いのでハーフタイムでの選手交代は見送り前半と同じメンバーで後半を迎えました。

 後半の入りも良かった奈良育英ですが後半6分に生駒GKのゴールキックから、こぼれたボールを交代で入ってきた生駒20番に拾われドリブルを仕掛けられると、育英4番が生駒20番のスピードを見誤り競り負けて裏を取られ育英GKの頭を越すループシュートで思わぬ失点を許してしまいました。

 この得点で生駒にゲームの流れが変わるのか?と思いましたが、奈良育英DF陣は直ぐに落ち着きを取り戻して、これ以降は生駒20番のスピードにも馴れて決定機を作られる事はありませんでした。

右サイドから崩してマイナスクロス! ~スペインサッカー研究所より引用~
左サイド加速してのマイナスクロス!
~スペインサッカー研究所より引用~

 後半10分以降は再び奈良育英が主導権を握り始めて、前半同様の縦横無尽にボールを動かす再現性ある攻撃に転じて、生駒DF陣も前半同様にマンツーマンの守備で後手後手を踏んでいたため、奈良育英は両サイドを加速して仕掛けるマイナスのクロスボールで決定機を何度も作りました。

 しかし再三チャンスを作りながら生駒GKの好セーブもあり追加点こそ取れませんでしたが、2点リードがあればこの日の奈良育英にとっては十分なアドバンテージとなり、主導権を最後まで生駒に明け渡す事もなく、このまま3対1で危なげなく勝ち切りました。


【決勝戦の雑感】

 前後半通じて奈良育英のゲームプランで試合は進み生駒サイドにとってはスコア以上にチーム力の格差を見せつけられました。

 奈良育英サイドも攻撃面では5、6点取っててもおかしくなく、守備面でも生駒の攻撃プランが少ないのもあって、過去の決勝での対戦より危なげなく試合を見れたと感じた人も多かったかと思います。

 それぐらい奈良育英はインターハイ決勝の敗戦以降で中盤を使って前進できる様に進化しており、逆に生駒はインターハイ決勝と同じ戦術で選手権も県代表を狙いましたが、進化していた奈良育英には全く通用しなかったので、来季は個人能力に頼る攻守から卒業して組織的なサッカーが出来る様にテコ入れは必要かと思いました。


◼️県内2強と言えば…

 4季連続で県大会の決勝カードが奈良育英と生駒だったので県内2強と言えば当該2校の事を指していると思っている方は多いかと思いますが、普段からリーグ戦を何試合も観ている私からすれば今年の場合だと県内2強と言えば奈良クラブユースと奈良育英で、県大会が行われる高体連で言えば県内2強は奈良育英と畝傍だと思っています。

 残念ながら決勝戦も観た人は理解できると思いますが県内2強には生駒は厳しく現実的には第2勢力の頭と言ったところでしょうか…

【ご参考】
◼️県1部リーグ順位(第16節時点)
①(45) 奈良クラブ 15勝1敗0分
②(43) 畝  傍 14勝1敗1分
③(38) 奈良育英 12勝2敗2分
―――――――――――――――――
❹(24) 生  駒   7勝6敗3分
❺(20) 山  辺   6勝8敗2分
❻(18) 一  条   5勝8敗3分

 今季の生駒は畝傍に対してリーグ戦では2敗(●0対3/●0対1)を喫しており、インターハイ予選でもPK勝ち(△0対0)のため公式記録はドローとなり、3試合とも零封の無得点で勝ててないとなると公平な判断基準で生駒に対しては『失礼』とは全く思っていません。

 生駒が県内2強と言われる為には先ほども書いた通り、個人能力を生かして攻守に渡って組織的なサッカーを構築して再現性ある攻撃が出来る様にならないと、来季も今季の様に奈良クラブユース、奈良育英、畝傍に勝てず後塵を拝する事になると思うので、県大会4季連続で決勝進出の立ち位置に満足する事なく更なるレベルアップに頑張ってほしいと思います。

◼️ご参考

 この1ヶ月に渡り今大会の高校サッカー選手権奈良大会関連でアップしたnote10本には『スペインサッカー研究所』で学んだ事をたくさん引用させていただきました。

 素人のサッカー観戦ヲタクでもサッカーの奥深さを理解する事で見えてくる事がたくさんありますし、今後も新しい事をどんどん吸収して個人的にもレベルを上げたいと考えています。 

 奈良県サッカーに関わる指導者、選手、保護者の皆さんにも視野を広げてほしいし、チームとして真剣にレベルアップを考えているのなら成長できるコンテンツだと思うのでお薦めいたします!

 今回も4,500字を超える文章になりましたが最後まで読んで頂いてありがとうございました!
 出来ればシェア等で拡散のほど何卒よろしくお願いいたします!

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