県内強豪校の攻撃を振り返ってみた~奈良県高校サッカー新人大会準々決勝2試合を観戦して~
2023年1月21日(土)は準々決勝と即ちBest8の対決でした!
会場が橿原市総合運動公園のヤタガラスフィールドと葛城市の新庄新町球技場の2会場だったので、アンケートを取って人気の高い2試合を観戦して、Best8まで勝ち上がって互角の対戦が見込める県内強豪校の攻撃について、どういう狙いでゴールを奪いにくるのか確認しようと思いました。
アンケートの結果、上位カード2試合を観戦する事に決めましたので雑感ですが是非ご覧ください。
奈良育英高校 vs 生駒高校
この試合は2022年シーズンで県内2冠(奈良育英:選手権/新人戦 生駒:インハイ/県リーグ)を取っており、県内2トップと言っても過言ではない事実上の決勝戦となったので、県内ではどっちが強い!と思われているのか、この対戦カードもアンケートを取ってみました。
アンケート結果は意外にも奈良育英の圧勝となりました。
まぁ、でも実際に試合すれば接戦になるだろうと思っていたのですが、最終スコアも添付の通り奈良育英が大量得点を奪い、6対3の完勝で準決勝に進出しました。
それでは、この試合で両校の印象に残った攻撃について雑感を書いて行きます。
この試合のシステムは下記の通り
奈良育英は1-4-1-4-1で、
生駒は1-4-4-2でスタートしてきました。
◼️奈良育英(前半戦イメージ)
説明内容をイメージにして貰うため簡単に図を書いたのでご覧ください。
生駒DFラインが引き気味だったので、奈良育英は底でのボール循環から生駒DFラインの前のスペースで、ポストプレーを絡めて斜めハーフスペースのSHにボールを落として、トップと2列目からIHが生駒DFラインを裏抜けする所へ、DFーGK間の狭いスペースにクロスを入れてフィニッシュの形を作りシュートを打っていました。
前半の2得点こそ直接このプレーが絡んでのゴールでは無かったのですが、そのゴールに至るまでのチャンスの起点には十分なっていたと思います。
◼️奈良育英(後半戦イメージ)
後半立ち上がりから生駒DFラインは前半戦のローラインからハイラインに変更したと思われました。
生駒は1点ビハインドで反撃の為、ハイラインでコンパクトにしてボール保持から攻撃に転じようとプラン変更したと想像できます。
でも、この策が裏目に出ました。
ハイラインによって起こるDFとGK間に広がるライン間を、GKのポジショニングの高さ不足から飛び出し遅れ、更にはCBもライン統率できずオフサイドを取れず、最後にコンパクトにしたにも関わらず育英陣内でボールロストと、カウンターを食らう要因である3つのミスが重なった為、奈良育英の生駒DFライン裏へのスルーパスが抜け出した奈良育英の前線の選手にガンガン通り出し、後半だけでも4得点と奈良育英は完全に波に乗りました!
生駒のゲームプランが崩れたのが要因とは言え、奈良育英もきっちり生駒のDFラインの選手間を、人とボールを通して再現性のある攻撃に転じるあたり、さすが昨季プリンスリーグに所属していただけの事はありましたね!
◼️生駒高校(攻撃イメージ)
それでは逆に生駒の攻撃はどんな感じだったのかというと、簡単に言えば絶対的な攻撃の大黒柱である43番へのポストプレーを中心に、前線から育英DFライン裏への抜け出しだけでした。
しかし、奈良育英が上手くDFラインを押し上げ、オフサイドも上手く取れていたので生駒のチャンスは広がりにくく、更に中盤でボール保持してもミドルサードで無駄にドリブルでボール運んでしまったりと、奈良育英に自陣へ戻る時間を与えてしまう為、ゴール前に守備ブロックを組まれて生駒の攻撃には閉塞感が出ていました。
奈良育英と比べれば再現性には乏しい単調な攻撃パターンだったと言えます。
それでも奈良育英に3得点したので攻撃面では御の字な結果だったと思います。
だから、この試合の敗因は堅守の印象が強い生駒の守備がなぜか崩壊してしまった事だと思います。
まだ新人戦のこの時期ならインハイ予選まで4ヶ月あるので、攻守ともに修正して立て直してくれる事を期待しております。
一条高校 vs 山辺高校
さて会場を移動しての2試合目は、ここ数年奈良県のタイトルから遠ざかりBest4もままならない一条と、最近躍進を続けてBest4常連校となった山辺の試合でした。
試合結果は後半10分に一条が山辺DFライン裏への抜け出しに成功して、右サイドからサポートしてきたフリーの選手に横パス、普通ならここでシュートなんですが、トラップミスでもたつく間にシュートのタイミングを逃したのですが、再度ゴール前に折り返したパスを粘りながら泥臭く押し込み、これが決勝点となり一条が久しぶりBest4に名乗りを上げました。
この試合での両校のシステムは、
一条も山辺も共に1-4-4-2でした!
◼️一条高校(攻撃イメージ)
一条は2回戦もそうでしたが、ボールと人がよく動いてボールを繋いで前進してくるスタイルなので、高校サッカーファンとしては観てて楽しいサッカーで本当に有難い限りです。
サイドアタックもあれば、サイドチェンジにより山辺の守備陣をスライドさせるし、図では表現できてませんがSHのハーフサイドへの移動と、SBのオーバーラップの組み合わせもありました。
更に一条は攻撃の起点には重要なハーフスペースも有効活用しながら、ツートップの10番と7番は山辺DFライン裏へ良い飛び出しも再三ありました。
じゃあ、最高やん!となるのですが、一番肝心な『止めて蹴る』の精度が結構低くく、トラップミスやパスミスからのボールロスト、更には枠外へのシュートミスが立て続けにありました。
まだ新チームになって間もないという事を差し引けば、楽しみであり期待もできるチームだと思いますが、ただ個人技の精度は簡単には向上しないと思うので、春のインハイより秋の選手権を目標にした方が良いかもしれませんね…
これって例年の事なのかもしれないのですが目先の勝利に目がいってしまうと、この魅力的なサッカースタイルを手放す事になりかねないので、今の一条コーチスタッフさん達は本当に我慢強くご指導されていると思います。
なので県内タイトルから遠ざかっているのは、おそらく全国で闘えるチーム作りを見据えての事だと思うので、保護者さん含めチーム関係者の方達には大目に見てあげてほしいと思ったりしています。
◼️山辺高校(攻撃イメージ)
この日の山辺高校は、これまで私が持っていた印象から大きく変わっていて、5バックで統率された守備的なサッカースタイルから一転して、選手任せの放任主義みたくなっていました。
これは新人大会は自由にさせましょ!的な感じなのかどうかも不明なので、今後のリーグ戦やインハイ予選での動向を引き続き見ていく必要ありますね!
この試合で何度も見かけた上の図のシーンが脳裏に焼き付いてしまい、その他の攻撃パターンを思い出せ無かったので、これについて書きたいと思います。
Twitterでもツイートしたのですが…
山辺のSB6番とSH9番がボール持つと、これでもか!というぐらいスペース①のインサイドへドリブルでカットインしてくるので、それに対抗して一条もインサイドへ守備網を絞り、この二人の仕掛けを待ち構えている状態でした。
これは今から思えば新人戦だから最悪試合は負けても良い覚悟で、攻撃のキーマンとなる左サイドの二人に今後の大会の為に、仕掛けを読まれてでも突破して来い!というベンチからの課題やったのかも…とさえ思えてきました。
本来ならSHやSBはアウトサイドのスペース②に向かって、縦に前進する所も駆け引きの為に見せておきたいし、インサイドへカットインして逆サイドへのスペース③へのパスも見せておきたいはずなんです。
プロ選手への育成を謳う山辺のコーチスタッフ陣がそれを知らない訳がないので、私はこの現象を彼等の試練だったんだろうな…と今回そう思う事にした次第です。
あとがき
県内高校サッカーの守備は、頑張って走って粘って身体を張る所が徹底されているので、頑張って走って粘ってゴールを狙う『蹴って走るサッカー』の攻撃では、なかなか得点が出来ず守られてしまう為、県内強豪校には是非とも崩して再現性ある攻撃パターンの構築を進めてほしいと思っています。
あまり厳しい事ばかり言いたくないですけど、将来的には全国大会でも互角に闘えるチームに奈良県代表となって欲しいので、これからも県内高校サッカーの公式戦を観戦したら攻撃面を中心に試合を観ていきたいと思います。
今回も最後まで読んで頂いてありがとうございました!