分厚かった決勝の壁~2024高校サッカー選手権奈良大会~
4季連続同じとなる奈良県大会の決勝カードは阻止できるのか?と銘打って準決勝のプレビューを書きましたが法隆寺国際と一条は見事に生駒と奈良育英の分厚い壁に跳ね返されました。
やっぱり4季連続で決勝進出している両校ともなれば、どんなゲーム展開になっても動じない勝利のメンタルティを持っているし、対戦校も両校に対して無言のプレッシャーを感じて勝手に転けるんだな…と思った準決勝となりました。
◼️準決勝観戦記
①生駒高校 vs 法隆寺国際高校
それではまずスタートメンバーからですが法隆寺国際は私が以前に観た1-3-5-2ではなく1-4-4-2とオーソドックスなシステムでした。
生駒はGK1番を中心に両CB10番と5番に両SB7番と3番の4バックの守備強度が高くて決勝進出の立役者はこのDFラインだと思います。
法隆寺国際は守備面については多少目を瞑りながら攻撃面を注目していましたが『個vs個』で通用していたのはFW10番だけだったので、もう1人のFW14番に両SH11番と4番には単機ではなく10番にもっと絡むかWボランチ6番と8番を使って生駒のゴール前を崩して侵入してほしかったな…と思いました。
それではゲーム内容に入っていくと生駒は対人プレーでの身体の当て方が上手くて、ロングボールによるハイボールの回収やルーズボールのセカンド回収で大事な局面では、ほとんど法隆寺国際にボール渡さず主導権を握りゲームを支配していました。
あれぐらい法隆寺国際がセカンドボールを拾えなくなると守備のルーズさが浮き彫りになって、恐らく生駒が序盤の攻撃で考えていたプラン通りの展開に持ち込めた様に思いました。
ここまで法隆寺国際の守備は相手選手へプレッシングしてボールを奪って攻め上がるパターンが真骨頂だったのだろうと予測できるのですが、今年のインターハイ県代表の生駒にも同じその守備で入るにはあまりにもスカウティング不足だったと思います。
法隆寺国際の守備はボールを奪おうとボールサイドに2人、3人と寄せて行くのですが、例えば前半4分の先制点のシーンでは法隆寺国際がサイドに流れたルーズボールに対して6番、7番、11番と生駒14番に無意識に寄せてしまい、その生駒14番にフリーの6番へパスを出されて余裕を持って優しいクロスボールを、ボールウォッチャーになっている法隆寺国際9番、3番の頭上越しに上げられて、それをファーサイドにフリーで待ち構える生駒4番にきっちりヘディングシュートを決められました。
2失点目もセカンドボール拾われた生駒17番に対して法隆寺国際は6番、7番、9番が寄せてしまい生駒23番に出されたパスを、今度は無理して奪いに行った法隆寺国際のCB2番が身体を入れられながら交わされて、残った法隆寺国際のSB3番が仕方なく生駒23番に止めに行かざるを得なくなり、最後はファーサイドフリーの生駒14番にパスを出されるという後手後手の守備対応でゴールを奪われました。
他にも失点には繋がらなかったけど生駒に寄せては広げられるパスを簡単に出されて生駒のファーサイドにいる選手がフリーになっているシーンがとても多かっです。
そして生駒はボールサイドの逆サイドへSH4番や14番を中心にファーサイドへ開いてボールサイドから流れてくるボールや上がってくるクロスボールに準備してゴールを虎視眈々と狙っていました。
法隆寺国際は最終的に4失点しましたがプレッシングの意味を理解していたのなら、自陣ゴール前に攻めて来るボールホルダーにはプレスバックで1人がインサイドへのドリブルコースを切りながら生駒の攻撃を遅らせて、その時間でカバーに1人付けて残りはゴール前に守備ブロックを固めて跳ね返す準備をしていたのなら、生駒相手でも終盤まで無失点で乗り切りヒリヒリする白熱したゲーム展開に持ち込めたと考えられます。
法隆寺国際は来季は県1部リーグに昇格するのでこの守備はリーグ戦で改善しながら身につけて来季の公式戦で生駒に雪辱してほしいと思います。
でも法隆寺国際の強みであるボール保持時での人とボールを動かして前進するプレーは垣間見せる事が出来たと思うので、試合中継を観た方も勝った生駒より面白いサッカーするな!と感じた人も多かったのではないでしょうか。
それでは何で法隆寺国際が無得点に終わって生駒にクリーンシートされたのか?となるのは最初にも書いた通り、生駒のGKがスーパーでDFラインの守備強度も高かったのを差し引いても攻め方が『個vs個』になってしまったからだと思います。
法隆寺国際はせっかく底と中盤による良いパスワークでサイドに立つ両SHの4番と11番にボールが渡るところまで行っても、パスを受けたあと生駒SBの3番と7番に対峙した時に止まった状態からドリブルで抜こうと何度も仕掛けていたので、さすがに堅守の生駒DF陣に対して止まった状態からの加速ではスピード不足で抜ききれず封じ込められた事が閉塞した要因として大きかったと思います。
生駒戦で言うならサイドでボールを受ける時は先に縦へ走って加速した足下にパス出して貰えれば、さすがの生駒SBでも抜ききれたと思うし更にカットイン気味にSBの背中のスペースでパスを受ける事が出来たのなら決定機のシーンも作れたと思います。
持っている武器を最大限生かすゲームプランを立ててからシミュレーションとしてトレーニングして試合に臨んで個人に対し組織として仕掛けるのと、『自分達のサッカーで圧倒するぞ!』という気持ちだけで一人一人それぞれが対峙する相手選手だけを見て独りよがりに仕掛けるのとでは、チームとして求めている『結果』が大きく変わってしまうと思います。
これを糧に法隆寺国際には年明けの新人大会以降で更なるステップアップを期待して今後も躍動感が溢れるサッカーで観衆を魅了させてほしいと思います。
最後に想像なんですが選手層的に奈良育英より劣後している生駒が4季連続も決勝進出を果たしているのは、対戦相手のスカウティングから対策プランを立ててチームに落とし込むなど影でサポートする優れたコーチスタッフが存在するのではないか?と思いました。
②一条高校 vs 奈良育英高校
かつての2強時代は奈良クラシコと言われ両校の対戦は雌雄を決する決勝戦と決まっていましたが、今はその力量も大きく差が開き一条にとってはスタイルを捨ててでも割り切ったゲームプランを立てざるを得なく…この奈良育英戦に挑んだ準決勝となりました。
一条は基本的に1-4-4-2のシステムでボール保持した際にFW18番を狙ったロングボールで、陣地挽回しながらワンチャンを狙う割り切ったゲームプランで、私が準決勝の見どころで考えていた以上に奈良育英との実力差を感じました。
奈良育英は毎試合スタメンを変更しては対戦相手に的を絞らせないゲームプランで、この日の準決勝も準々決勝の畝傍戦とはWボランチを両方とも変えてくるという…選手起用で選手層の厚さを見せ付けてきました。
まず前半戦は一条のゲームプランが見事にハマり、奈良育英は一条のロングボールでことごとく自陣に跳ね返されては一条18番に納められたり、セカンドボール回収しても上手く中盤を経由して前進できずロングフィードが多くなり、なかなかボールが繋がって前進していかず攻撃のリズムに全く乗れてなかったと思います。
その展開の中で前半18分にCKから一条に先制されたのは奈良育英にとっては痛かったと思うし、その後の奈良育英のプレーも少し慌てていた様にも見えました。
一条サイドからすれば1点リードのままハーフタイムを迎える事が出来れば、後半からメンバー交代してくるであろう奈良育英のゲームプランに対して、一条サイドもゲームプランの修正をかけたかったと思いますが前半終了間際に痛いミスが続きました。
まずは前半37分の同点のシーンでは、奈良育英陣内からのスローインからFW15番とSH11番に繋げられエースのFW9番に渡り、そして自陣ゴール前へ個人能力の高い奈良育英9番にドリブルで仕掛けられてしまい一条DF陣は慌ててしまったのか…一条SB3番がプレッシングで身体を当てて制限をかけているにも関わらず、一条はCB15番も奈良育英9番に対してボールを奪おうと寄って行きドリブルコースを変えられてしまい、その結果9番のシュートコースを開けてしまったため難なくボールを流し込まれ同点弾を許してしまいました。
まだ同点のままハーフタイムを迎えられたら良かったのですが、奈良育英に対してミスからの失点は畝傍もそうだった様に動揺は引きずってしまうのでしょうか…
失点直後の前半40分にも再びゴール前に奈良育英9番の侵入を許して、今度は一条CB5番が奈良育英9番のクロスボールをブロックするためスライディングで止めにかかり、併せて一条GK1番も飛び出しスライディングでクロスボールを止めに行ったのですが、たまたま奈良育英9番が空振りしたのがフェイントとなり一条のGKとCBがスライディングで倒れたままのところを、奈良育英9番は無人となったゴール前へ落ち着いて浮かしパスを通して、この浮き球を奈良育英11番がヘディングで押し込んであっという間の逆転劇となりました。
一条として前半終了間際の2失点は与えなくても良かった悔いの残るプレーだっただけに、一条ベンチはハーフタイムに前半戦で消えていたFW9番と交代でSB19番を投入しSB3番をSHにSH7番をFWに上げて攻撃の立て直しを図ります。
しかし奈良育英ベンチもハーフタイムに動いて来て、満を持してWボランチを2人とも畝傍戦スタメンの18番と6番に交代させてきて、もう一条には主導権を渡さないとばかりのゲームプランでした。
後半戦は奈良育英のプランが功を奏してWボランチの交代から中盤でのパス交換がスムーズになり、後半早々ボール循環から奈良育英11番にパスが渡りペナルティエリア内にドリブルで侵入した際に、今度は一条SB6番がスライディングで奈良育英11番の足を引っ掛けて倒してしまい致命的なPKを与えてしまいました。
後半6分このPKを育英11番がキッチリ決めて3対1とリードを広げると一条の反撃意欲の出鼻を挫く事に成功した奈良育英は、このあと終始主導権を渡さず終了間際にも右サイドからのクロスボールを奈良育英8番がボレーシュートを決めるなど、終わってみれば4対1と奈良育英の快勝劇となりました。
ただ一条が前半終了間際まで奈良育英を苦しめたのは間違いなくて、それだけに奈良育英に許した3失点がプレスミスと無意味なスライディングという…何でゴールを守らずボールを奪いに行こうとするのか?自分が抜かれたらゴールは誰が守るのか?という守備に対する理解度の低さが、せっかく先制点をあげてプラン通りの勝ちゲームを壊してしまったのはとても勿体なく感じた試合となりました。
◼️あとがき
遂に決勝戦のカードが生駒vs奈良育英に決まり4季連続同じ県大会決勝カードとなりました。
この両校が4季連続で県大会決勝まで勝ち残るのは対戦校がプレスミスしてしまうのと、どうしても『個vs個』で闘いを挑む事で勝手に自滅するんだな…と準々決勝と準決勝を観てつくづく感じました。
これからは奈良県の高校もサッカーに対する理解度をもっともっと高めていかないと両校の様に勝負強いチームになっていかないな…と今大会は特に強く感じました。
今回も4,800字を超える長文になりましたが最後まで読んで頂いてありがとうございました!
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