見出し画像

ミニ四駆を科学する#06 空気抵抗について考える①理論編

こんにちは。独自にミニ四駆についてアレコレ分析しているFalconです。
今回は前回の転がり抵抗に続き、最も空気抵抗の影響が大きくなる最高速時を題材に空気抵抗について考えてみます。

空気抵抗とは?
空気中を物体が移動するとき移動を阻害しようと働く力の事です。
空気抵抗は走行速度の二乗に比例して大きくなる特徴があります。
同じ形のマシンであれば、仮に2倍の速度で走ると空気抵抗は4倍に膨れ上がります!!

空気抵抗 = 抵抗係数(CD値) x 前面投影面積 x (1/2 x 空気密度) x 速度x速度

・空気抵抗力を概算する
空気抵抗は以下の式で求めることができます。
空気抵抗 = 抵抗係数(CD値) x 前面投影面積 x (1/2 x 空気密度) x 速度x速度

いつものノーマルアバンテの最高速時の空気抵抗を概算してみます。
代入すべき変数について、計算式の後ろの項から順番に見ていきます。

ストレート部の平均で2.8m/sではあるが、ターンで減速後ストレートで加速しているため、
ストレートエンドの最高到達速度は2.8m/sよりも速い。推定最高速度は2.9m/s程度と考えられる。
条件はノーマルエアロアバンテ、重量120g、ギア4.2:1。

速度
ミニ四駆の走行速度です。単位は秒速[m/s]を使います。
2回掛けるので影響が非常に大きくなります。
ノーマルアバンテのオーバルコースストレート部での平均速度は2.8m/sですが、ターン後から加速して行くので最終到達速度はより伸びているはず。
今回は推定最高速度2.9m/sを使います。

空気密度
ミニ四駆を走らせている空間の空気密度です。単位は[kg/m3]
空気密度は標高や気温によって変化しますが、一般的な平地で20℃程の気温であれば1.14 [kg/m3]を代入すれば問題ないと思います。

前面投影面積
ミニ四駆を真正面から見た際のシルエットの面積です。単位は[m2]
正確に測ることは難しいので概算します。
車幅 x 車高 x 見た感じの面積割合 とします。
0.08[m] x 0.05[mm] x 70% = 0.0028 [m2]

正確に投影面積を計るも難しいので、ザックリ見積。70%は少し大きいかも・・・

抵抗係数
いわゆるCD値のことですが、風洞やCFDを使って調べることは簡単ではないので、とりあえず相場を知るためにこちらも概算値を使います。
サイドローラー等の抵抗体が沢山付いていて、普通の車とは明らかに違う形なので相場もよく分かりませんので、とりあえずオープンホイールのレースカーであるF-1を参考にしてみます。
空力専門書のRace Car Aerodynamicsによると2000年のフェラーリF-1がCD=0.99[-]とのことなので、とりあえず同等のCD=1.0[-]と仮定します。
(ずいぶん形は違いますが、そこは分かり易くとりあえずCD値1.0で…)

英語で読むのは大変だが、幅広く自動車の空力に関して書かれた専門書。
少し古いが様々な車両の空力値(公表値)も載せてある。

ノーマルアバンテ2.9m/s (約10km/h)の時
空気抵抗力 = 1.0 x 0.0028 x (1/2 x 1.14) x 2.9 x 2.9 ≒ 0.013 [N]

ではこれがどの程度の力かというと、『#05 転がり抵抗を極める』より
ノーマルアバンテの転がり抵抗が0.038N
意外にもこの速度では転がり抵抗よりかなり小さい事が分かります。

ちなみに2.9m/s時(9300rpm)の駆動力は、#05を参考にちょこちょこっと計算すると0.052N。

最高速度点において、空気抵抗 = 駆動力(=全ての抵抗)-転がり抵抗と仮定すると0.052 - 0.038 = 0.014が空気抵抗となりますが、今回の概算は0.013でありザックリ計算としてはほぼピタリ賞!?という事で概ね考え方は合っていると考えられます。
(実はピタリ賞狙ってCD値と投影面積を予測してはいるのですが・・・)
実際には直線でも軽くコーナーローラーを壁に擦ったりもしているのでその分も考慮すると非常にイイ線突いていると思われます。

という事でノーマルのミニ四駆が直線を最高速度付近で走る際の抵抗は、
転がり抵抗が73%、空気抵抗が27%となり空力の寄与度はあまり大きくないように見えます。

一方で、仮にチューニングしてボディ形状を変えず倍の速度で走るマシンを作ったとすると、その時の空気抵抗値は、以下の様に4倍になり、
転がり抵抗0.038Nより大きく、ノーマルモーター9300rpm時の駆動力をも超え、影響がかなり大きくなることが示唆されます。
空気抵抗= 1.0 x 0.0028 x (1/2 x 1.14) x 5.8 x 5.8 0.054 [N]

◇まとめ
・ノーマルミニ四駆の空気抵抗の影響は、転がり抵抗よりも小さく寄与度はさほど大きくないと考えられるが、抵抗全体の27%を占めているので決して無視できるほど小さくもない。
・エアロアバンテのCD値は乗用車の3倍位の1.0程度のオーダーと思われる。
(実際にはCD値は便宜上、空気抵抗値を前面投影面積を割って求める値なので、投影面積次第で見た目のCD値は変化する)
・チューニングしてマシンのトップスピードを高めれば高めるほど空気抵抗の影響は二乗で効いて大きくなるため、空気抵抗低減もチューニングの大きな要素になると考えられる。

※今回は空力の中でも空気抵抗にだけ焦点を当てていて、モータースポーツでよく耳にするダウンフォースなどの垂直方向に働く力は考慮していないことはご注意ください。

次回は、この理論の確からしさを確認するための空気抵抗に関する実験編の記事を書こうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。


いいなと思ったら応援しよう!