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ミニ四駆を科学する#04 モーター特性を把握する

※モーター回転数計算ミスを修正、タイヤ直径修正&ギア変更実験追加(2023 1/17)

前回、ある程度軽量化してもオーバルコースではタイムが改善されない不思議な事象が発生しました。

120g⇒107g⇒100gと軽くしても107gのオーバルでは2.6秒 (平均9.7km/h)以上速くならない?

疑わしい事象は以下の2つ。

・モーターが最高回転数に当たっている
・走行抵抗(速度依存なので主に空気抵抗?)が実は異常に大きい

そこで今回はまずモーター回転数から確認していきます。

◇オーバル走行時のモーター回転数
まず手始めにオーバルで限界を迎えた平均速度9.7km/hでのモーター回転数を計算で求めます。

タイヤ直径は24⇒25mmギア比はレッドxうす茶の 4.2 : 1

タイヤ回転数[rpm]=走行速度[m/s]  x 60 / (π x タイヤ直径[m])
     =走行速度[km/h]x (3600/1000)  x 60 / (π x タイヤ直径[mm]/1000)
      = (9.7 / 3.6) x 60 / (π x 25 /1000) ≒ 2058[rpm]

モータ回転数[rpm]=タイヤ回転数[rpm] x ギア比[-]
         = 2058x 4.2 = 8643.6・・・≒ 8650 [rpm]

平均速度からモーター回転数はおおよそ9000rpm手前を使っていると考えられます。
オーバルコースとはいえ、ストレートエンドではもっとスピードが乗り、より速い回転数となっている(トップエンドで9000rpm程度)と想定されますが、ひとまず平均回転数を使って話を進めます。

ちなみに計測誤差を考慮し0.1秒オーダーで値を丸めると、概ね各区間タイム(平均速度)は平均速度とさほど変わらない事は確認済みです。
(本当は区間タイムの計測には1/100秒の精度が必要ですね・・・)

重量120gのノーマルアバンテの区間タイム計測結果。電池は少しヘタっているので少し遅い。

◇ノーマルモーター性能を読み解く
次にモーターの最高回転数について確認していきます。
ミニ四駆キットに標準で付いてくるノーマルモーターは、おそらくマブチモーター製のFA-130だと思われるので、マブチモーターさんのHPよりスペック(性能表)を調べさせて頂きました。

3V の電圧をかけた際のデータがHPから得られます。マブチモータ製品検索ページより

このデータをもとに直流モーターの性能線図(供給電圧3V)を描きます。
グラフの書き方・読み方は割愛します。
(電気は専門外なので私には説明は難しい・・・)

データ上は無負荷運転で12300rpm, 最高効率点で9710rpmで回るモーターなので、最高回転数的にはオーバル走行時の9000rpmに対しまだ余裕がありそうに見えます。(青い線をご参照ください)

アルカリ電池(1.5V x2)を使った際のノーマルモーター性能

しかし、私の走行実験では電池にネオチャンプを使っているので、フル充電でも1.2V x2本で最大2.4Vしか共有されないため、ネオチャンプ版(2.4V版)のグラフに修正する必要があります。
回転数や電流値は供給電圧に比例し、3V⇒2.4Vで80%まで低下するので、その情報を反映したグラフが下記グラフです。

ネオチャンプ(1.2V x2)を使った際のノーマルモーター性能

回転数、出力共に供給電圧の影響で低下することが読み取れます。
ここで注目したいのが回転数です。無負荷ではまだ10000rpm近くまで回りそうですが、最高効率点は7600rpm程度まで回転が下がるので、オーバル走行時の9000rpmはかなり限界に近い回転数で回っていると考えられます。

つまりモータ回転数が要因のひとつだと言えそうです。エンジンでいうところの『パワーバンドを外している』といったところでしょうか?

◇モーターの運転点を変更する
私の本業がエンジン関連なこともあり、どうもモーターの性能グラフが見慣れないので、エンジン同様『横軸を回転数、縦軸にトルクと出力』をとったグラフに書き換えてみました。車好きには見慣れたグラフになりました。

比較のためにモーターとエンジン並べてみました。
左がミニ四駆ノーマルモーター、右が高性能自動車用NAエンジンの例です。

直流モータは、エンジンとトルク特性が全く違う

一般的にNAエンジンはトルクが回転に対しフラットな特性なため、回せば回すほどパワーが出る特徴があります。(オレンジ線が右肩上がり)

一方、モーターを見てみると出力(オレンジの線)は『お山の形』をしており、5000rpmを境に回転を上げると出力は落ち込んでいく特徴がある事が分かります(しかも急激に)。つまり、9000rpmまで回すとピーク出力の1/3しか使えていないと言う事になります。

更にに回転を上げて速度を上げようとしても、モーター出力がどんどん下がる領域なのでミニ四駆の走行抵抗に負けて、最高速度が伸び悩んでいると考えるのが自然です。
やはりパワーバンドをかなり外していることが原因のように見えます!

では、どうすれば使用回転数(モーター運転点)を変えられるか?
答えは簡単です。『ギア比を変える』もしくは『大きい径のタイヤ』を使いハイレシオ化すればよいのです。

◇ギアレシオ変更による実走検証
ノーマルのアバンテには4.2のギア比を組んでいたので、ARシャーシで使える最もハイギアードな3.5(水色&黄色ギア)に変更して効果を検証します。

3.5ギア比での速度9.7km/hはモーター回転約7200rpmであり、約1500rpm回転数を下げることができ、0.25⇒0.55wに出力を改善できる見込みです。

オーバルコース走行結果と計算から得られるモーター回転数は以下の通り。想定通りタイムが0.2秒改善しました!平均速度は10.5km/hに到達。

※2023 1/17にモーター回転数計算ミスを修正、タイヤ直径をより正確に25mmに変更、更にギア比5.0:1の実走結果も追加しました。
一時、間違った見解を載せてしまい申し訳ありません。

ハイレシオのギアを選択したのに、結果として平均回転数も高い結果となった。
より低い回転で走れるローギアレシオ化が有効である事が確認された。

最適なギアを選択するとモーターをうまく使うことができ、面白い事に結果としての平均速度は逆に高まりモーター限界回転数に近い速度で走れることが分かりました。5:1のギア比ではオーバルコースにおいてモーターの限界回転数使い切りとなっていることが確認できました。

このことから、前回ボディや床下カバーを外してまで軽量化しても速くならなかったのは、軽量化効果より最高速付近のパワー不足が支配的だったためと言えます。
逆に言うと、高回転域の出力が弱い直流モーターでは高速域での空気抵抗の影響も小さくない可能性があるとも考えられます。

◇まとめ
・オーバルでの速度の伸び悩みの原因は不適切なギア比による高回転域でのモーターのパワー不足。
・対応策はモーター特性を把握し、適切なギア比を選択する。
・より詳しい考察とセッティングには、走行抵抗(特に最高速付近の空気抵抗)の情報も必要と感じる。

次回はより詳しい考察のため、走行抵抗について詳しく調べていきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また電気やモータは素人ですので、間違いやお気づきの点がございましたら、ご指摘をお願い致します。


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