見出し画像

花束と真夏のチョコチップクッキー

最高気温が36度の日。
知人に教えてもらった花屋で友人に花を買った。

花束の出来上がりを待ちながら店内をウロウロすると小さな花束が500円で売っていた。これくらいの気軽さなら自分用にいいかもしれないと思ったけど、家に帰るまで5,6時間かかりそうなのでやめる。
花束を受け取り目的地へ向かう。

電車で片道約1時間のショートトリップ。
傍に置いた袋の中をちらっと覗くと、ピンクや黄色の花たちが「どこにいくのかしら〜」とウキウキしてるようでかわいい。
これを人に届けると思うと私もウキウキする。

花を贈ることや自分に買うことに苦手意識がある。今年は個展のお祝いだったり、個人的にもらったり、花と触れることが多いからか、ちょっとハードルが下がったみたい。

友人の個展会場へ着く。
デザイナー、そして絵本作家でもある彼女は新潟のブナの間伐材を使ってかわいい組み木を作っている。
絵本と合わせてアニメーションもあって、子どもたちが歌いながら組み木で遊べるようになっている。



今回は彼女が作った2作目の絵本の原画展。
主役はポピー、マーガレット、ラベンダーなどなど、花の名前が付いている子猫のきょうだい。
手書きの原画をまじまじ見る。
うっすら残る下描きの線や筆の道筋が分かって、言葉にはしなかったけど「この人の手が描いたんだなぁ」とじんわりしてしまった。
ちゃんと言葉にして彼女に伝えればよかった。



楽しさを胸に持ち続け、クリエイションする彼女の姿にはいつも驚かされる。

以前「楽しいことってすぐ忘れるんだよね」
と話した時「人は忘れるものなんだから、その楽しい気持ちは大事にして何度も思い出すものだよ」と言われてハッとしたことがある。(若干言葉は違うかもしれない)

私は大事にしてなかった。
持たずに置き忘れていた。


電車の本数が少ないことと、ちょっとした用事があったので滞在時間は40分。ゆっくり話はできなかったけど彼女に会えて良かった。

併設のカフェでコーヒーとチョコチップクッキーを買って会場を後にする。

帰りの片道1時間。
途中、電車の乗り継ぎで暑いホームに10分。
ベンチに座り、手すりにコーヒーを置いて紙袋からクッキーを取り出す。

口に入れると暑さでチョコチップが柔らかくなっていた。こんな状況で食べることなんて滅多にないけど、これはこれで夏の思い出になる。

薄焼きクッキーのバリバリ感とやる気のないチョコの組み合わせ。

冷めかけたコーヒーもクッキーも同じくらいの温度だった。

ウキウキしてるような花束と真夏のチョコチップクッキーを記憶に埋め込めば、どこかに置き忘れず今日を思い出せそう。

乗り換えの電車に乗る。
私の住む街まで、あと50分。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?