借金・多重債務からの生還 その8
過払い請求
サラ金等の高利なところで返済が完済あるいは、ほぼ完済している場合、 法定金利で見直すとその差額分が返してもらえる。
もう皆が知ってずいぶん経つが、皆がその方法に気付き、サラ金業者に大打撃を与えたのが「過払い請求」である。
お金に困っていて、サラ金から多額の借金を返済してきた人々にとって 降って湧いたようなボーナスだった。
まだ過払い請求をしていない方もいるのではないだろうか。
ソフトも出回っているようで、弁護士に頼まず 自分で過払い請求をしてみようかと考えている方もいるようだ。
確かに弁護士事務所に払わなければならない、「着手金・成功報酬」をかんがえると 他のことならまだしも、これならチャレンジしてみようという方がいるのもうなずける。
ただ、やはり慣れていて法律家としての権限も持っている弁護士・弁護士事務所と違い 業者との交渉・やり取り及び手続き等、素人にはなかなか大変である。
だが、やってやれないことはないと思う。
法定金利に換算する時は、何度も見直し間違いのないようにしたい。
日付を間違えても当然金額・数字が変わってくるし、返済金額の記入も だいたい同じような数字ばかり並ぶので、意外と数字を打ち込むのを間違えやすい。
利息制限ソフトなどは、事務を仕事としている人は上手くやれるだろうが 畑違いの仕事をしている人はけっこう間違いやすいので注意が必要だ。
それと、「みなし弁済」(注)のことを気にする方もいるだろうが、 最近では、消費者側に有利になっているので、サラ金側が この「みなし弁済」の難クセをつけてくる事は最近はあまり聞かない。
まあ、これを言ってきたとしても「まったく知らなかった」と 突っぱねれば問題はない。
業者側が請求に応じない場合は、簡易裁判所に「不当利益返還請求」の訴訟をすることになる。
何か素人ではとてもできないのではないかと思うかもしれないが、 やれないことはない。書類もそれほど多くはない。 判らないことは裁判所に出向いて聞けばよいのだ。
素人だからと相手にしてくれないということはないので、その点は心配は要らない。 運が良ければ担当者によってはすごく丁寧に教えてくれる人もいる。
訴訟を起こし、しばらくしたら業者側が減額の和解交渉の連絡をしてくると思う。
まあ、最初はふざけた金額での和解を求めてくるだろう。 だが、もちろんこれに従ってはいけない。
ここで有利なのはこちら側だ。少しだけ返事を引き延ばし上手に交渉していただきたい。 最初の和解案に関しては即座にそれは無理だと断っておこう。
ただ、全額もらわないと納得しないだとか、 かなり厳しい条件は避けたほうが賢明のように思う。
相手側の担当者にも多少の逃げ道をつくってあげるのが、スムーズに事をすすめるヒケツだと思う。
必要以上に相手を追い込むようなことは、どんな物事に関してもしてはならないことだ。
ちなみに、和解した場合は訴訟を取り下げることになるが、 証紙代の一部は確か返還してもらえると思うので、裁判所の担当者に聞いてみて欲しい。
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(注)「みなし弁済」
簡単に言えば、「あなたは、その金利を承知の上で借りたのだろう」ということ。 だからその金利に対し、「後から文句を言うのは筋違いだ」という考え方だ。
通称、出資法といわれる金利の規制内での貸付からの至極もっともな言い分であり、法であるのだが、現在では利息制限法のほうが優先されるようで 完全なダブルスタンダードである。グレーゾーンがあやふや過ぎる。
まあ、これは段階的に変えてきているようだし消費者のほうに有利だから善しと、あまりこの問題に関しては騒がれないようである。
※過払い金の返還請求は権利濫用にあたるか
利息制限法はすべての金銭消費貸借上の利息の契約について、私法上有効な利率の範囲を限定する「強行法規」であって、返還請求できることは判例上認められている。
したがって、権利濫用にあたらないし、貸金業者側が「みなし弁済」を主張することは、まず認められないだろう。
つまり、事実上現在はグレーゾーンが廃止されている状態と言っていいだろう。しかし、今まではそれを容認していたわけであるし、出資法の定めにより以前は40.004%などの高利でも、どうどうと貸付をしていた(出資法制定時は109.5%!)
「みなし弁済」は至極もっともな主張であり、私の個人的な意見では、貸金業者側の主張のほうも正義と考える。
利率に関しては消費者もすぐに把握がしやすいし、ローンや保険などの契約用紙の裏に書かれている細かな内容などの消費者が把握しにくい事柄に比べても、サラ金等の「利率に関してだけは」借り手側も十分理解していたはずだ。
また、消費者から見れば、とんでもない高利の利率、出資法と利息制限法からくるグレーゾーン及び、出資法の定めから貸金業者の消費者への高利の貸付を平然と放置していたのは司法あるいは国であり、本来その責任はそれらが被るべきもののはず。
社会問題になったから重い腰を上げただけであり、税金の延滞税等の驚くべき高利などをみても、国の在り方・やり方は高利の貸金業者と何ら変わらない。責任を取らないだけよけいたちが悪い。(まあ、貸金業者の場合は、無理矢理ツケを払わされた訳であるが)
消費者のためには動かざるを得ないが、本来、国が高利貸しに対して、過払いの分の支払いをさせるなどの責任を取らせる資格はない。盗っ人が罪人に講釈をたれているのと何ら変わりはない。
過払い請求も厳しくなってきた?
過払い請求の現在事情は?
弁護士事務所の間でも一時期「過払いバブル」が起きていたそうである。
昔はほとんどの弁護士が、そのプライドからこのような「安い汚れ仕事」 は眼中にしていなかった。
だが、時代が変わり多重債務が社会問題となり、さらに弁護士も増えすぎてしまった事もあり 変なプライドさえ捨てれば、過払い請求は結構おいしい商売だと気付いたようである。
これは弁護士事務所にとって、単にいい小遣い稼ぎになるというだけではない。
サラ金業者に記録を提出させ、利息制限法に基づいて計算の引き直しをして、 差額の過払い分を請求をする。 その後、金額の折り合いを(和解交渉)サラ金の担当者と話し合う。・・・だけ。
弁護士事務所にとって他の事件より仕事量が少なく 仕事自体も高度な事件ではなく単純で、内容的には簡単だという意味でもおいしいのである。
我々とは稼ぎの違う弁護士事務所がどう思っているのかはともかく、 他の商売の人間からみたら、濡れ手に粟の仕事だ。
消費者皆が過払い請求に気付いたおかげもあり、いっきに「過払いバブル」と なって一儲けしたようである。
だが、もうこのバブルも一通りこなしてしまい終焉したようだ。
この「過払いバブル」は、当然だがサラ金業者にとっては悪夢の出来事だった。
サラ金業者からすれば、せっかく今まで厳しい取立てをして 苦労して築いてきた儲けを吐き出さされたのだから堪ったものではない。
会社によっては青色吐息。潰れてしまったところももちろんある。
借りていたところが潰れていたら請求は無理だろうし、現存している会社も 余力はそれほど余ってはいない。
今後は交渉も厳しくなることは覚悟していたほうがいいのかもしれない。