アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】振り返り

 アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】――以下アニメ版アクナイ――について、オタクが熱くなって書くので、興味ない人はマジで一ミリも参考にならないと思う。
 とは言え、ソシャゲってジャンル自体、そのゲームで狂っている人間を見るのが一つのコンテンツになっているきらいがあるので、そういう意味では、楽しく読んでくれる人もいるだろう。

 アークナイツ、アニメとして大成功かと言えばそんなことはないだろう。
 既存ドクター(アークナイツプレイヤー)諸氏にとっては、最初から丁寧な説明のある巧みな第一話と言う評価だが、初見勢から見たら難解な説明と複雑な世界観だろうと思う。
 実際、一話で切った人は多いのではないか?

 ニコニコ動画放送時のアンケートで、最高評価を付けたのは63.9%、今期では18位だ。因みに一位は水星の魔女で91.9%をマークしている。
 AmazonPrimeVideoの現時点での評価は、星5が57%なのでニコニコ動画のアンケートと"近い"。勿論、アマプラの場合は全八話まで終了した時点なので、それがニコニコより7ポイント近く低いとみると、結構散々な出来と言えるかも知れない。

 はっきり言って、取っつきにくいアニメであった事は否めない。内容は暗いし、最終的に救いはなかったからだ。
 だから、ハッピーエンドを望むタイプの人――多分、普通の人はそうだろう――が低評価を付けるのは止むなしである。

 いや、だが、ドクター諸氏は考えて欲しい。
 今まで遊んでいたアークナイツ世界が、アニメになったら"一般ウケ"するようなハッピーでピースフルな世界になったらどう思うだろう?
 仮にそれが商業的に成功したとしても、そんなものはアークナイツではない。
 アークナイツは、ゲームからして一般ウケする作品ではない。
 だが、それだからこそ、そういう世界観に共感する人々を引きつけるのだ。
 だから、一般ウケしなかったのは、ゲーム世界のアニメ化という意味では完全な成功だと言える。

 世の中の愚鈍な人は、物語に教訓やら救いやら笑いやらを望み、あろうことか正しさなんかを望んだりする。
 だが、少なくともアークナイツの世界であるテラを見て知り、そしてそこに"何か"を感じたドクター諸氏は、そんな甘ったるい作品なんか一つも望んでいないのだ。
 そして、本作はその(簡単な)救いも(安直な)笑いも、あまつさえ教訓もない世界を十分に描き出している。

 目を見張る画質、主役からモブキャラに至るまで熱の籠もった演技の声優陣、挿入される素晴らしい楽曲や効果音。
 全て極上と言える。
 一話、二話の医療オペレーターの悲鳴がガチ過ぎて引いたって声もある――余り言うべきではないが、それは確実に一部層に刺さっている。

 ヒロインであるアーミヤ、普通ならもっと可愛く、愛らしく描くだろう。
 だが、OPに於けるあの目つき、最終話に至るまで盛り込まれる曇らせ。
 普通にゲームに導入するなら、もっと"いいキャラ"にすべきだろうが、そんなことはない。

 ソシャゲアニメにありがちな最終話の"総力戦"や、無意味に挿入される人気キャラなどと言う、セールス狙いのクソ演出なんて一つもなかった。(アニメに出てきた星6キャラはエクシア、ホシグマ、チェン、戦闘に関わってないケルシー、まだ味方陣営ではないWぐらいか――ゲーム恒常ステージでも出てきたキャラである)
 なんなら、アニメスタートに合わせた、新規ドクター向けの星6キャラ配布やピックアップガチャみたいなことすらなかった。

 大体、アニメ開始から最終話に至るまで、この三ヶ月間のイベントは凶悪と難関を極めるものばかりだ。
 既存ドクターなら承知とは思うが、アニメ放送後に開始された狂人号のイベントは、アニメと同時に始めたドクターにはなかなか厳しかったと思う。(星6ルーメンのゲットを諦めた人も多いだろう)
 その次の潮汐の下は、ミニイベントだし狂人号ほどではないにしても、開始一ヶ月程度のドクターにはメインシナリオクリアもしんどかったに違いない。
 そして現在も行われる危機契約#9は、ドクターの定期試験と呼ばれるイベントで、一言で言えばエンドコンテンツである。

 アークナイツの運営はサディストなのか? と言われたら、そうだとも言えるし、そうじゃないとも言える。
 お手盛りのイベントで参入したとしても、"合わない"ゲーマーなら多分一ヶ月二ヶ月で放り出してしまうだろう。(幾人か"新米ドクター"配信を追ってみたけど、放り出した人もいる)
 そんなものを運営は望んでいないと思われる。

 そもそも、アークナイツというコンテンツは、殆どの場合こんな調子だ。
 スピンオフコミックであるロドスキッチンは、グルメ漫画の体をしているが、一話の開始二ページ目で、一話の主人公が病気に苦しんで手首を切り落とそうとするシーンがある。
 あくまでもグルメ漫画の筈だ。(※一応二話以降はそこまで酷くない)

 ゲームでも新キャラ実装の時、ストーリーでの扱いは割と酷い――曇らせが多くて、喜んでガチャを引きたくなるような演出をしない。(濁心スカジなんて人類廃滅ルートの後の姿だ)

 それもこれも、全てアークナイツ世界を大切にしている証左だろう。
 アークナイツ世界のキモは何だろう?
 救いのない世界の中で必死に藻掻いて、そして前を向いて生きていく姿を描くところにある。
 世界の危機が迫っている中、国は腐敗し、自分の利益しか考えていない人間ばかりだ。でも、その中にわずかに残る良心と正義がぶつかり合い、それ故に地獄を作る。
 "地獄への道は善意で舗装されている"を地で行く作品である。
 そんな中でも、各キャラクターは明るく振る舞うし、そのバックストーリーは濃厚だから"そういうキャラ"では終わらせない凄みがある。
 そこにアークナイツの良さがある。
 殆どのキャラが、光の差す方を目指しているのだ。

 アークナイツを好きになるのは、闇のオタクだと揶揄されるが、陰影を好むという意味では、それは間違いないだろう。
 闇を濃くして光をよりよく見せる作品なのだ。

 アクナイ未プレイ、或いは、アクナイを始めたばかりのドクターがここまで読んでいるとするなら僥倖である。
 アークナイツは、楽曲が良い。なんならゲームに採用されない神曲もゴロゴロしている。

 アニメでその"深さ"に感づいたのであれば、是非とも考察動画、考察サイトを見るといい。(ネタバレが気にならなければだが)
 兎に角、無駄打ちのイベントがない。イベント毎に明かされる事実が多いし、本編に関わる情報開示もある。
 少しやれば分かるが、全てのキャラにバックストーリーが用意されている。しかも、一人がどうこうしたと言う簡単な者ではなく、他のキャラクターとの濃厚な関係がある。

 はっきり言って、ゲームシステムは複雑で取っつきにくい。だから、今すぐプレイしてくれとは言えない。
 だが、その深さを知るのにプレイは必要ない。
 色々な事情を知って、その世界観を楽しめると分かってからプレイしても遅くない。

 アークナイツは、ゲームをプレイするなら結構だが、エアプ勢でも楽しめるコンテンツ力がある。
 だから、誰か推しキャラが見つかるまで無課金で遊ぶのもアリだ。無課金でも十分に遊べるし、それなりにガチャもできる。ガチャ圧力も高くない。
 ピックアップや新規実装のタイミングは大陸版によってある程度予想されるため、その時まで静かにガチャ玉やガチャ券を貯めて、推しキャラピックアップで全力を出すのは、無課金勢、微課金勢でもそんなに苦痛ではない。

 もう一度言うが、ゲームシステムは万人向けじゃない。タワーディフェンスってジャンル自体が広くウケるジャンルじゃない。
 ただ、誰かしら刺さるキャラがいるだろう。ロリもお姉さんもオバサンもイケメンもイケオジもショタも男の娘もガチケモもいる。
 声優に対する熱量は高くて、星1キャラでもきちんと一通りのボイス(待機中の雑談とか)が用意されている。

 魅力あるキャラなんて他のゲームもそうだろうと言うのはそうなので、これだけが特別とは思わない。だけど、きちんとストーリーを読んで欲しい。ある程度育てれば見えるストーリーが結構なボリュームで存在している。

 音楽でもキャラでも、ストーリーでもなんでもいい。
 刺さったら刺さった分野だけ追うでもいい。
 課金しなくても、同じ世界で狂える仲間がいればウェルカムだ。
 アークナイツとはそういう世界である。

(でもまぁ、二期応援のために円盤買ったが)

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