2024年、Wizard時代におけるDeepsolver

Deepsolverからオファーを受け、本記事を執筆する運びとなりました。


Deepsolverというサービスをご存じでしょうか?2年ほど前に登場した機械学習系のオンラインsolverで、ユーザー側は高スペックのコンピュータやサーバーなしに通常のsolverより高速で計算できることで一時期少し脚光を浴びましたが、今はかなり下火です。

現在、GTO系サービスはGTO Wizardの一強といって差し支えない状況です。そこで、既にWizardを契約している人も念頭に置きつつ、Wizardと比較しながら、Deepsolverの活用法や併用法を模索していきたいと思います。


全体的な所感

結論から言うと、Deepsolverの強みは、自分で指定した条件の集合分析の作成計算結果の外部への出力です。あとは、Wizardより安いことでしょうか。一般的に、ツールは主要な機能に目が行きがちですが、私の了見では外部出力が最大の魅力だと思います。

・なんとなくAI solverが気になっている人
・集合分析がしたいが、そのための計算リソースがない人
・solverをまだ持っていないが、PC等の初期投資に踏み切れていない人
などは検討の価値があるかと思います。

特に注意すべき欠点は、現状レーキの設定ができない点です。

計算全般

計算の設定

スタックはSPR ≤ 50まで計算可能。※1
レーキの設定は不可能。※2
マルチウェイの計算は不可能。
preflopの計算は不可能。※3
ICMでの計算は不可能。

※1 Wizard AIだとSPR ≤ 125まで。大抵はSPR ≤ 50で足りると思います。
※2 Wizard AIでpostflopはrake %とrake capを設定可能。preflopは加えてNo Flop, No Drop、GG Network、Fullの3通りのrake設定あり。
※3 Wizard AIでHUのみ可能。ただし、私見ですが現状挙動が微妙な感じがします。
※が付いていないものはWizard AIも同じです。
この辺はWizard AIに後れを取っています。

ツリーが大きすぎると計算できません。
目安として、
Wizard AI Dynamicサイズ指定なしの最大設定 < Deepsolverの限度 < Wizard AIの限度
です。

Wizard AIのセールスポイントのひとつであるベットサイズの自動選択ですが、Deepsolverにはありません。しかし、私個人としてはそこまで高く評価している機能ではないので気にならなかったです。

pre-solved solution libraryはありません。そういうサービスではないため。

レンジ

申し訳程度のPF rangeは備わっていますが、外部から持ってくることを推奨します。WizardはStarterプラン以上でレンジのコピー機能が使えるので、契約してる人はそれを使用するのがおすすめです。Wizard AIを使うのと比べるとコピペのひと手間は増えます。

node locking

node lockを行うことが可能です。

また、特定のハンドだけのnode lockが可能です。(何を言ってるかわからない人向け:GTO+などの一部のsolverはどういうわけかnode lockするときにあるノード(グラフ理論でのノードではなく、ポーカーの文脈で普段使われる意味のノード)の全ハンドの戦略を固定させなくてはいけません。)

25%刻みのアクションの設定は問題なく行えるのですが、1%刻みの設定は謎UIのせいでかなり面倒です。

相手のプレイヤーの傾向をGTO、Nit、Bully、Stationから選ぶことで、ワンクリックで戦略の設定ができる機能があるのですが、販促初級者用だと思います。

Wizard AI同様、後続のストリートのnode lockを反映させた計算(例えば、Turnのnode lockを反映させたFlopの計算)は行えません。現状これが行えるのは従来のsolverのみです。

計算結果

参考までに、従来のsolver、Wizard AI、Deepsolverの計算結果を1スポット載せます。HU no rake 50bb SRP Qs8h4dで、できるだけ計算条件は同じようにしています。

従来のsolver
Wizard AI
Deepsolver

ぱっと見だと従来のsolverに近い戦略ですね。フロップが開いた時点での両者のEVはどの例もほぼ同じ値になりました。(DeepsolverではBBが数%の頻度でdonkを行うので、checkされた上の画像ではSBのEVが僅かに高くなっています。)

この例だけで色々判断するのは早計過ぎるのですが、他にもいくらか試した私感として、各ハンドのベットサイズの選好性が弱く、大体どのハンドも全てのサイズを使っているような結果が出る傾向がある気がします。

また、practice modeがあり、計算したものについて練習することができます。

結果の外部への出力

あるノードでの計算結果を.csvで出力できます。集合分析の出力も可能です。

.cfrや.gtoでの出力はできません。そういうアルゴリズムではないため。

経営方針などとも関わるのかもしれませんが、GTO Wizardは計算結果やsolutionの外部への持ち出しが難しく、レンジのコピーぐらいしかできません。そのため、ここはユーザー側にとってDeepsolverの大きなアドバンテージとなります。

UI

使用にあたって私が困ったことはありません。ただ、流石にWizardには劣りますね。これに関してはWizardが他のサービスと比べてUIが頭一つ抜けて優れているとしか言いようがありません。

以前日本にアフィリエイターがいたようで、その方が日本語で使い方を説明したものが検索すれば出てくると思います。

集合分析

指定した条件での集合分析を行える強力な機能です。ただし、一度に計算できるのは400フロップまでです。

GTO WizardもWizard AIの開発目標として集合分析を掲げていますが、今のところまだ実装されていません。また、外部への出力の点でも差別化できるでしょう。

集合分析機能

サイト上でも各アクションの頻度やEV、EQ、EQR等でのソート機能が使えます。

UIはやはりWizardが上回ります。

Wizardを契約している人はlibraryにない設定の集合分析をするのに活用するのもいいと思います。

なぜ集合分析の外部出力が必要なのか

少し上級者向けになります。

例えばGTO Wizardで提供されている集合分析では、各アクション頻度やEVやEQなどの決められた方法でのソートや、pairingやsuitednessやconectednessなどの特定のフィルター機能しか使えません。

しかしながら、提供されている以外の特徴量で捉えてみたほうがmechanicsがよく見えることがあります。そのほか、フロップのクラスタリングなど他のツールで分析することを要することがあります。

中級者までは提供されている機能だけでも学べることが大いにあると思いますが、自分で研究を進めたい人は外部出力が必須です。

値段

従来のsolverと違い、初期費用はほとんどいりません。また、Deepsolverは何度か値下げを行い、登場時からは相当安くなりました。

Deepsolverは執筆時現在でEssentialで$49/month、Proで$69/monthです。Proだと計算やサポートが優先されるようですが、機能に違いは無いようです。契約時にpromotion codeを利用すると30%引きになって、Essentialで$34/month、Proで$48/monthとなります。promotion codeは"FAKEGO"(私のコード)と"SPRING30"(期間限定)があります。どちらを使ってもユーザー側に違いはありませんが、前者だと私にコーヒー一杯程度の報酬が入るので、応援して頂ける方はそちらを使ってもらえると嬉しいです。

WizardのEliteプランと比較してみたいと思います。Premiumが$69/monthで、Eliteが$129/monthなので、+$60/monthでWizard AIと50000hands/monthのアップロードしたハンドの分析機能の分をアップグレードできることになります。誰かのアフィリエイトを経由すると10%割引が得られるのを考慮すると$54/monthです。

AI solverを使うだけなら、機能差に問題がなければDeepsolverのほうがかなり安上がりになります。

終わりに

現代のポーカーにおいてsolution libraryを使えないのは、上達を目指す人にとってはかなりのdisadvantageになる可能性が高いです。ゆえに、ほとんどの場合でGTO WizardのPremiunの優先度が最も高くなるとは思います。そのうえで、optionとして従来のsolver、Wizard AI、Deepsolverなどから自分がしたいこと(&お財布)に適したツールを選択できればよいと思います。


ここまで読んで頂いてありがとうございました。

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