あるFTMがくれたもの
僕には忘れられない出会いがある。
かつて違和感を押し殺して
女性として振舞っていた時のことだ。
治療を受けられなかった僕は当時、女性として生きていくしかないと諦めていた。
だからネットで出会ったそのFTMと結婚して彼を夫にしてあげることで自分の夢を叶えた気になりたかったのかもしれない。
しかし実際には、
彼になりたいくらい、ただただ眩しかった。
ホルモン注射を受けているという彼は男性そのものだったし、仕草のひとつひとつがとてもかっこよかった。彼は明るく、強く、眩しかった。
月日が過ぎ、とうとう違和感に耐えられなくなった時、治療を受けFTMとして生き直す決意ができたのは、まぎれもなく彼の存在があったからだ。
彼が子供を欲しがっていたのでその時は離れてしまったが、今とても感謝している。いつか生き直しに成功した時、もしまた機会があれば感謝の気持ちを伝えたいと思う。
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