見出し画像

One hundRED【ナウ×SP by乙川アヤト】

その扉が開いたのは、百年ぶりのことだった。


 音もなく、開く扉の向こうに、理路整然と並べられた100体のフランス人形たち。
その足元はすべて『赤い靴』で統一されていた。
百年の時を経て、今日、ここに開かれた扉の前で、呆然と立ち尽くす一人の少年がいた。その手には2つの古びた鍵が握られている。

そこへ、謎の男、岸部露満がやって来て、そっと一言。
『君が迷い混んだこの世界には、ひとつだけ足りないものがある。それが揃えば、この世界の物語は見事に完成する。さぁ、中へ…』

露満は少年とともに中に入り、部屋の奥、右角に置かれた金庫へと歩みを進める。
少年は先程開いた扉の鍵とは違う、もう一方の、一回り小さな鍵を握り締め、その鍵をそっと鍵穴に差し入れ、ぐるりと回転させた。
ぎーっと音を立てて開く扉の向こうに、一足の赤い靴が鎮座する。

『さあ、これを履いてそこに座るがいい』
露満は優しく彼を誘導し、100体のフランス人形が並べられた、センターの椅子に赤い靴を履いた少年を座らせた。

その瞬間、突然、壁にかけられた長い古びた柱時計がチクタクチクタクと動き始め、フランス人形たちの眼に、命の叫びが灯る。

「さぁ、皆のもの。風の時代の幕開けだ。その真の光で、レッドカーペットを練り歩くぞッ!」

101体の赤い靴のパリピたちが一斉に街へ放たれた。


supported by乙川アヤ一

101体の赤い靴のパリピたちが一斉に街へ放たれた。

どこからか、燃え上がる火柱を彷彿とさせる高揚感ある音楽が灯され、その周りを200の赤がとりかこむ。ピアノの美しい旋律にあわせて、100のかかとがカツンと鳴ると、100のつま先がサッと地面を滑る。

『こいつは素晴らしいぞッ!』

岸部露満はオペラグラスの中の目を見開いた。埃まみれの街路をゆくドレス姿の隊列。その様は灰色の花壇に突然、花畑が現れたようにも見える。
その中央に、少年。彼は椅子ごと何体かのフランス人形に神輿のように担ぎ上げられている。ピアノが低く唸る。体が震える。高く歌う。膝が伸びる。
気付けば彼は踊りだしていた。振り付けもなく、テンポもなく。ただ吹く風に身を揺らす、名もない花のように。汗ばみ、大きな口を開けて。

音楽が完全に止んだとき、見覚えのある扉の前にいた。
『君のおかげだよ』
振り向くと、露満。
『百年ぶりに、足りないものがみつかった』
音もなく閉まる扉の向こうで、露満の高笑いだけが響いていた。
『ガンガン創作意欲が湧いてくる!』

そして、暗闇。


Fin

#賑やかし帯  いつきさんありがとう


この物語の始まりの種はこちら☟

乙川アヤいち様の企画で、私がエピローグを書かせて頂いたリレー小説。

今回コラボさせていただいた、乙川アヤト創造主に心より感謝申し上げます。乙川小説の創造の想像が生んだ大作でした。

心を込めて✨

#ワクワクがあふれだす
ᵃʳⁱᵍᵃᵗᵒ~(˘͈ᵕ ˘͈♡)ஐ:*ナウシカ💚




いいなと思ったら応援しよう!