【健康経営】エンゲージメントっていつから大事になったの?
皆様は最近エンゲージメントという言葉を最近良く耳にしませんか?
エンゲージメントが高い従業員は高パフォーマンスを発揮されると研究されており、近年非常に重要視されています。一方でエンゲージメントという言葉を10年前に知っていたという方は少ないのではないでしょうか。10年前と言えばモチベーションや従業員満足度など別のキーワードの方が注目を集めていました。ここでいうエンゲージメントやモチベーションのような従業員の状態を表す指標は時代と共に変遷しているのです。今回はこの従業員の状態を表す指標の大まかな変遷をお伝えし、それぞれの時代に従業員に何が求められてきたかについてお伝えいたします。
※今回は皆様に耳なじみのある指標のみ紹介します。他の指標やより掘り下げた研究もございますが今回はさわりとし、詳細は別の機会にしたいと考えています。
キーワードの変遷
こちらは感覚論ですが日本ではおよそ以下のような時系列で従業員の状態を表す指標が変遷してきました。(見栄えのため切りのいい数字にしていますが実際の年は前後します。)しかし、これら指標の研究はこの年表よりもずっと前からされています。また、今回は一部しかご紹介することはできませんが指標やそれに関する研究は豊富に存在していますので別の機会に個別に紹介する予定です。
職務満足に関する研究
最も古い概念とされているのは「職務満足」と「モラール」です。
これらはまだブルーカラーの工場労働者が多かった時代や第一次世界大戦の兵役があった時代に提唱され始めた概念です。職務満足は1935年にHoppockが初めて文献(Job Satisfaction)で用いた定義で 「職務満足を決定する要因は仕事の満足だけではなく、健康や、家族、職業の社会的地位、職内地位の高さによる心理的、物理的、環境の状況が職務満足に影響を与える」とされています。一方でモラールは集団全体の士気を表しておりSmith and Weston(1951)によると「集団あるいは組織への満足、および集団(組織)の目標のために取り組む意欲といった態度である 」とされています。集団全体の士気を表しており、第一次世界大戦時の兵士の士気についてモラールが影響があると調査されています。簡潔にまとめると職務満足が個人の内面的なモチベーション要因なのに対してモラールは集団に関係した従業員のやる気ととらえることができます。
ハーズバーグの動機づけ・衛生理論
職務満足に関する研究はいくつもありますが有名なのはハーズバーグ(Herzberg.Mausner&Snyderman 1959.Herzberg 1966)の理論です。ハーズバーグの二要因理論(動機付け・衛生理論)と聞けばピンとくる方もいらっしゃるでしょう。この理論は職務満足や不満足を規定する要因は動機づけ要因と衛生要因の2つあるとしています。動機づけ要因については、職務の満足感との関係が強く、仕事の達成感・達成の承認・仕事そのもの・責任・前進、成長の6つとされています。衛生要因は職務の不満足を規定するものですが、数多くの要因が見出されています。主要なものとして、監督の仕方、会社の政策と経営、作業条件、対人関係、賃金があげられています。このハーズバーグの二要因理論(動機付け・衛生理論)が昨今のモチベーション理論として日本では再注目されてます。近年流行している理論の原型が半世紀以上も前の研究というのは驚きですね。
エンゲイジメント研究
比較的新しい研究としてはエンゲイジメントです。
エンゲイジメントについては、1990年にカーン(米ボストン大学)が発表したことが最初とされています。その後2002年には、オランダ・ユトレヒト大学のSchaufeli 教授らによってワーク・エンゲイジメントの概念が確立されました。現在は国際的な比較も可能なユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度 (Utrecht Work Engagement Scale)が開発されており、広く活用されています。
ヨーロッパでワーク・エンゲイジメントの概念が発達し、「従業員と仕事」に関する結びつきを唱えられた一方で、米国では「従業員と企業組織」との結びつきを重要視する研究も続けられていました。1993年アメリカの心理学者フランク・L・シュミットは「従業員エンゲージメント」の概念を提唱、その後研究が進み、2011年にウォーランドとシャックによる文献レビューでは、エンゲージメントは「個人観点での従業員エンゲージメント」と「組織観点での従業員エンゲージメント」の二つに分かれるとされています。注目していただきたいのは組織観点での従業員エンゲージメントで、個人と仕事の結びつきだけでなく個人と企業組織との結びつきを重要視しています。
まとめ
皆様、従業員の状態を表す指標の変遷について理解いただけましたでしょうか。時代によって従業員に求められているものが変化していることが分かったかと思います。ただし、一つ考えて欲しいことは過去の指標がもう必要ないものであるかということです。例えばモチベーションについてですが仕事に一生懸命に取り組む動機づけは現在でも重要な要素であるはずです。エンゲージメントのように時代によって注目度が上がる指標は確かにありますが、それだけに注力すればいいのではなくそれぞれの指標が何を意味しているかを知った上で自社に最適な指標を選択することが大切です。
また、近年ですと心理的安全性・レジリエンス・ホープ・オプティミズム・セルフエフィカシーなどの指標も注目され始めています。従業員の多様性が大切にされる時代だからこそ、その従業員のコンデョションを測る指標も多様化していくのでしょう。今後各種の指標について具体的な説明も書いていきますの是非参考にしてください。