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【傍聴記】半グレだらけの傍聴席
裁判所の様子がおかしい。
エレベーター前の椅子に座ってると、やたらとガラの悪そうな男が次から次へと来る。
被告人のお友達かしら?と呑気なことを考え、その人望厚い被告人とやらを見ようと、半グレ風男性の後ろに付いて法廷の中に入った。
事件番号:令和6年(わ)第607号
罪名:覚醒剤取締法違反、大麻取締法違反、麻薬取締法違反(新)
被告人:永井貴之(仮名)
何と言うか・・・予想通りの罪名である。
次から次へとガラの悪い男が入ってきて、約40の傍聴席は殆ど埋まった。法廷内の刺青率は7割を超え、顔や首に刺青を入れてる者もいた。まだ何も始まってないがこの時点で裁判官の心象は最悪である。スマホの通知音があちこちから鳴り響き、通話する者まで現れ、書記官が注意していた。
ここにいる人の中で前科持ちはどのくらいいるのかな?など呑気なことを考えていたら、被告人入口から永井被告が入廷した。
この中の半グレ仲間が差し入れしたであろうバレンシアガのトレーナーにNIKEのスウェットパンツ姿で勾留されてる割に身なりは整っている(でも足元は被告人御用達の便所サンダル)。身長は185cm程度とかなり高く中肉中背。眼鏡をかけており、目付きは鋭い。座った足首と襟元からチラリと和彫りが見える。
裁判官「それでは開廷します。被告人は前へ。では人違いが無いかの確認をします。お名前は?」
被告人「永井貴之です」
裁判官「生年月日は」
被告人「平成3年3月19日」
裁判官「現在の住所は」
被告人「S市T区(略)」
裁判官「本籍地は」
被告人「S市H区(略)」
裁判官「現在の職業は」
被告人「会社役員」
裁判官「ここではあなたが覚醒剤取締法違反と大麻取締法違反と麻薬取締法違反が有罪か無罪かを決めます。今から検察官が起訴状の朗読をしますから、よく聞いてください」
検察官「公訴事実、被告人は令和4年4月26日 S市C区(略)の路上において、ニシモトカズナリに対して覚醒剤であるフェニルメチルアミノプロパンを含有する結晶1.693gを7万円で譲り渡した。罪名及び罰条、覚せい剤取締法違反・・・」
裁判官「検察官が読み上げたことに間違いはありませんか」
被告人「・・・2年前のことなので覚えてません」
冒頭陳述によると
被告人は既婚者で妻と子供と同居。
強盗の前科1犯あり(本名 地名でググると当時のニュースと爆サイのスレが見つかった)。当然のように最終学歴は高校中退であった。
※刑事裁判にかけられる人は知能犯や性犯罪みたいなのを除けば中卒か高校中退が非常に多く、受刑者の大卒率5%なのも頷ける。
令和4年1月頃から「兄貴分」に頼まれ、シャブなどの運び屋をするよう頼まれて、断り切れず約4ヶ月間やらされた。
顧客であるニシモトカズナリとはシグナル(テレグラムみたいな秘匿性の高いアプリ)でやり取りをし、覚醒剤2gを7万円と注射器3本2000円で譲り渡す約束をした。
写真の面割りから犯行が発覚。
防犯カメラ映像や指紋などの証拠を見せられ、自分がやったことだと思ったが、顧客を多数抱えていたので誰が誰なのか覚えていないしニシモトカズナリのことも覚えていない。
今日の審理はここで終わった。
既に8月28日付で追起訴されており、9月中旬頃に追起訴の予定、まだまだ追起訴があると検察官。
次回の予定が告げられ閉廷。次回の審理まで間がかなり空く。
後日、この件を知人の半グレと思われる人に話すと、当たり前のように知っていた。
永井被告がチンコロしたせいで兄貴分が逮捕されたらしい。傍聴席に半グレ大集結していたのは、永井くんの人望の厚さ云々ではなく、余計なことを喋らないか監視するためでもあるらしい。あと半グレは仲間が逮捕されたら同窓会みたいなのも兼ねて法廷に集結することもあるとか。
永井くんの兄貴分2名の本名を教えてもらったが、1人は大規模な大麻栽培、もう1人は金庫強盗の前科があり、全国ニュースになっている。
主犯格は再逮捕ループに陥りまた裁判始まらない模様
永井くんは麻薬特例法も付くと思うから、だいぶ長くなるよー、と言っていた。ちなみに娘が去年だか一昨年だかに生まれたばかりらしい。
「次に娘に会うときは、ランドセル背負ってる頃になるね」
強盗の前科がありながら、更生するどころか、さらなる悪の道へ進んでいる。更生することの難しさを痛感した。彼の場合、悪い人達との繋がりを断つことができなかったのも敗因だろう。
こうして人は、罪を積み重ねて行く……