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【傍聴記】高齢窃盗団、コードネームはG3S(じいさんず)

2023年7月に高齢者3人が役割分担をして空き巣を繰り返すと言う映画のような珍事件が報道された。

彼らがG3S(爺さんズ)というコードネームで呼ばれていたこと、「実行役」が88歳と極めて高齢であったこと、高齢者3人は札幌刑務所で出会い仲良くなり出所後に窃盗団を組んだこと、と分かりやすく面白い事件だったためセンセーショナルに報道され、有名インフルエンサー達も挙って取り上げたこともあり、まるで映画のような話だとバズりにバズっていた。

8月頃、既に起訴されただろうと思い札幌地方裁判所の総務課に赴き、G3Sの公判予定を問い合せた。
実行役の海野被告(88)と運転役の松田被告(71)は9月10日9時50分、盗品保管&転売の渡辺被告(69)は10月16日15時だった。

海野被告と松田被告の罪名は「邸宅侵入、常習累犯窃盗、窃盗」であった。

開廷の10分前に入ったが、注目度の高い事件ゆえそこそこ混雑していた。特にマスコミ関係者の姿が目立った。

間もなく被告人入口から車椅子に乗った海野被告と松田被告が入廷した。

海野被告は報道時の印象とかなり変わっていた。

孫くらいの年齢の警官に両脇抱えられる海野被告


↑この時のような眼光の鋭さは失われ、弱々しい88歳のおじいちゃんにしか見えなかった。眼鏡をかけており、白髪が伸びていた。松田被告は小柄でやや小太りで少し腰が曲がっており、禿げ上がった白髪頭。服装は2人とも官物のグレーのスウェット上下。

開廷の時間になり手錠と腰縄を外されるが、海野被告は勾留生活で更に足腰が弱ったのか、立位を保持するのもやっと。刑務官が海野被告に肩を貸して何とか立たせて腰縄を解いていた。
人権派弁護士先生が見たら、脱走の恐れがない高齢者で足腰の弱った被告に手錠と腰縄をするのは人権侵害!と叫びそうな光景である。
こんなヨボヨボの爺さんに空き巣できるのか?と疑問に思った。

海野被告は耳が遠いのでイヤホンを装着させ、マイクの音を拾えるようにしていた(高齢の被告あるある)

人定質問がされ起訴状が読み上げられる。
海野被告「間違いありません」
松田被告「運転はしたが窃盗はしていない」



被告人について

海野被告:福岡市出身。中学卒業後は漁師をしていたが、その後は職を転々。窃盗や住居侵入など前科18犯を有し、直近の服役歴は懲役3年6月、懲役2年6月、懲役4年(全て窃盗罪)と出所して直ぐに再入所を繰り返していた。犯行当時は生活保護を受給していた。

松田被告:夕張市出身。中学卒業後はトラック運転手などの職を転々とし、犯行当時は無職で生活保護を受給していた。窃盗や詐欺などの前科17犯を有し、今年の3月に札幌刑務所を出所したばかりだった。

事件の詳細

・E市の空き家からウイスキーなど時価総額11000円分を窃取した(余談だが、この現場は江別市大学生リンチ殺人事件の遺体が見付かった近所である)
・S市H区の空き家からネックレスなど11点(被害総額56万円)相当を窃取した。
・S市K区の空き家から現金4万???円を窃取した。
・S市H区の住宅から高級ブランドのバッグ(時価総額25万円)と現金や商品券など10万円を窃取した。
他にも窃盗未遂、住居侵入(未遂)など4件起訴されている。被害総額は110万円にも上る。

犯行の手口

海野被告によると、家と家との距離が離れているいわゆるポツンと一軒家のみ狙いを定めていた。住宅街を車でウロウロし空き巣しやすそうな家を見付けたら、窓ガラスを叩き割り、5分程度待って何の反応も無ければ侵入するという流れだ。

巷で話題の闇バイト強盗なんかよりも手慣れている。海野被告は前科18犯でありながら強盗の前科はない(多分)。住民とバッタリ出くわさないように、近隣住民に通報されないように、かなり気を付けて犯行に及んでいることが分かった。
関東連続闇バイト強盗なんかは大した金額を奪えないのに、住民に重症を負わせたり、最悪なことに死亡者まで出した。
空き巣もどうかと思うが、余りにお粗末で稚拙過ぎる闇バイト強盗なんかより、住民と顔を合わせることもなく、こっそりと盗んでいく高齢ルパンG3Sの方がマシである。ルフィ広域強盗団ならびに関東連続闇バイト強盗は、88歳の爺さん以下だ。

3人が窃盗団を組むまで

前述の通り3人の出会いは札幌刑務所。同じ工場になり3人は仲良くなった。海野被告と松田被告は既に別の刑務所で会っていたらしく元々顔見知りで、刑務所で久々の再会を果たして親睦を深めるようになった。最終的に3人の中で最後に出所した松田被告を海野被告・渡辺被告が迎えに行くほど親しい間柄になった。

シャバでも感動の再会を果たし、出所祝いをするなど更に親睦を深めて行ったが、懲役太郎が3人集まったら案の定ロクなことが起きなかった。

やがて海野被告は生活に困窮し、再び空き巣をしようと企てるも脚が悪く1人で空き巣はできない。空き巣のことを「ゴト」と呼び、松田被告に運転手役をお願いした。松田被告も快諾した。

松田被告「近々ゴトしようと思うんだけど、海野さん脚の方は大丈夫かい?」
海野被告「大丈夫だ、やろう」

と、トントン拍子で再び犯行することになる。

たった2ヶ月間で10件以上の空き巣を遂行したのであったから驚きだ。これだけの件数、空き巣を繰り返しても住民と鉢合わせなかったのはある意味奇跡なのかも知れない。


論告求刑

検察官「出所後すぐの犯行であり、窃盗の計画を入念に立て役割分担するなど犯行態様は極めて悪質。短期間で何度も犯行を繰り返していることから常習性も極めて高い。これまで何度も更生教育を受けてるにも関わらず、再度犯行に及んでるおり今後も更生する見込みは薄い。相当期間矯正施設に収容させるべき」と海野被告に懲役6年、松田被告に懲役4年を求刑した。

弁護士「深く反省しており、二度としない旨を誓っている。全国ニュースで大きく報道されており、既に十分な社会的制裁を受けている。被告は高齢であり、長期の収容に耐えられない。寛大な処分をお願いしたい」

海野被告・松田被告の弁護人も勝算は無いと分かっていたのか、随分と適当な弁護だった。

海野被告は主犯かつ実行役で常習累犯窃盗なので被害額の割に重い求刑で、松田被告も累犯前科があるため直接実行に加担してない割に重く見られた。

海野被告は見る度に弱っているため、獄中死すると思われる。松田被告も死ぬまであと何度か刑務所のお世話になるだろう。人生の半分以上を刑務所で過ごした彼らに更生の日は来るのだろうか、それより前にお迎えが来そうだが・・・


判決は今月26日に言い渡される。


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