Catawiki×GPSR完全攻略ガイド:日本からEU圏へアンティークを売るときの新常識
はじめに
近年、海外のコレクター市場では日本製の骨董品やビンテージアイテムが高い注目を集めています。刀装具、和装小物、昭和レトロなおもちゃやゲーム、さらには明治・大正時代のアンティーク品まで、その魅力は国境を越えて多くのファンを獲得中です。
そんな世界のコレクターと日本のセラーをつなぐプラットフォームの一つがCatawiki。アンティークからユニークなコレクティブルズまで幅広く出品できることから、多くの日本人セラーが利用を始めています。
しかし今、EU圏で新たに施行されるGPSR(General Product Safety Regulation:一般製品安全規則)という法規制が、多くの出品者にとって見逃せないトピックになっています。2024年12月13日から完全施行されたこの新ルールは、EUで販売されるほぼすべての消費者向け製品に安全基準を求めるもの。
「アンティークにまで適用されるの?」「自分は日本在住だけど影響あるの?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、日本在住の日本人セラーがCatawikiを通じてEUバイヤーに商品を売る際に、GPSRがどのように関わるのかを詳しく解説していきます。日本の骨董やビンテージ品にどこまで影響があるのか、どう準備すればいいのか、そしてほかにも絡んでくる可能性のあるEPR(拡大生産者責任)など、最新情報を交えつつ整理しました。
EUの規制が複雑化する中で、安全・安心な取引を行い、かつ出品停止や罰則などのリスクを避けるためにも、ぜひ最後までご覧ください。
第1章:GPSRとは何か?—背景と概要
1-1. GPSR誕生の背景
GPSR(General Product Safety Regulation)は、それまでのGPSD(一般製品安全指令)に代わる形で2023年にEU官報で発表され、2024年12月13日に完全施行された新しい規制です。
主な目的は、「EU域内に流通するすべての製品の安全性を高め、消費者を保護すること」。オンライン販売の普及などを背景に、製品リコールや安全情報の管理方法が見直され、規制の強化とデジタル時代への対応を図るために作られたのがGPSRといえます。
1-2. GPSRの主な特徴
GPSRには以下のようなポイントがあります。
EU責任者の選任義務
EU外に拠点を置く製造者は、EU内に責任者(Authorized Representativeなど)を置き、連絡先や安全管理業務を行わせる必要があると定められています。製品ラベルへの情報表示義務
製造者名や住所、モデル番号、バッチ番号、警告情報、対象年齢など、消費者が安全に使うために必要な情報を表示する必要があります。
特に、輸出先国の言語で表示しなければならないケースが多く、英語だけでは足りない場合があります。リスク評価の強化
従来よりも細かいリスク評価が必要となり、サイバーセキュリティの脆弱性や他の製品との相互作用など、新たな観点も考慮しなければなりません。リコール体制の整備
製品に事故や危険が見つかった場合の報告義務やリコール手続きが厳格化され、迅速な消費者保護が求められます。
1-3. 施行スケジュール
2023年6月12日:官報での公示から発効
2024年12月13日:完全施行(18ヶ月の移行期間終了)
このスケジュールに則り、EUに商品を販売する事業者は施行までに準備を整える必要があるといわれていました。
第2章:GPSRは日本在住の出品者にも関係あるのか?
2-1. 「EU販売=対象」の基本原則
GPSRはEU域内で販売される製品が対象です。日本に住んでいても、Catawikiなどを通じてEUバイヤーに商品を届けるなら、基本的には規制の範囲に入ると考えてよいでしょう。
しかし、GPSRが想定する「安全性の確保」は、新品製品の機能や構造に関する問題が主眼であるという側面もあり、骨董やアンティーク、ビンテージ品などは一部除外される可能性があります。
2-2. 骨董・アンティーク品は適用除外?
EUの公式情報では、コレクティブルズ(収集品)やアンティーク、骨董品などは、原則としてGPSRの対象外とされています。理由は、GPSRが消費者が一般的に使用する製品の安全を担保するための規則だからです。
ただし、ここで注意しなければならないのは、「使用される可能性があるかどうか」という解釈。例えば、「アンティークの茶碗だけれども、実際に飲食用として使われるリスクがあるかもしれない」「観賞用の刀装具だが、何らかの形で実用される可能性がある」と判断される場合、当局の見解によっては適用の余地が出てくる可能性も否定できません。
2-3. 将来的な規定変更のリスク
GPSRは新しい規則であり、今後の運用や解釈によっては適用範囲が拡大・変更されることもあり得ます。
現在は骨董やビンテージ品にほぼ関与しないと見込まれていますが、EUの安全基準がますます厳格化される潮流を考えると、「いまは対象外だと思っていたカテゴリーが急に対象になる」という事態も起こりうるでしょう。
このため、私たち日本在住のセラーも常に最新情報をウォッチし、プラットフォームのルール変更やEU法令アップデートに注意する必要があります。
第3章:Catawikiの基本ルールとGPSR
3-1. Catawikiの特徴
Catawikiは主にアンティーク、ビンテージ、コレクター向けアイテムのオンラインオークションプラットフォームとして人気が高いです。日本在住セラーがCatawikiを活用するメリットは次の通りです。
欧州圏を中心としたコレクターが多い
ヨーロッパ諸国のバイヤーが集うため、和骨董や浮世絵、昭和レトロ雑貨など日本特有の商品が高値で取引されることがしばしば。カテゴリーが幅広い
アンティークジュエリー、掛け軸、版画、古書、ヴィンテージ時計など、カテゴリー単位でオークションを開催。
3-2. Catawikiで出品する際のルール
アイテムの価値基準(最低落札想定額が75ユーロ以上)
ある程度の希少性や価値があるものが推奨されています。正確な商品説明
偽造や違法性のある商品は出品不可。出品時に厳格な審査が入り、虚偽説明にはアカウント停止などのペナルティもあり得ます。購入者保護
Catawikiが決済を一時預かり、商品到着後にセラーへ支払う方式を採用。購入者は商品到着の保証やトラブル対応を受けられます。
3-3. GPSR対応とCatawikiの連携
Catawiki側もEUの新しい安全規制に対応せざるを得ない立場です。
今後、「GPSRの対象となる製品を出品するときには特定のラベル表示や責任者情報の記載が必須になる」といったルール強化が実施される可能性があります。
現状はアンティークやビンテージ品は対象外になりやすいため、Catawikiとしても出品を制限していない場合が多いですが、将来的にはより厳格化されるリスクがある点に注意しましょう。
第4章:日本在住セラーの具体的なGPSR対応
4-1. まずは「自分の商品が本当にGPSR対象になるか」を確認
アンティーク・骨董品・数十年経過のビンテージ品
ほとんどの場合、GPSRから除外される可能性が高い。
ただし、そのアンティークが実用される可能性があるとみなされる場合、EU当局が問題視するケースもゼロではない。
比較的新しい製品(おもちゃ、カメラ、オーディオ機器など)
電気的な安全性や部品の欠陥による事故リスクなどが想定され、GPSR対象となる可能性が高まる。
装飾品やファッションアイテム
素材や着用時のリスク(アレルギーや子供の誤飲など)によってはGPSR対象。ラベル表示義務が課される場合も。
4-2. GPSR対象になった場合の主な対応
EU責任者の手配
EUに法人や現地代理人がいない場合、EU内の代行サービスなどを利用し、責任者を設置する必要があるかもしれません。ラベル表示と書類準備
製品の名称、型番、バッチ番号
製造者の名前と連絡先
使用上の警告・対象年齢
技術文書の準備(リスク評価など)
リコール体制
不備が見つかった場合のリコールのフローや報告義務を確認しておく。
4-3. 対象外なら何もしなくていいのか?
「アンティークだから対象外で大丈夫!」と安心しきるのは、あまりおすすめしません。
EU規制の厳格化や、Catawikiなどプラットフォームの出品規定がいつ変わるか分からないため、最低限GPSRに関する最新情報をチェックする習慣を持ち、”アンティークです”と明記しておくなどの注意点をおさえておくほうが無難です。
第5章:EPR(拡大生産者責任)との関係
5-1. EPRとは
EPR(Extended Producer Responsibility:拡大生産者責任)とは、製品が廃棄物となった後までを含め、製造者(または輸入者)が責任を負うという考え方にもとづく規制です。EUでは国ごとに電気電子機器、包装、バッテリーなどのEPR登録義務があり、日本からの出品者でも対象製品を売る場合は登録やリサイクル費の負担が求められることがあります。
5-2. GPSRとEPRの相違点
GPSR:安全面重視
製品そのものの使用時・保管時における安全性、事故リスクなどが焦点。EPR:環境面重視
製品が廃棄される際のリサイクル負担や環境負荷が焦点。
5-3. 日本人セラーが気を付けるポイント
大型家電や電子機器の出品
EPR対象となる可能性が高い。包装材のEPR
出荷時の梱包資材についても対象になる場合があり、販売国ごとに登録を求められるケースがあります。Catawikiの今後の対応
GPSR同様、プラットフォームとしてEPRへの対応を強化し始めると、出品時に追加情報の入力を求められる可能性があります。
第6章:実際の手続きとリスク管理
6-1. もしGPSRに違反したら?
GPSRの対象製品を正しくラベル表示していなかったり、責任者不在のままEUに輸出していたりすると、EUの監督当局による指導や罰則を受けるリスクがあります。
在庫差し止め
罰金・販売停止処分
リコール費用の負担
Catawikiアカウント停止の可能性
6-2. リスク回避のためのステップ
プラットフォームガイドラインの確認
Catawikiの出品ポリシー、最新のヘルプページを定期的にチェック。専門家に相談
輸出代行業者やEU内のコンサルタントを通じて規制遵守のアドバイスを得る。商品説明の徹底
「これはアンティークであり、観賞目的の商品です」と明示するなど、購入者が誤って実用しないよう注意書きを入れる。必要書類の準備
万一のときにリコールや当局への報告に対応できるよう、商品情報や取引記録を整備しておく。
第7章:Catawikiのヘルプページとサポートの活用
7-1. 公式ヘルプの確認
Catawikiでは各種Q&Aやガイドが公開されています。特に新しい規制に関わる場合や、出品カテゴリーに合わせた追加情報がアップされることもあるため、定期的にヘルプセンターを確認しましょう。
7-2. カスタマーサポートへの問い合わせ
問い合わせフォームの利用
商品カテゴリーやGPSR関連の懸念点を質問したい場合は、問い合わせフォームから詳細を送ると、サポート担当者が案内してくれます。必要情報を整理してから問い合わせる
出品予定の商品概要、想定されるリスクや疑問点を事前にリスト化して伝えると、スムーズに回答が得られる傾向があります。
第8章:よくある質問と回答
Q1. 「昭和レトロのおもちゃもGPSR対象になりますか?」
A. おもちゃは本来、子供が実際に使用する前提で販売される製品です。そのため新品・中古を問わずGPSRの対象となる可能性が高いです。とはいえ、すでにコレクターアイテムとして価値を持ち、実用される見込みが低い場合は、アンティーク・コレクション扱いとなる可能性もあります。最終的には各国当局の判断次第です。
Q2. 「アンティーク掛け軸なら絶対にGPSR対象外?」
A. 骨董的価値を持ち、観賞目的が明らかな場合は対象外になりやすいです。ただし、灯籠や照明の機能がある掛け軸など、使用される余地があるものはグレーゾーンになり得ます。
Q3. 「EPRはアンティークには適用されない?」
A. 多くの場合、EPRは新品製造物や電気電子機器、包装材などに焦点が当たるため、骨董品に直接かかることは少ないでしょう。ただし、電気機器を含むビンテージ製品などは要注意です。
Q4. 「EU責任者ってどうやって探せばいい?」
A. 認定代理人サービスを提供している企業があります。また、EU国内に拠点を持つパートナーと提携する方法もあります。出荷量や商品数が多くない場合はハードルが高いかもしれませんが、必要性が高まれば検討せざるを得ないでしょう。
第9章:まとめと今後の見通し
GPSRはEU販売全般に影響するが、アンティーク・骨董品は当面除外可能性が高い
しかし今後の規制変更リスクや、コレクターアイテムと実用品の境目が曖昧になるケースもある
Catawikiでの販売が好調な日本在住セラーは、最新のEU規制やプラットフォームルールをこまめにチェックすることが重要
EUの製品規制はこれからも強化されていく流れにあり、安全面だけでなく環境面(EPR)の観点からのハードルも上がり続けると予想されます。その中で、日本の骨董やビンテージアイテムの人気は衰えていません。むしろ、規制にきちんと対応し、信頼できるセラーとして認識されるほど、EUのコレクターから好まれる可能性も高まるでしょう。
GPSR施行はゴールではなく、EU市場での安全基準アップデートの始まりに過ぎません。 これを機に正しい知識を身に付け、Catawikiを通じて日本の貴重な文化を海外に届け続けていきましょう。
第10章:参考と次のアクション
Catawiki公式ヘルプ・ガイドラインの定期チェック
GPSRやEPRに関する最新の出品ポリシーが更新されていないか、常に注目しましょう。専門家・代行サービスへの相談
もしGPSR対象になりそうな商品を本格的に出品する場合は、EU規制の専門コンサルタントや輸出代行サービスに相談し、安全策を固めましょう。ジェトロ(日本貿易振興機構)に相談するのも良いでしょう。アンティークであっても説明を丁寧に
「使用目的」ではなく「コレクション用・鑑賞用」であることを明記し、購入者とのトラブルを避ける工夫が大切です。継続的な学習
EU法令は流動的です。SNSや各種ニュースレターなどで規制改正の動向をウォッチし、トラブルを未然に回避しましょう。
最後に、ここで述べた情報は一般的なガイドラインであり、法的助言ではありません。実際の状況や商品の性質によって対応は変わってきますので、必要に応じてCatawikiサポートへお問い合わせください。
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