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世田谷九品仏絶景紅葉と三途の川

九品仏は世田谷区奥沢にある浄土宗の寺院で正式名を九品山唯在念佛院淨眞寺という。延宝6年(1678)珂碩上人が徳川幕府より奥沢城跡地を賜り開山した。九躰の阿弥陀佛如来像を安置していることから一般に九品仏と呼称されている。境内敷地は彌陀三六に即し、三万六千坪を有しているという。
総門、閻魔堂、山門、鐘楼堂、開山堂、龍護殿(本堂)、三仏堂等の七堂伽藍を備えた本邦でも指折りの大寺院の一つである。本堂に安置されている釈迦牟尼如来は上品(じょうぼん)、中品(ちゅうぼん)、下品(げぼん)に安置されている阿弥陀佛如来像のある西方、即ち極楽浄土を見つめている。

最寄駅は東急大井町線九品仏駅で、駅を出て左に曲がれば直ぐに参道が見えてくる。
訪れたのは12月10日(2024年)で紅葉のピークはやや過ぎていたと思われるが、それでも赤、黄、朱等艶やかな色彩は堪能出来た。  

九品仏駅ホーム
参道入口近くに在るパン屋さんComme'NTokyo本店
2019年に開催されたパンの世界大会
「モンディアル・デュ・パン」で日本人初の総合優勝を
果しした著名店で常時店外に客が並ぶ、
外観もスタイリッシュで、いかにも購買欲を唆られる。
味の程は食べてのお楽しみか?
参道入口
参道
総門


総門を潜れば、間もなく閻魔堂が目に入る。
令和元年に建て替えられた閻魔堂は同年8月に落慶法要が行われ、未だ木の香りも芳しい。

堂前には三途の川があり閻魔堂に詣でるには、そこに架けられた石の橋を渡る。

仏道に拠れば人は鬼籍に入て尚、ある期間旅を続けなければならない。此岸と彼岸の間を彷徨う所謂冥土の旅である。(宗派に由ってはこの限りではない、また後述する賽の河原は民間信仰、十王伝説はヤマ伝説等に依拠しているとも云われ仏説とは必ずしも合致しない)

閻魔堂と三途の川
閻魔堂周辺の紅葉
鎮座まします閻魔大王。向かって左が奪衣婆右が懸衣翁。

冥土の旅は星月の光さえ無い、暗く険しい死出の山道に始まる。辛く、孤独な旅をひたすら歩くこと約八百里(約3200km。日本の最北端から最南端迄の距離に相当する)、七日目にして漸く冥土の旅の観光名所「賽の河原」に辿り着く。ここに到るまで旅人が口にするのは煙香の匂いのみである。従って、この間遺族は線香を焚くことを絶やしてはならない。
賽の河原の目前には滔々と流れる大河があり、聞くも哀れ、見るも惨めな光景が旅人を捉える。
十にも満たない幼兒(おさなご)達が、親より先に身罷った咎(とが)にて、日がな河原の石を持ち運び石塔を作っている。手足は石にて擦れ爛れ、指より出ずる血の滴(しずく)は躰を朱に染めなして、雨露凌ぐ棲家もなく…
「一重積んでは父の為、二重積んでは母の為…」
このように日がな石を積むことを繰り返すのだが、日も入り相いてやっと石塔が出来上がる頃になると、恰もそれを見計らった如くに獄卒の鬼が現れ、幼兒を睨め付けて「汝等の積む塔は歪みがちにて見苦しく、かくて功徳に成り難し」と鐵の杖にて塔を残らず打ち毀す。石を積んでは崩され又積んでは崩されいつ果てるともない。

然しながら旅人は、この惨憺たる情景を見てもとやかく言ういうすべとてなく、またそのような暇(いとま)もない。十王の一人秦広王による冥土の旅の最初の審判(主に殺生について)を受けなければならないからだ。
また此処において生前の業により渡るべき三途の川が決められる(初七日)。
善行を成した者は橋を渡ることが出来るが、地獄・畜生・餓鬼の三悪道に堕ちた者は川に入る。
罪浅き者は浅瀬を、罪深き者は毒蛇悪龍が蜷局(とぐろ)を巻く足も届かぬ深い濁流を泳ぎ切らねばならない。漸くしてこの川を渡り終えたとき、もはや娑婆には戻れない。
亡者は待受けていた奪衣婆(だつえば)により身包み剥がされる。剥ぎ取られた衣服は懸衣翁(けんねおう)により衣領樹(えりょうじゅ)の枝に懸けられ、その枝の撓(しな)り具合によって罪の軽重が決められる。
亡者は素裸で尚も旅を続け、次々と裁きを受ける。
二七目(14日目)には初江王により偸盗の罪
三七目(21日目)には宋帝王により邪淫の罪
四七目(28日目)には五官王により妄語の癖
五七目(35日目)にして遂に閻魔王による裁きが行われる。
閻魔王は亡者の前世での行いを洗い晒し映し出す浄頗梨(じょうはり)の鏡と閻魔帳を照らし合せ亡者の行くべき六道を決定する。この閻魔王の裁き(最終決定)により、
六七目(42日目)に変成王により亡者の
生まれ変わる場所が、
七七目(49日目)には泰山王により亡者の生まれ変わる条件が決定される。
かくして冥土の旅は終わり、あとは百箇日、一周忌、三周忌と其々の王の裁きを受け、如何なる極悪人でもやがては極楽往生が出来るという。

但し、立証した者はいないので真偽の程は定かではない。

以下に九品仏の紅葉写真を十数枚載せておく

閻魔堂前
総門附近
境内庭園
仁王門
仁王門周囲の紅葉
東門方面を見る
朱灯籠と境内庭園
境内庭園
総門方面へ
仁王門方面を見る
龍護殿(本堂)と紅葉
境内
入り日に照り映ゆる庭園と紅葉

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