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サンタさんへ

小学校1年生のクリスマスに「赤いろうそくと人魚」という本をもらった。さだかではないが、父の会社の人からだと言われた気がする。

いわずとしれた小川未明の童話であるが、それはたいそう立派な装丁で、外函に納められていた。
表紙にはなまめかしい人魚が、荒波のなか岩のうえに座っている絵が描かれていた。
重々しく大人っぽい印象で、一年生のわたしにはあまり嬉しくないプレゼントであった。
人形とか髪飾りとか、そういったものが欲しい年頃である。

しかし、三年生頃から本好きになったわたしはその本のとりこになった。
小川未明のお話はなんだかシュールで、個性的な挿し絵がさらにその世界観を増幅していた。

なぜかミスプリントで、お話が1つ目次から抜けていた。
わたしは自分で題名とページを目次のなかに書き込んだ。そのお話は特にお気に入りだったからである。

今、もう一度あの本を手にしたいと思うのだがアマゾンやフリマアプリで探してみても見当たらない。
小川未明の絵本や文庫など、色々と出版されているのであるが、まさにあの本は見つからないのである。

どこの出版社から出ていたのかも、挿し絵が誰なのかも全くわからない。
1970年頃から出版されていたのではないかと思うが、とにかくファンシーな雰囲気のものでなかったのは確実である。

本を贈ってくれた父の会社の人が誰なのかもわからずじまいだったが、センスの良さに脱帽する。数ある児童書の中からよくぞあれを選んでくれました。

クリスマスが近づくと、あの本のことを思い出す。いつかサンタさんが持ってきてくれるだろうか。

読んでくださりありがとうございます。


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ドリー·G
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