【通信将棋自戦記】VS 常盤台メイさん

対局相手の印象など

将棋系Vtuberの黎明期からいらっしゃる、界隈古参のVtuberという印象の方で、Youtubeでは将棋友達対局(戦型指定可)や定跡研究配信といった将棋コンテンツの他に、雑談配信、同時視聴配信、歌枠など多彩な活動をされている方です。
更には将棋V向けの大会の主催を担っていたり、VSリーグという大会ではチームリーダーを努めていたりと活躍の幅が大変広い戦闘メイドさんです。

将棋面で言うと、主に三間飛車(先手番に限り78飛戦法?)をメインに使う振り飛車党で、駒をしっかり使っていく筋の良い指し回しと、攻守共に手厚さを重視する布陣を好んでいるのが印象的です。
一度優勢を取ったら簡単には逆転を許さない激辛メイド(?)になるのも界隈では有名。

そんなメイさんとの通信将棋、どんな対局になるのか!?

なお、棋譜は下記から閲覧できます。
https://lishogi.org/Py9cwpGB/gote

最序盤 ~相振り飛車模様の出だし~

初手から ▲7八飛 △5四歩 ▲7六歩 △4二銀 ▲6八銀 △5三銀 ▲4八玉 △3四歩 ▲3八玉 と進み第1図

第1図 相振り飛車模様の出だし

メイさん先手の私が後手となりました。メイさんは78飛戦法(初手に三間に振るやつ)をよく使っており、相振り飛車も上等といった感じ。
私は後手番の相振り模様の時は、飛車の位置を保留して△52飛と途中下車せずに△88飛と回れそうならそちらを採用することにしています。

第1図以下 △2四歩 ▲8六歩 △2五歩 ▲8五歩 △4四角 ▲2八銀 と進み第2図

第2図 飛車がいない筋の歩が伸びる異様な光景(相振りではよくある)

第1図からお互い、飛車のいない2筋、8筋の歩を伸ばす一見変な駒組みに見えますが、相振りではよくある形。お互い機を見て向かい飛車への振り直しを狙う序盤でした。とはいえまだまだこの後の展開は分かりません。
冷静に見返すと、実は第2図は△84歩という仕掛けがあったかもしれませんね

序盤 ~戦型は相向かい飛車に~

第2図以下 △2二飛 ▲7七銀 △3三桂 ▲6六銀 △2六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲2七歩打 △2一飛 ▲7七角 △4二金 ▲8八飛 △8二銀 ▲6八金 と進み第3図

第3図 結局飛車は2筋(8筋)にいるのが強い。

私は相振りで得意としている△44角型向かい飛車を指向しました。対してメイさんは、飛車を向かい飛車に振り直してから、▲68金と玉型をバランスタイムに構える布陣に。
先手からの▲75銀~▲84歩の棒銀がありそうですが、こちらも▲72金と金銀2枚を8筋に足せるので、まだまだどうなるかは分からない。

中盤1 ~角交換型の相振りに合流~

第3図以下 △6二玉 ▲7五銀 △7二金 ▲5八金 △5二玉 ▲4四角 △同 歩 ▲6六歩 と進み第4図

第4図 角交換相振りに合流

先手のメイさんから▲75銀と棒銀を狙いつつ角道を通してきて、少し局面が動いてきました。▲84歩からの棒銀見えているので私は△72金と右辺に守りを固めました。
対して、角交換の将棋になりそうなので、メイさん側も隙のない布陣にするために△58金と流れ金無双を作りました。相振りにおける金無双は4筋、5筋が弱点になりやすいので、△55歩、△45歩当たりの位を取っていけたらなぁとこの辺では考えていました。ただ、自玉は右辺が壁型かつ相手の攻めに近く、かと言って左辺も歩を進めると隙が出そうだったので、左玉風味の組み換えを考えて手損ながら△52玉としました。

中盤2 ~お互いに主張を作っていく中盤~

第4図以下 △6二玉 ▲7五銀 △7二金 ▲5八金 △5二玉 ▲4四角 △同 歩 ▲6六歩 △4三金 ▲1六歩 △4二玉 ▲9六歩 △4五歩 ▲9五歩 △3五歩 と進み第5図

第5図 お互いに主張のある中盤

先手のメイさんは、左辺の飛車の陣地で位を確保し、棒銀や端攻めを狙える態勢を構築。
後手の私は、相手の飛車から遠ざかる左玉にし、金無双の弱点である4筋付近を攻めるために3筋、4筋の位を取り将来の桂馬打ちや継ぎ歩攻めをできる態勢を構築。
ここはお互いに主張があり互角と言ったところ。(調べたら水匠5評価値 -100なのでかな~り互角)

第5図以下 ▲8四歩 △同 歩 ▲同 飛 △3二玉 ▲8八飛 △8三歩打 ▲7七桂 △5五歩 ▲8九飛 △4四銀 ▲1七銀 と進み第6図

第6図 お互いに着々と「刺す」準備を整える中盤・・・

メイさん側は飛車先の歩交換と左桂を活用し、私側は5筋の位も取り更に玉を戦場から遠ざける。お互いに着々と攻撃準備を整える中盤。

中盤3 ~筋違い角で局面を動かす~

第6図以下 △5四角打 ▲6五歩 △5六歩 ▲同 歩 △5五歩打 ▲同 歩 △同 銀 ▲2六銀 △5六歩打 と進み第7図

第7図 なんですか?この角は。

先手の▲17銀を見て△54角と筋違いに角を打ちました。▲17銀は相振りでよくある手筋で、次に▲26銀と出ると後手目線で35の効きがなくなったタイミングで▲35銀と歩を掠め取られてしまいます。
△54角自体はこの戦型で出てくる手ではなくいかにも妖しい手ではあるのですが、

  • 7六の歩取りになっている

  • 次に△4六歩と突く手が△2七飛成 or △2七角成の先手になる

  • どこかで△4五角と覗く手が飛車取りになる

という意味を込めて打った角で、我ながら嫌らしい角なのではと思ってました。
そこから先手の弱点である5筋に嫌味を付けるために、△56歩~△55歩と継ぎ歩攻めを結構しました。歩損の攻めなので怪しかったですが、弱点を突いているで先手も受けを意識する展開で良い勝負にはできそうかなと思っていました。
この5筋の継ぎ歩攻めは先手の流れ金無双への組み換えを見てからの狙い筋ではありました

第7図以下 ▲同 歩 △同 銀 ▲2六銀 △5六歩打 ▲3五銀 △4六歩 ▲2六銀 と進み第8図 

第8図 おいおい35の歩を掠め取られてるじゃないか。

第8図は5筋に嫌味を付けることはできましたが、持ち歩がなくなってしまい△45桂一発だけで勝てるかは微妙かなと見ていました。
ここはソフト検討などもしてみましたが、歩を掠め取る▲35銀が実は良くなかったようで、不安定な筋違い角を咎める▲66角(第8-a図)が良い手らしい(駒損しますけど・・・?)。△同銀を取るよりないのですが、▲同銀とされて角と金が同時に攻められる格好で後手指しにくくなりそう(角金接近するべからず?)。
冷静に見返してみると▲35銀自体が緩めではあるので、▲67金~▲59飛(第8-b図)などが嫌だったかもしれません。

左:第8-a図 いや、そんな角見えるかーー!
右:第8-b図 こっちなら人間でも指せそう?

第8図以下 △6二金 ▲8四歩打 △同 歩 ▲同 銀 △7二金 ▲8三歩打 △7一銀 ▲7五銀 と進み第9図 

第9図 お互いに陣形が崩壊してきて終盤が近い雰囲気

前述の通り、こちらは△45桂から勝ちに行きたいと思っていましたが、持ち歩がないのが気がかりで決行できませんでした。そこで▲62金~▲52金と玉型を固める手を見せて棒銀を誘いました。純粋な棒銀は大丈夫(本当か?)と見ていて上手くいなせれば一歩手持ちにできると見ていました。
ここはシンプルに右辺に手を付けずに△45桂とすぐ行く手もありどちらが良いかは判断しかねていた場所でした。
とはいえ第9図の局面は、先手は流れ金無双の弱点の5筋に拠点を作られて次に△45桂で金桂交換になりそうで受けに窮しそうで、後手は攻められそうな8筋から玉が多いので左玉が活きる展開で、人間的には後手ペースと見ていました(水匠5評価値は -400(後手有利) 程度らしい)

中盤4 ~中央突破に成功~

第9図以下 △4五桂 ▲3六角打 と進み第10図

第10図 どきどき・・・

持ち歩を1枚手に入れたのでそろそろ攻め時とみて△45桂を決行しました。
対して▲36角は意表を突かれた手で、この段階では47地点を守りつつどこかで▲54角△同金の交換が入るとこちらの玉が薄くなるのを狙っているのかなと思っていました。
結果的にではありますが、この後の展開で、こちらの筋違い角を手番を握りつつ持ち角に戻すことができたので、▲36角が先手としては敗着になってしまったのかなと振り返って思いました。▲36角に代えて先手は▲46歩と歩を払わないといけなかったようで、▲46歩△同銀▲47歩△55銀(△57銀成には▲55歩で角が死ぬ)と収めて互角の進行だったようです。とはいえそれはそれで先手は手の方針が難しいので、人間的には後手ペースかもしれません。

第10図以下 △4七歩成 ▲同 金 △4六歩打 ▲4八金 と進み第11図

第11図 技が掛かりそうな雰囲気

第11図くらいまで進んで、左桂が金と交換できそうで優勢を意識していました。

終盤1 ~金桂交換は大きかった~

第11図以下の指し手 △5七歩成 ▲同 金 △同 桂成 ▲同 金 △3六角 ▲同 歩 △4七金と進み第12図

第13図 金系交換は大きそうだがどうなる?

第13図では一見重そうな金打ちですが、これ以外の攻めはないと判断し△47金を打ちました。これには▲28玉と逃げる手が読み切れておらず、以下△57金と金を取るくらいですが、手番を渡してしまうため▲35桂(第13-a図)などに対して応手を間違えると逆転しそうなので、正確に指しきらないといけないので油断はできない展開かと思っていました。

第13-a図 厳密には後手勝っていそうだがミスは許されない

終盤2 ~決め手の角打ち~

第13図以下 同 金 同 歩成 同 玉 と進み第14図

第14図 決め手のある局面

第14図以下 △5六角打 ▲5七玉 △4七金打 ▲6八玉 △8九角成 と進み投了図

投了図 97手目△8九角成まで

投了図は次に△88飛、△48飛(△28飛)、△67飛の3種類の詰めろが先手玉に掛かっており受けがない格好。

一局の総評

中盤のポイントは、後手の56手目△54角打ちからの継ぎ歩攻めを先手が咎めきれるかどうかが重要な将棋だったようです。とはいえソフト検討もしてみましたが、人間には難しい手が多く、△54角をすぐに咎めるのは現実的ではなさそうです。

終盤のポイントは、先手の77手目▲36角打ちで、これが後から振り返れば後手としては助けられたなという感じでした。
とはいえ、先手がここで何を指すべきかと言われると難しく、人間同士の対局ということを考えると5筋の嫌味がずっと付きまとう終盤になりそうかなと思いました。

流れ金無双は私も何度か使ったことがありますが、5筋に歩を垂らされて負けることが多かったので、それを今度は自分が試したら上手くいったいう感じでした。
流れ金無双側は角の打ち込みに強いので、雑に角を切って攻めを繋ぐ筋があるのですが、本譜はそういった展開ではないのでどうするんだろう・・・?

結論

囲いの急所は大事


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