【通信将棋自戦記】VS 天ノ川寝夢さん
対局相手の印象
将棋を指すのが大好きな友対系Vtuberという印象の方。あまり配信をしていない印象がありましたが、最近は友対の様子を配信したり、詰将棋を配信したりと配信活動にも意欲的なご様子。Xで時々尖った針を投げていらっしゃるようですが、末永く活動して欲しいので程々に・・・
将棋の方は、割と珍しい対抗形党で、かつ居飛車穴熊or振り飛車穴熊をよく指している印象があります。
棋力はウォーズ三段くらい(多分?)
香月との手合は、V王将戦本戦リーグで1度対局したことがあり、その時は右玉VS中飛車の対局で、寝夢さんの勝ちとなっています。
今回の通信将棋ではどんな中飛車対策を見せて頂けるのかっ!
なお、棋譜は👇️で公開しています。
最序盤 ~居飛車VS5筋位取り中飛車の出だし~
初手から ▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩 △4二銀 ▲4八銀 △5四歩 ▲6八玉 △5五歩 と進み第1図
序盤 ~超速 VS 銀対抗 の戦い~
第1図から ▲7八玉 △5二飛 ▲5八金 △6二玉 ▲3六歩 △7二玉 ▲3七銀 △5三銀 ▲4六銀 △4四銀 と進み第2図
寝夢さんは超速をぶつけてきました。ゴキゲン中飛車対策としては最も人気のある対策戦法で、THE王道といった出だし。
超速に対する中飛車側の戦い方もいくつかありますが、私の方も王道の銀対抗を選びました。
中盤1 ~居飛車が雁木穴熊を目指す~
第2図以下 ▲6八銀 △8二玉 ▲6六歩 △9四歩 ▲9六歩 △7二銀 ▲6七銀 △3二飛 と進み第3図
27手目の▲6七銀は雁木穴熊を視野に入れた指し方。雁木穴熊の狙いは、右辺で超速を見せて中飛車に銀対抗の形を強要することで仕掛けの権利を失わせて、その後に中央に手厚くしつつ玉を深く穴熊に囲うという超絶欲張りセットな戦法です。
中飛車は銀対抗の形を作ると、自分から仕掛ける手段がなくなりがちで、居飛車が穴熊に組むのをただただ眺めるだけの展開になります。
居飛車は雁木穴熊以外にも通常の穴熊や左美濃にする指し方もあり囲いもお好みで選べます。中飛車対策として優秀なのでオススメ(詐欺師が教える詐欺対策)
本譜は、5筋から攻めるのは難しいと見て三間飛車に振り直しました。
中盤2 ~お互い固め合う中盤~
第3図以下 ▲3八飛 △6四歩 ▲7七角 △5二金 ▲8八玉 △6三金 ▲6八金 △7四歩 ▲7九金 △7三桂 ▲7八金 と進み第4図
第3図の後手の△3ニ飛には、当然先手も▲3八飛と受けるところ。後手の振り飛車から手を作るのは難しい。
先手は当初の狙い通り穴熊を着々と建築しにいき、後手の私はとりあえず金銀3枚の高美濃を作っていきました。チャンスが来るまで待つしかないのは△4四銀型の辛いところ。
第4図以下 △8四歩 ▲9八香 △8三銀 ▲9九玉 △7二金 ▲8八金 △3一飛 ▲1六歩 △4二角 と進み第5図
第5図までで、先手の雁木穴熊 VS 後手の銀冠という戦いに。後手は相変わらず仕掛けの権利がないところですが、△4ニの角が穴熊の端を睨んでいるので少しやる気が出たかもしれないと感じていました。
第5図以下 ▲8六角 △9二香 ▲5六歩 △8五歩 ▲6八角 △5六歩 ▲同 銀 と進み第6図
第5図以下、先手は▲8六角とこちらの浮き駒の角に狙いを付けてきました。居飛車側の8六角は常に好位置なのでされると嫌な手の代表と言ったところ。
こちらは△9ニ香と端攻めを見せました。それに対しては先手から▲5六歩と5筋から一歩交換をされて第6図。戦いが起こりそうな予感。
中盤3 ~5筋でバチバチ~
第6図以下 △5一飛 ▲5八飛 △3三桂 ▲3七桂 △3五歩 と進み第7図
第6図から私は振り飛車のセオリー通り歩の切れた筋に△5一飛と回りました。寝夢さんも銀取りを受けるべく▲5八飛と回って5筋でバチバチの戦いに。
そこで私は後の△5七歩の叩きを狙って△3三桂と跳ねました。
銀交換になると後手からは△6九銀打という飛車金両取りがあるため今瞬間は強く出れると思っていました。
そして先手も▲3七桂と桂には桂で受けて、そこで私の狙いの一手△3五歩!!
先手の飛車が5筋にいるので▲2六飛などの受けがないので感触は良いかなと思っていましたが、ただ一瞬攻めとしては甘い感じもするので、まだ互角の範疇と思っておりました。
第7図以下 ▲5二歩打 △同 飛 ▲3五銀 △5七歩打 と進み第8図
第7図から△5ニ歩とこちらの飛車を叩くのが寝夢さんの反撃でした。
ここ数手のやり取りでコチラ側は常に△6九銀打という反撃があるので強く出れていましたが、▲5ニ歩と叩かれるとコチラ側も▲6一銀という割り打ちが発生するため強く出れなくなります。
本譜は▲5ニ歩に対して△同飛と取りましたが、△9一飛と当初の狙いの地下鉄飛車に決めるのもありました(というかそっちの方が最善で評価値は+21(互角))
本譜の同飛はやはり割り打ちのし合いが良くないのか評価値は+92(互角)程。
まぁ微差かも?
第8図以下 ▲同 飛 △3五銀 ▲同 歩 △4八銀打 と進み第9図
シンプルな割り打ちのし合いはやや悪いと見て、△57歩と叩いてから△4八銀とこちらに打つのが私なりの工夫したところでした。狙いは▲6九銀とされた時に5一飛と引いておけば、銀冠が崩されてはしまうのですが、△5七銀成と飛車を取ったとき(下図 第9-A図)に▲同角とした手が銀に紐が付かないため△5六飛と走れるという狙いがあります
第9図以下 ▲5八飛 △5七歩打 ▲4八飛 △5六飛 ▲6七銀打 △3六飛 と進み第10図
前述の第9-A図のようになるとボコボコな展開なので、先手も▲5八飛~▲4八飛と辛抱気味に指して来られて、第10図のような展開に。
第10図は振り飛車が上手く指しているように見えますが、次に▲5七角~▲5八飛とされると歩を払われて、飛車角の働きも良くされるのでこちらの角の残念さが際立ち、桂得くらいじゃ囲いの固さの差を捲れないと思っており厳密にはやや良いが互角に近いと思っていました。
(実際の評価値は-383で後手有利らしい。桂馬得した割にそんなもんと考えると形勢判断はそこまで間違えていなかったっぽい)
中盤4 ~優勢と思いたいがやられると嫌な展開~
第10図以下 ▲5七角 △3七飛成 ▲5八飛 △4七龍 ▲4八飛 と進み第11図
第10図から▲5七角と歩を払い△3七飛成と桂馬を補充した手に▲5八飛と回るまでは予想した展開でした。桂得ですがこちらの角の働きの差があるので楽観視はまだできなさそう。
△4七龍と歩切れを解消しながら中央へ龍を潜った手はやや緩手かもしれないと思いましたが、それ以上に先手からの有効打があまりないと見て指しました(一応ほぼ最善手らしい。△4七龍or△6九銀打で評価値は-713(後手有利)
この辺まで進むと有利を意識していましたが、ソフト検討してみると帰路は▲5七角だったらしい。これに代えて△4六銀打(下図 第11-A図)でまだまだ粘り甲斐のある一局の様で評価値は-280(互角)らしい。これは指せない。
最後第11図の局面は先手の指し手が難しいと思いましたがまさかの飛車ぶつけ。もちろんこの筋もあると思いましたが、角損するのでさすがにやってこないと思っていたら開き直ってやられました。
実際穴熊の暴力発動されると嫌ではあります。
終盤1 ~穴熊の暴力 VS 駒得~
第11図以下 △5七龍 ▲4三飛成 △5三角 ▲5四歩打 △7一角 ▲6一銀打 と進み第12図
第11図から△5七龍と更に角得をする手に▲4三龍は必然の一手。
角取りなので流石に△5三角と逃げますが▲5四歩と更に角を狙って拠点を作りに来られます。
角は△3五角と逃げる手も見えますが、▲3三龍が桂馬を補充しながら再度角取りとなるので7一に逃げました。
最後△6九銀と引っ掛けられて第11図。
優勢は維持していると思いたかったですが、穴熊の寄せ方を間違えると逆転しかねない局面です。
第12図以下 △8六歩 ▲7二銀成 △同 銀 ▲5三金打 △同 金 ▲同 歩成 △同 角 ▲5四歩打 △7一角 ▲7五歩 と進み第13図
第12図から私は△8六歩と穴熊の頭を攻める選択肢をしました。
当然この瞬間を手抜かれて穴熊の猛攻を受けることになります。
▲7ニ銀成と一枚守備駒を剥がされてから▲5三金打を寄せのセオリー通り食らいつかれます。こちらも守り駒の枚数は勝っているので精算に応じますが、守り駒が角なのが心もとないところ(角くんもっと頑張って!)
最後第13図で桂頭攻めされたところは、さすがにまだ優勢と思っていましたが穴熊が固いので、油断すると逆転すると思っていました。
第13図以下 △8七歩成 ▲7四歩 と進み第14図
第13図から私は待望の△8七歩成。これで勝ちに行くのが△8六歩から狙いでした。次に王手で金が取れるので一回は▲同金直と手を戻されると読んでいましたが、まさかの手抜いて▲7四歩!!
流石に金ボロはやりすぎではと思っていましたが、こちらは8筋から歩で攻めているので、寝夢さん側からも▲8三歩という反撃が生じているのです。ここは見えてなかったので反省点でした。
終盤2 ~逆転筋を回避しながら~
第14図以下 △8八と ▲同 金 △8七歩打 ▲7三歩成 △同 銀 ▲8三歩打 と進み第15図
第15図の▲8三歩が油断成らない手で、この局面は次にこちらが△8八歩成りと王手で金を取れば勝ちなのでどう応じても良さそうに見えますが、寝夢さんに歩を3枚持たれているので、桂馬と歩のコンボで先手を取りながら玉頭をケアされると詰みorほぼ詰みになってしまいます。
例えば進行例として第15図以下、△同玉 ▲7五桂 △8四玉 ▲8五歩 △7四玉 ▲6三龍 △8五玉 ▲7七桂 と進んだ一例が下図 第15-A図
したがって第15図の▲8三歩の叩きは取れませんでした。ただ取れないとすると逃げ方が4パターンありまして、
△7ニ玉 7三の銀に紐を付けており手堅い。王手が続くが歩詰みの読み
△8一玉 7三の銀に紐が付かないので▲7三龍と取られるがそのタイミングで反撃して詰ませられそう
△9一玉 △8一玉とほぼ同じ。若干王手されにくそう
△9三玉 ▲8五桂~▲7三龍の筋で頓死
△9三玉以外は勝ちと見ていましたが、一手耐えれば▲8八歩成から詰ませられそうと思っていたので一番深く逃げる△9一玉を選びました。
第15図以下 △9一玉 ▲7三龍 △8八歩成 ▲同 玉 と進み第16図
第15図から△9一玉と逃げたからにはこうなる。次に△8三Xと打ってから△6七龍と一間龍を作りながら銀を補充したいところ。△8三歩だと▲9七玉の時大変になるので△8三銀と打ちました。これに同じように▲9七玉なら△9六銀成!!という成り捨てで仕留められます(第16-A図)
第16図以下 △8七銀打 ▲同 玉 △6七龍 ▲7七歩打 △7六銀打 ▲同 龍 △7八銀打 と進み第17図
第16図付近ではもう少し簡単に寄せれると思っていましたが、意外と先手の龍が守備に効いてるので龍交換してしまうのが分かりやすいと判断しました。
△7六銀は取らないと次に△8五金の詰み筋があるので▲同龍の一手。そこで龍交換する前に△7八銀が打てるのが一間龍の強いところ。この辺りは「頓死に追い込める」or「相手の龍を安全に外せる」のどちらかが確定しているので勝ちになっていたと思います。
第17図以下 ▲8六玉 △7六龍 ▲同 玉 △7二飛打 ▲投了 で以下投了図
投了図以下は
▲7五合 ・・・ △6七角 ▲8六玉 △8七金までの詰み
▲7四合(中合い) ・・・ △7四同飛 ▲8五玉 △7五金までの詰み
他の合駒もこのどちらかに合流するので詰み(なはず)
一局の総評
通信将棋開始時はV王将戦よりもだいぶ前ですが、終局時はV王将戦より後(だったはず)だったので、V王将戦での黒星に一矢報えて良かったなと思っています。というか単純に時間かかりすぎてすみません(一手2week設定)
中盤の△5七歩▲同飛△4八銀以降の流れが良かったので中盤で上手くリードを奪ってから後手が指しやすい将棋に持っていけたかなと思います。
終盤は自玉の頓死筋を作られてしまって読む量が格段に増えてしまったので通信将棋じゃなかったら逆転されていた気がします。
後で黒羽師匠に教えてもらったことですが△8六歩が寄せとしては変で、ここは△5五桂を打つところとのこと。やっぱ自滅ポイント高めなのが良くなかったかも。
単純ですがこの5五桂は受けにくい(というか受けがない)
結論
駒得を勝ちに結びつけるのはそんなに簡単ではない(と思いました)