【通信将棋自戦記】VS Safiniaさん

はじめに

  • 例によって文章が長いので、局面図だけパラパラ見るほうが見やすいです。

対局相手の印象など

相振りの伝道師 兼 変態紳士ことSafiniaさん。
序盤の組み立てがとても巧く、作戦勝ちの局面を作るのが上手い印象。
御本人は詰将棋が苦手と仰っていますが、中盤力、囲い崩し、寄せが鋭いので総合的な終盤力は高い印象があります。
ちなみに、相居飛車のことを相振り飛車と呼ぶ特殊な派閥の方です。

なお、棋譜は下記から閲覧できます。
https://lishogi.org/Jbiwsps2/gote

最序盤 ~△53銀型相振り飛車の出だし~

初期局面から△7六歩 △5四歩 ▲7八飛 △4二銀 ▲6八銀 △5三銀 と進み第1図

第1図 まだ戦型は分からない

先手振り飛車党と2手目△54歩の中飛車党が対局すると、第1図のような局面になりがち。
後手は嬉野流(鳥刺し)にしたり、△64銀と出て▲75歩を牽制したりと指し手が広いです。と言いながら私は95%向かい飛車にしてます。

第1図以下 ▲4八玉 △3四歩 ▲3八玉 △2四歩 ▲6六歩 と進み第2図

第2図 後手の私は振り飛車風味の駒組み

後手は△57銀型を作って飛車の横利きを通してから△34歩と角道を開けるのが習いある手筋。単に先手が▲22角成とするのは△同飛として手得で向かい飛車にできます。
本譜は△34歩に▲66歩と先手が角道を止める展開でこれもよくある展開です。

序盤 ~三間飛車 対 △44角型向かい飛車~

第2図以下 △2五歩 ▲7五歩 △1四歩 ▲1六歩 △4四角 と進み第3図

第3図 △44角型向かい飛車

第3図 16手目の△44角は、これに代えて△33角もオーソドックスな手で、ソフト評価値はほぼ同じです。
私は普段の将棋ウォーズ配信でも△44角型向かい飛車をよく使っているので、お相手のSafiniaさんも「来たか」と想定していたのではないかと思います。Safiniaさんの△44角型向かい飛車への対抗策はいかに!?

第3図以下 ▲6七銀 △2二飛 ▲9六歩 △3三桂 ▲2八銀 △2六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲2七歩打 △2一飛 ▲5八金 と進み第4図

第4図 先手三間飛車金無双 VS △44角型向かい飛車の戦い

実は通信将棋中は勉強途中で分かっていなかったのですが、△44角型向かい飛車には、端歩突き金無双+飛車先交換保留が結構強い気がします。
後手は持ち歩一枚じゃ端攻めが成立しないので駒組みになります。ここで先手が▲74歩△同歩▲同飛とした場合は、後手の持ち歩が2枚になるので△15歩が行けたり行けなかったり(多分行ける)
第4図は後手から△15歩が成立しないので駒組みになります。

中盤1 ~どちらの大駒が働くか?~

第4図以下 △4二金 ▲4六歩 △3五角 ▲4七金 △6二玉 ▲3六歩 △2四角 ▲6五歩 と進み第5図

第5図 後手は角を安全な位置に逃がしたが、先手も飛角の働き十分

△42金は△44角型向かい飛車で一番無難な駒組みではあるのですが、対金無双で持久戦になる場合は△32金の方が、後々△41飛として4筋攻めをする含みがあるので使いやすいのではと後から思いました。
対して▲46歩は44地点で出しゃばっている角を苛めようという積極的な手です。すぐに角が死ぬことはないのですが、次に▲36歩とされると角の逃げ場所を作るために忙しくなるので、その前に△35角~△24角で角の転換を図りました。
第5図は先手の飛角の利きが強いですが、後手も角が金無双の弱点を睨んでおり不満はないと思っていました

第5図以下 △7二玉 ▲7四歩 △同 歩 ▲同 飛 △7三歩打 ▲7六飛 △6二金 ▲6六銀 と進み第6図

第6図 まだまだ一局に見えるが

第6図まではお互いに自然に駒組みをしていった局面という印象です。
しかし、実はこの後の展開を見ていくと後手に指したい手があまりなく、第6図は後手作戦負けに近いと思います。(対局中はまぁまだまだくらいに思ってた)
なので、金無双のように飛車の利きに玉を囲うような手ではなく、木村美濃のように7筋に厚い囲いを目指すか、△44歩を急ぎ、△45歩を用意する順が勝ったと思います

第6図は後手の手番ですが、何を指しても先手の▲75銀が金無双の弱点を飛車の横利きで守りながら、攻めの銀を5段目に進出させ、角の利きも通すとかなり味の良い手になっています。
後手のメインの攻め筋は△45歩~△46歩と金無双の弱点に歩の拠点を作ってから駒を交換してごちゃごちゃすることが多いですが、飛車の横利きを通されるとこれを止めることがなかなか出来ず、後手は永遠に待つことしかできなくなってしまいます。

▲75銀の味が良すぎる

中盤2 ~攻めの主導権を握られてしまう~

第6図以下 △8二銀 ▲7五銀 △4四歩 ▲5八金 △5二金 ▲7七桂 △7一銀 ▲9七角 と進み第7図

第7図

途中△52金は一度上がった金を寄っていて手損なのですが、先手陣は飛車の横利きがあり金無双の弱点をケアしているので、こちらも飛車一枚足さないと攻めにならないと考え△41飛を用意しつつ玉を固める意味合いでした。
△71銀はついさっき上がった△82銀を戻しておりこれまた手損なのですが、相手の方が攻めが早くこちらの攻めが間に合わないと思い、左辺からの攻めに強い形にするために壁銀を解消する意味で指しました。

第7図以下 △5五歩 ▲6四歩 △同 歩 ▲同 銀 △同 銀 ▲同 角 △6三歩打 ▲5五角 △5四銀打 ▲4四角 と進み第8図

第8図 先手に上手く捌かれているが、何とか反撃したい

第7図では予定通り△41飛のつもりでしたが、角の利きで▲42歩と叩かれる筋が気になり、△55歩~△54銀の組み立てに切り替えました。
が当然▲64歩と先に仕掛けられます。

中盤3 ~歩損を犠牲に勝負形に~

第8図以下 △6三歩打 ▲5五角 △5四銀打 ▲4四角 △4一飛 と進み第9図

第9図 歩損の代償に先手で飛車を回ってどうか

△63歩は打ちたい歩ではなかったのですが、次の▲74歩の攻めが気になり、玉の安全を優先して受けました。
△54銀打は▲44角と更に歩を取られるのですが、手番と攻め駒を増やすことを重視しました。

第9図以下 ▲2六角 △4五歩打 ▲7四歩打 △8二銀 ▲3九銀 △4六歩 と進み第10図

第10図 飛車・角「Wow Wow」

先手は角を▲26角と逃げて後手陣の金を睨むように逃げる。
そこで私は待望の△45歩!!!これで何とかならないでしょうか!?
なら私もと先手も▲74歩とこちらの玉頭に狙いを付ける。△同歩には▲74同飛が王手銀取りなので仕方なく△82銀と守りを固めて、それなら私もと▲39銀と攻められている4筋に駒を足しつつ玉の退路を作る攻防。

第10図以下 ▲4八金 △5三歩打 ▲4四歩打 △3五歩 ▲3二銀打 △4四飛 ▲2三銀成 と進み第11図

第11図 何とか勝負形にすることに成功

第11図以下 △4五銀 ▲2四成銀 △同 飛 ▲3五角 △3四飛 ▲2八玉 △3六銀 ▲3七歩打 と進み第12図

第12図 角銀交換甘受で何とか攻める

後手の私は、角が死んでしまったので角銀交換は甘受して何とか玉頭戦で怪しく出来ないかと攻めを繋ぐ。
最後、第12図が問題の局面。ここは角が質駒になっているのもあるので、第一感は△27銀成でした。実際最善手も△27銀成だったようですが、後述の理由で踏み込めませんでした

(読み筋)第12図以下 △27銀成 ▲同玉 △35飛 ▲36銀 △54角 △46飛 で第12-a図

第12-a図 後手が技を掛けたように見えるが、46の歩を外され、▲41飛成もある。

第12-a図が読み筋の局面。最後▲41飛成の逆先手を取られており、攻めの継続手はないと判断しこの順に踏み込めず。
しかし実際には第12-a図はシンプルに△45銀と被せる手でも十分だし、△75飛と桂取りの先手で回る手もありどちらも後手優勢の形勢だったようです。
第12-a図まで進めばそう思えるかもしれませんが、脳内では▲41飛成の受けがなく、こちらの飛車も取られそう(実際には角が効いているのですぐには取られない)と思い断念。

終盤1 ~玉頭戦で一気に劣勢に~

第12図以下 △4七銀成 ▲7三歩成 △同 銀 ▲6五桂 △7四歩打 ▲7三桂成 △同 金 ▲4六角 と進み第13図

第13図 △47銀成の瞬間に先手に猛ラッシュを掛けられて自玉半壊に

第12図で△27銀成は攻めきれていないと判断し、シンプルな△47銀成で攻め合いに。玉頭の終盤戦では自力の差が出たのか一気に形勢を損ねた感触がありました。
▲65桂の局面は受けるとしても△74歩ではなく△75歩~△74歩と手番を握って受けなければならないところ。寄せの終盤は勉強したが、受けの終盤はまだまだという課題を感じました。
ここは受けずに△75飛と角を取って、△26歩▲同歩△27歩▲18玉(▲同玉には△54角の王手飛車)とする順もあり実際には難しい局面でした。
更にこれが見えなかったとしても、△73桂成には▲同桂と素直に形を崩さないように取るべきで、△同金は上部に備えた意味ですが、元々浮き飛車に構えており桂頭は守れているので、△同金はナンセンスでした。
最後お相手の▲46角も冷静な一手で、拠点の歩を払ってなおかつ飛車の横利きを復活させられてしまうとコチラの攻め手はもうないという状況です。

第13図以下 △同 成銀 ▲同 飛 △4五歩打 ▲2六飛 △2五歩打 ▲5六飛 △6五角打 ▲4一角打 と進み第14図

第14図 形勢がはっきりしてしまったか

先手は飛車の横利きが復活したので、▲46飛~▲26飛と飛車成を見せることで後手の持ち歩を削っていく。
こちらも先程の応酬で横からの攻めに弱くなったため、龍を作られるおしまいのため、ここは仕方がないが最後第14図の局面は、こちらの攻め手に乏しく形よく受ける手も少なくなっており、(先手の勝ち筋が)分かりやすい局面にしてしまいました。

第14図以下 △6二金 ▲2三角成 △5六角 ▲3四馬 △2九角成 ▲同 玉 △2六歩 と進み第15図

第15図 △27歩成まで入れば詰めろだが・・・

第14図では△62金と金を逃げるくらいですが、当然▲23角成。
△54飛と飛車を逃げてしまうと▲36飛と飛車を逃げられながら桂取りで今度こそ一巻の終わり。
飛車を取り合って最後△26歩とお願いの歩を突くが・・・

第15図以下 ▲5一銀打 △6一銀打 ▲2二飛打 △投了

投了図

第12図の△47銀成の局面はまだ際どく互角だったようですが、そこから緩手が連発し一気に詰みまで討ち取られてしまいました。互角の将棋がたった数手で敗勢になるから終盤は難しい。
終盤力が詰将棋だけだと思っているとこういう痛い目を見ます

一局の総評

序盤は中飛車党対三間党が戦うとよくある局面と行った形です。
そこから持久戦になると向かい飛車に振り直した側は△44角を上手く活用する必要があるのですが、中盤の駒組みの甘さで作戦負けの中盤になってしまった印象があります。
終盤の入る直前は、角銀交換の決死の攻めで勝負形になった局面がいくつかありましたが、終盤戦に入ってからは先手を取る受けや、手抜いて攻め合うタイミングを逸して一方的な展開になってしまったという将棋でした。
主に中盤と終盤の弱さを再認識できる良い対局ではあったと思います。
Safiniaさんありがとうございました。

結論

終盤は駒の損得より速度。とにかく手番。


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