【通信将棋自戦記】VS ramhomeさん

はじめに

  • まぁまぁ長いので文章を読むなら何回かに分けるか暇な時に読むのをおすすめします

  • 盤面図を多く載せてるので、それだけ目で追う方が読みやすいかも

対局相手の印象など

本記事は、将棋V界隈では有名な居飛車党過激派ことramhomeさんとの通信将棋の自戦記になります。

ramhomeさんと指すのは(多分)初めてで、他の配信でVの方と友対をしてるのを何度かお見掛けしてますが、かなり強い方という印象です。(81dojo五~六段 ウォーズ四段?間違えていたらすみません)

普段のおちゃらけたチャットコメントからは想像が付かない緻密な序盤派であり、しかし定跡派という訳ではなく主張のある序盤展開により勝ちやすい将棋を組み立てていく研究派という印象(香月の憶測です)
変なコメントをよくする人は将棋が強いという法則があります。

そんなramhomeさんの対中飛車ウェポンは何なのか?居飛車党の人必見です。
中飛車党の人もこの記事を通して、中飛車ってどこにメリットのある戦法なんだろう?と考え直すキッカケになるような良い棋譜なっていると思います。

なお、棋譜は下記から閲覧できます。
https://lishogi.org/hya4nzlj/gote

最序盤 ~中飛車の天敵 3手目▲25歩~

▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩(第1図)
と進み下図に。

第1図 ゴキゲン中飛車の天敵 3手目▲25歩

後手番がゴキゲン中飛車を指向する場合、3手目▲25歩がやっかいです。ゴキ中に組めなかったり、組めても少し損な局面になります(具体的には一手得した丸山ワクチンに合流する。※後述)
とはいえ、自分の経験を試す意味でもそのまま中飛車指向で行きました。

序盤 ~戦型は角交換中飛車に~

第1図より△4二銀 ▲4八銀 △5四歩 ▲3三角成 △同銀 ▲8八銀 △5ニ飛 と進み第2図

第2図 角交換型のゴキ中

第1図から後手がゴキ中を指向するとこのような局面になりがち。
実はこの局面は先手が一手得した旧型丸山ワクチンの形になっています。
(丸山ワクチンと比べて後手が△33角と一度上がっているため)
中飛車は△55歩~△56歩で飛車先の歩交換をしたいのですが、△55歩とした瞬間に▲65角と打たれ馬作りを防げないので、△62玉~△72玉の二手は入れておく必要があります。そうすると居飛車も▲46歩~▲47銀が間に合うので、結局後手は5筋交換ができず真ん中にいる飛車が微妙な感じになります。

序盤2 ~オーソドックスな片美濃囲いで対抗~

第2図以下 ▲4六歩 △6二玉 ▲9六歩 △9四歩 ▲4七銀 △7二玉 ▲6八玉 △8二玉 ▲7七銀 △7二銀 ▲3六歩 と進み第3図

第3図 先手??? 後手は片美濃囲い

こちらもひとまず王様は囲いたいので片美濃までは組んで第3図に。
中飛車から主張を求めにいくなら早めに△22飛と回って逆棒銀を見せる手がありますが、△22飛の瞬間に▲53角と打ち込まれたり、そもそも逆棒銀が個人的に好きじゃない(笑)ので中飛車のまま駒組みしました。

この辺では将来△44銀や△13角や△64角などから手を作っていけるだろうと楽観的に捉えていましたが、ここから少しずつ中飛車側に指したい手がすくなっていきます。

序盤3 ~角交換振り飛車殺しの地下鉄飛車~

第3図以下 △5一飛 ▲7八金 △1四歩 ▲3七桂 △3二金 ▲3八金 と進み第4図

第4図 先手は地下鉄飛車狙いの駒組み

先手は▲68玉型でバランス良く構えて▲29飛から飛車を左辺に使う地下鉄飛車狙いの駒組みでした。
中飛車に地下鉄飛車を使う人にあまりおらず(対四間飛車でへなちょこ急戦から持久戦シフトする際や、角交換四間飛車の持久戦に対して使う人が多いイメージ)、やや経験不足が祟りそうな雰囲気を感じていました。

もたもたしていると地下鉄飛車にされて、9筋集中砲火が来るとは思っていましたが、それが分かっていても中飛車側から反撃のための攻めの態勢を組み立てをするのが少し難しいなとこの辺りで感じるようになっていました。
とはいえ第4図は水匠5評価値は+193と先手寄りながらほぼ互角らしい。

解析すると最善手は△64歩、次善手は△55歩、次々善種は△44銀とのこと。
実はこのいずれも候補手には入っていましたが、以下の理由により却下してしまいました。
△64歩 ・・・無難だけど一手パスに近いと思い却下
△55歩・・・5筋交換ができないので△55銀の含みを消すだけと思い却下
△44銀・・・やりたい手だけど▲24歩と飛車先の歩交換をされる変化に自信が持てず断念

そこで考えた私は、「序盤は作戦負けだ。玉型を整備して中終盤に期待しよう。地下鉄飛車は端を狙ってくるから、端に強い銀冠にしよう!手始めに△84歩だ!次に△83銀としよう」と考えます。
しかしこの上部に厚い囲いに発展させようという判断が大間違いでした。
この囲いの発展が得にならないという感覚が本対局で得た教訓かもしれません。

序盤4 ~地下鉄飛車が刺さる展開~

第4図以下 △8四歩 ▲8六歩 △8三銀 ▲2九飛 △7二金 ▲6六銀 △7四歩 ▲7七桂 △1五歩 ▲8九飛 △4四銀 と進み第5図

第5図 9筋に備えようとした結果、銀冠の弱点である8筋を狙われる展開に・・・

△84歩と銀冠への発展を目指す手に対して、銀冠崩しの態勢を整える▲86歩!これが予測できていなかった手で▲86歩を見て不利を明確に意識し始めました。
地下鉄飛車は9筋だけじゃなくて8筋の攻めもあるよ。ちなみに水匠5による最善手も▲86歩です。銀冠はこう崩すのね。
途中△15歩は一手パスして▲89飛と回ってもらってから△44銀と出ようという狙いでした。

第5図以下 ▲8五歩 △同 歩 ▲同 飛 △8四歩打 ▲8九飛 △5五銀 と進み第6図

第6図 やることないので取り敢えず銀をぶつけてみた

先手は自然に8筋の歩を交換。このときに桂馬も駒台に載せられる展開は嫌だと思い△73桂は敢えて保留していました。
ここからなんとか相手の桂頭を攻める展開にならないかと模索していましたが見つからず・・・
あまり特になる手が分からずとりあえずで△55銀とぶつけてみました。
とはいえここらへんはやや不利の範疇内で、悪手を指さなければ勝負はできると考えていました。

第6図以下 ▲5八玉 △4四歩 ▲6八金 △6二角打 と進み第7図

第7図 なんだこの角は~~?

△55銀に▲同銀でもよく分かっていませんでしたが、5筋の歩が伸びるのも先手としては癪かもしれません。
しかし、▲同銀△同歩に▲86銀!と銀冠の頭を執拗に狙いに行く手を私は不安視しており、自信はありませんでした。
▲58玉に対して△66銀と取ってしまう手は、相手の玉の懐を広げてしまうのと後に桂頭を攻める味がなくなってしまうと思い、後の△45歩~△44歩を含みにするために△44歩と突きます。
▲68金に突然謎の角打ち△62角!実は△62角は数手前から指すか悩んでいて、前述の銀交換から▲86銀という銀の打ち替えをかなり気にしていました。それを受けるための角打ちなのですが、△44歩と指したせいで角の働きが悪く手の関連がチグハグになっています。
いかにも悪手に見える角打ちですが、水匠評価は依然+400程度らしい。

中盤 ~ようやく中盤戦の幕開け~

第7図以下 ▲2九飛 △6六銀 ▲同 歩 △5五歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △4五歩 と進み第8図

第8図 長引いても悪くなるだけと思い突撃

いかにも悪手くさい△62角に見向きもせず▲29飛と戻る手が冷静。
強い人は自分からは転ばない
▲24同飛には△23歩と受けるのが自然だと思いましたが、以下▲34飛△43銀▲35飛のように進んだ時に、せっかく交換した銀も手放すのでは辛いと思い断念しました。
しかし▲35飛には△45歩が角で飛車取りになるのでこちらの方が暴れ甲斐はあったかもしれません。
なお、△23歩▲34飛には△33桂と節約して受ける手が最善のようで、次に△43金から持ち駒の銀で飛車を殺す順があったようで、△23歩は屈服した手に見えながら横歩を取りにくく、▲29飛と戻るのが最善でそう進めば先手有利(+500)らしい。横歩取る変化は互角。

第8図以下 ▲同 桂 △1六歩 ▲6五桂 △2三歩打 ▲3四飛 △4三銀打 と進み第9図

第9図 飛車を貰って一勝負させて貰えませんか?

△45歩の返答は・・・▲45同桂!
こちらも角道を通したので序盤に指した△15歩を活かすためにも△16歩と端に狙いを付けましたがやはり緩手感が否めない。
△16歩を緩手と看破され、すかさず△65桂!!

57手目▲24同飛局面 と 61手目▲65桂局面
わずか4手の間に「序盤作戦負け」から「中盤劣勢」になる様子

この△65桂を見て劣勢(なんなら敗勢)を意識し始めます。61手目の▲65桂は次に、▲53桂成右△同角▲同桂△同飛▲21飛成!!という狙いがあるので、△23歩と受けるしかありません。ニ枚の桂馬が中央に跳ねれて悪いワケがない。
最後第9図まで進み△43銀と打ち飛車を貰ってナントカ勝負できないかと考えていました。

終盤1 ~自玉だけ終盤に~

第9図以下 ▲3二飛成 △同 銀 ▲4二銀打 △5四飛 ▲5三桂成 と進み第10図

第10図 飛車は貰ったが、金駒がないので・・・

第9図の局面は▲32飛成と切る一手。しかし飛車を貰ったのでもう一枚金駒が貰えれば勝負できそうと思っていましたが、あいにく桂馬2枚で攻められているので金駒は入手させて貰えず。
△42銀に対して、ニ枚飛車を夢見て△54飛と浮きましたが、△53桂成右がシンプルに飛角両取り。せめて△71飛など取られにくい場所に逃げておく方が良かったようです。

終盤2 ~飛車を手にしても時既に遅し~

第10図以下 △同 角 ▲同 銀成 △同 飛 ▲同 桂成 △2九飛打 と進み第11図

第11図 さすがに攻め駒が足りない・・・

精算して最後△29飛と持ち駒に銀を蓄えて飛車を下ろしました。
雰囲気はある飛車打ちですが、次に△49銀と打てたとしても▲67玉と逃げて全然駒が足りていない形。なんなら▲48玉でも寄ってなさそう。

第12図以下 ▲4二飛打 △4九銀打 ▲6七玉 △3八銀 と進み第13図

第13図 最後は形作りもできず大差となってしまった

▲42飛を見て負けを確信しましたが、もう少しだけ望みを託し念願の△49銀を打ちます。第13図の局面で実は後手玉に即詰みがあり見えていましたが、もはや適当な受けもなく寄せきって貰うことしかできず。

第13図は次に▲71角という王手があり、飛車が利いてるため△同玉しかないのですが、▲62金と露骨に打っていく手があり、△82玉と逃げるよりないですが、そこから72地点でバラして▲72金△同銀▲72同飛成△同玉の局面で、先手に角金銀の3枚を持たれており、▲61角からピッタリ詰んでしまいます。

第13図以下 ▲7一角打 △同 玉 ▲6二金打 まで82手目に投了

投了図

一局の総評

序盤戦がかなり長い将棋で徐々に駒の働きでリードを奪われ、中盤が始まってからは培われた駒の働きで一気に駒得を取られて、終盤に入った頃には手も足も出ないという将棋になってしまったと思います。

序盤は終始やや不利ではあったものの、「飛車と攻めの銀」の働きで常に負けておりこれを序盤戦でどうにか改善しないと、中盤で間違えやすい将棋になっていたと思います。終盤は勝負所はなく、延命するだけの手はあるけどという感じの印象です。

黒羽師匠による棋譜添削

まず序盤の展開について、「この形から中飛車にするのは良い展開になりにくい」とのこと。あらあらまぁまぁ。

そして中盤の展開について。黒羽先生もこの将棋を指しやすくするには相当ガチな研究が必要とおっしゃっていて、数日後これなら中飛車もやれなくはないのではという順を教えてもらいました。
詳細な手順はここでは掲載しませんが、下図のような態勢を狙っていくらしい。(教えてもらった順とちょっと違うかも・・・ちゃんとメモ取っておけ~)

こういう順を狙っていく
▲28飛が自然だが、△46銀▲同銀△38角成▲同飛△47金が一例 でもまだ難しそう。

他には△55銀と決めずに△74角を打ってから△35歩▲同歩△同銀とする手や、△64歩と突き角の逃げ場を作っておく手などがある。

とはいえ、黒羽さんに聞いて「ここはこうするんだよ~」とすぐに答えが帰ってこない局面は多分もう難しいのだと思います。他の棋譜添削は大体即答で答えが返ってくるので。

検討手順は他にも沢山あるのですが、自戦記なので棋譜と局面図がメインというところでこの辺で終わりにしたいと思います。

結論

角交換振り飛車には地下鉄飛車が最強(再確認)

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