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Golden Dead Schiele 感想

Golden Dead Schiele 感想

2024/1/24~2/4 宝塚バウホール
初日と2日目に見ました。

※ネタバレしています。肯定的な感想以外も含みます。

(良かったところ)
・主演の彩海さん始め、皆さん演技も歌も上手い!全くストレスなく見られる。安定感は抜群。ヒロインヴァリ役の白河さんの歌声は癖もなく、役幅も広くて、今後の月組で大いに活躍される予感です。
    師匠夢奈さんクリムトと語り部の英さんも、がっちり脇を固めている。
・死の影、彩音さんの存在感!冒頭、シーレだと思ったら誰??なのはとても印象的。目力があり、ダンスの名手なのを上手く活かしていました。途中、ちょいちょい登場するタイミングも良かった。セリフないかと思ったら、シーレと少しだけ会話があり、その不気味さも効果的。

・物語と脚本に破たんはなく、分かりやすい。
・演出も綺麗だなあと。本作は、熊倉先生画家シリーズ第2弾ですが、前回の『ベアタベアトリクス』に比べ洗練されていたのように感じました。美しくて良い。
    また、前作では肝心の絵が出てこなかったのですが、今回は冒頭と最後に『死と乙女』(オーストリア絵画館所蔵)大きく登場して良かったです!やはり、実際の絵を見ると視覚的に訴えかける力が違う。
   ベアベアも、タイトルにもなったロセッティ『ベアタ・ベアトリクス』、『プロセルピナ』、ミレーの『オフィーリア』くらいは出して欲しかった。
    今回、シーレの素描などもちょいちょいアトリエに出てきたりして、分かりやすくなっていました。
    他方、師匠であるクリムトの絵は、ごく一部しか出てこない。代表作『接吻』は名前だけ。アトリエでは、クリムトの画風を匂わせる一部分だけが示されていて、雰囲気だけ伝えるのがまた心憎い。
    油絵のタッチを思わせる家など、舞台装置もステキでした。

・ヒロインヴァリと妻エディトの対比が、良かったです。ヴァリは、下級層出身で懸命に生きながら最後までしっかり自分を持っている女性で好感が持てる。それでいて、シーレが結婚してくれないことに不安を抱いてるのがリアルでした。
    エディトの、わたしと絵とどっちが大事なの??なヒステリー場面は上手いなあと感心。もう少し、妻の人柄が分かるよう出番があっても良いとは思いましたが。

・フィナーレは、夢奈さんゼロ番黒燕尾もあり(ファンの方は感無量かと!)、軽快で可愛らしい始まりのデュエダンも好印象でした。

(気になったところ)
・全体サラッとしてて薄いと感じました。上手くできてはいるけど、心を動かされたり感じるものは、私は無かったです。
    シーレは何かしら苦悩しているのですが、その理由があまり伝わってこない。彼の人生の何が悪かったかな?父親が早くに亡くなったのは残念だし、絵が評価されないのはしんどかったとは思いますが、金持ちのワガママ息子にしか見えない。辛かったのは、絵描きになるのを家族に反対されたことくらい。その点も母親は、アカデミーに入った10代後半くらいには許容してる。それなのに、何も言わずに勝手にアカデミーを辞めてるし。
    この話は、シーレが『死と乙女』をどうして描くに至ったかを描きたかったのでしょうが、彼の人生を伝記的に追っている場面が多く、冗長に感じました。恋人が亡くなった、死に追い込んだのが自分だ、そこをもっと掘り下げたら良かったのでは?『死と乙女』が、人生振り返りのオマケみたいに見えたのが残念です。

・死の影はとても印象的なのですが、なぜそんなに昔からずっとシーレに付きまとっているのか謎でした。父親は死んでるけど、そこまで絶対存在で、依存していたようでもないし、理解ある母親と妹、しっかりした後見人もいる恵まれた家庭環境なのになぜ?でした。
(追記:ご教示頂いたのですが、宝塚公式ホームページ作品解説によると、シーレは、少年時代に姉と父親を亡くしているとのことでした。調べてみると、エルヴィラとメラニーという姉が2人とも10歳で、父親はシーレ15歳の時に梅毒で亡くなったようです。私は、舞台からは感じませんでしたが、そのような事情があっての死の影だと。一部訂正しました。)

・悪い人が誰もいないのも薄い。クリムトは、ほぼ隠居の好々爺でただの良い人。シーレも善人。私の知ってる画家たちは、今の倫理観で言うとかなりゲスなので、何か違う感じでした。クリムトなんて、モデルに手を出しまくって10人以上子どもがいたのに誰とも結婚してないような人ですよ?!それが、ヴァリの父親気分って……良い人すぎてびっくり。見た目も綺麗な路上生活者みたいでした(←すみません💦)。カッコいいクリムトも見たかった……。
    シーレの未成年者誘拐エピソードも、善意が誤解されただけとして描かれています。あのエピソードが取り上げられた理由も不明でした。シーレの人生の一大事だから?シーレの絵は、何となく不安感を抱かせるようなものですが、その雰囲気な薄かったような。
    wikiによると、シーレは結婚後もヴァリとエディト両方と関係を続けようとして、呆れたヴァリが去ったことになっていました。姉とアデーレとも関係していたとの話もあり...…。おや?
    もう少し、ゲスで、破滅的で、不安定な彩海シーレが見たかった気がします。そういうお芝居も上手くできそうですし。
    とにかく、緩急があまりないように感じました。もうちょい、尖った舞台を予想していました。
    余談ですが、史実的には『死と乙女』の制作年は1915年で、ヴァリの死(1917年)より前です。

    とか色々書いてしまいましたが…。
とにかくきちんとした作品を作られる方なので、若手演出家として、熊倉先生の今後には大いに期待しています!次作も、楽しみです✨

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