秋の浮世絵展示替え
前回のブログ投稿からかなりの時間が経ってしまい申し訳ありません。
おかげさまで夏の繁忙期を無事に乗り切ることができました。
死ぬかと思いました(嘘)。
現在、私は厨房で料理長も兼務しており、フロント(事務所)やホールを行き来しながら、走り回っています。
今年は7・8・9月の平均気温が観測史上最高を更新したと、ラジオで聴きましたが、成程、死ぬかと思った一因です。
お彼岸の雨で暑さが落ち着き、これからひと雨ごとに寒くなっていきます。
今回は、9月に秋のイメージに展示替えをした、館内の浮世絵ギャラリーについて綴ります。
とはいえ内容については先日投稿したインスタグラムからの引用ですが、わかりやすいと思うのでブログでも紹介したいと思います。
よくお客様から「本物の浮世絵ですか。」と訊かれますが、すずらん颯ギャラリーに展示している浮世絵は全て江戸時代の本物です。
季節ごとの展示替えは、退色を避けるためでもあるのです。
まずはギャラリーの左側です(写真)。
私たち日本人は古来より月を愛で、月に美を感じ、月に何らかの憧れを抱いているのかもしれません。
月と舟をテーマに、拙ブログ「五井野博士と男の子の話」で紹介した2点を含めた、若君一行が秋の夜を楽しむ浮世絵を展示しました。
そして、歌川広重「五十三次名所図会」のシリーズから船の絵を。これらはゴッホが生前収集し、現在はオランダのゴッホ美術館に所蔵されている浮世絵と同じ絵です。
浮世絵は木版画、1日に200枚程摺りますので、現在は同じ絵が世界中に何枚残っているでしょう。
また、ゴッホはこれらの絵を観ては日本への旅立ちを夢想していたのかもしれません。
お客様も、ゴッホの小舟での旅立ちを夢想していただくことかできるなら幸いです。
月へ行きましょうか?
それとも美しい次の地球へ?
駒ヶ根高原の山々はこれからむせるような紅葉に染まるのです。
中央には、駒ヶ根高原の紅葉に倣い、秋らしい紅葉と菊の芝居絵を置きました。
主に19世紀前半、文化・文政・天保の頃の絵です。
浮世絵の配色が鮮やかになるのは、国貞が豊国を襲名した弘化元年(1845)あたりから。
それまでの浮世絵は、色が残っていればこのように中間色の、草木染めのような淡い色合いです。
それもまた枯れゆく秋らしいのでは、と。
3点全てに駕籠(かご)があります。
実はすずらん颯には、江戸時代のものなのか、本物の駕籠があるのです。
この展示を機に皆様にお披露目しようと、只今メンテナンス中です。
そうは言っても、曽祖父の残したダットサンをオートマチック仕様にする、とか、誰かが拾ってきた昭和初期のピアノを真新しい音色と光沢を放つ新品同様にする、というものではありません。
汚れを落とし、古い未使用の茣蓙(ござ)などを活用して、お金を掛けずにスタッフやお客様と楽しみながら修繕しているのです。
駕籠の展示の際にはブログでも紹介しますね。
右側は、その色彩鮮やかな時代、弘化年代以降の浮世絵です。
歌川にあらずは浮世絵師にあらず、と言われたほどに歌川派の隆盛を極めた時代の作品。
この頃の浮世絵が世界のアートシーンにどれほどの影響を与えたでしょう。
これらの作品の頃より約200年前、菱川師宣が版本に描いた挿絵が浮世絵の元始めとされています。
が、その浮世絵史の中で、この鮮やかな色彩、デザイン、繊細な彫りと摺りの技術が見事に調和した作品が生まれる時代は、最後の、幕末のわずか20数年間だけなのです。
是非ご来館頂き、間近で髪の毛や着物の柄まで、ゆっくりとご覧になって頂きたく思います。
最後に、友人のブログに浮世絵の詳しい説明がありますので、リンクを貼ります。
読んでみてください。