日本製鉄によるUSスチール買収騒動とは!

製鉄会社の買収騒動は、いったい何が目的なのでしょうか?

では、及川幸久氏の解説をご覧ください。




「日本製鉄のUSスチール買収にトランプは反対【及川幸久】」


トランプは反対派

選挙中からトランプは日本製鉄のUSスチール買収に反対だった。
大統領になったら阻止すると公言。

USスチールを元の世界一の企業に戻すのがトランプの目的。

ハリスとトランプは意見が一致

ペンシルベニア州での争点の一つだった。
両党とも、買収反対で一致していた。

USスチール

1901年創業。
米国発の10億ドル企業。
雇用:4000人
間接雇用:11000人
地域経済への貢献:36億ドル

バイデンは阻止に動いていた

9/4、ワシントンポスト
バイデンは、日本製鉄によるUSスチール買収阻止の準備

対米外国投資委員会(CFIUS)

民間の買収が国家安全保障上の問題があるかどうかを審査。
CFIUSは問題があると判断。
法律上、大統領はCFIUSの最終報告書を受け取った後に民間取引を停止できる。

経営陣と労働者

USスチール、日本製鉄の経営陣の話はついていた。

労働組合は買収賛成の集会をしていた。

株価急落

9/4のワシントンポストの報道後、USスチールの株価は30分で4分の1を失った。
一日で17.5%下落。
ウォール街は、買収は良いことだと認識していた証拠。

※ 9/4に急落した翌日から9/20までに全戻ししています。

「USスチール株が20%以上急落、日本製鉄による「買収阻止」報道で」

経営状態

収益で全米3位の鉄鋼メーカー
雇用は過去20年で半分。
過去15年のうち、9年間は赤字。

USスチールのCEO

取引が破談となれば、雇用が数千件も危機にさらされる。
本社がピッツバーグに居られなくなると警告。

日本製鉄の投資

雇用と年金を守る。
27億ドルで米国最大の製鉄所ペンシルベニア州とインディアナ州の工場を近代化。

USスチールにとって、経済的には有利な取引だった。

CFIUSの評価は妥当か

日本は米国の同盟国。
5.5万人の米軍が駐留。
米軍の鉄鋼需要はGDPの3%に過ぎない。
USスチール自体が国防に不可欠ではない。(米軍との取引なし)

すでに投資している

日本製鉄はすでに米国の中小鉄鋼企業に資本参加している。
約4000人の米国人雇用がある。

合併成立の効果

中国鉄鋼企業との競争に勝つ。
世界3位の鉄鋼メーカー誕生。

「首位は断トツ「世界鉄鋼メーカー」ランキング」

※ 画像は東洋経済の記事から引用

1位:中国企業1.3億トン
2位:ルクセンブルク0.6億トン
3位:中国企業0.55億トン
4位:日本製鉄0.44億トン
5位: 中国企業0.41億トン

27位:USスチール0.14億トン

トップ10に中国企業は6社合計3.4億トン。

買収のアドバイザー

日本製鉄は、第1次トランプ政権の国務長官だった、マイク・ポンペオにアドバイザーを依頼していた。
トランプ大統領が復帰した場合の説得役を期待していたが、それもどこまでできるか分からない。

トランプ政権2.0と強いパイプを持っている、ロバート・エルドリッヂ氏に話を聞くと、「この取引は難しい。これはトランプ政策の象徴的な会社なので許さないのでは」という見方もある。

「ロバート・D・エルドリッヂ」

日本でも言論活動で活躍している方。


「日本製鉄のUSスチール買収をバイデンが阻止, トランプが再考するか【及川幸久】」


大統領令

「日本製鉄 橋本会長 USスチール買収“決してあきらめず”」

バイデンが大統領令で買収禁止命令を出した。
これはUSスチールにとっても大ダメージ。(143億ドルの取引)
トランプもこの買収には反対していた。

ただ、アナリストの見方では、トランプ政権2.0になれば買収禁止令を取りやめるかもしれないらしい。
アメリカ側の多くの人は、「法律を悪用しながら同盟国を裏切る行為」と思っている。

USスチールCEO

2025/1/3
バイデン大統領の判断は恥ずべきで、腐敗している。
USスチールと社員の未来、国家の安全保障を損なうものだ。
バイデン大統領は経済、そして国家安全における欠かせない味方である日本を侮辱した上に、アメリカの競争力を危機に晒している。
今頃、北京の社会主義者どもは小躍りしているだろう。

合併すれば世界4位の製鉄会社。
それをバイデンが潰している。

CEOのポスト
「経営難に陥っている会社をより強い会社に売却することを阻止することは、USスチールの残余の価値を奪うだけであり、日本製鉄が約束した数十億ドルの資金注入を阻止することで、残っている従業員に損害を与えることになる。」

「買収阻まれた日鉄、展望は USスチールCEOも反発「日本を侮辱」」

時代は変わっている

アンドリュー・カーネギーの時代のような業界リーダーはもはやいない。
雇用のピークは1943年。
生産のピークは1953年。
主要顧客は自動車会社や家電メーカー。
かつてのような軍需産業やインフラ産業ではない。

「アンドリュー・カーネギー」

外国投資に影響

将来の米国企業に対する投資に影響。
USスチールは、27億ドルの投資を得ないとピッツバーグ近郊の製鉄所を閉鎖せざるを得ない。
中国が世界の鉄鋼業界でさらい影響力を強める。

日本の投資規模

2023年、日本の対米直接投資は7833億ドル。(約123兆円)
米国市場に対する最大の海外投資国。

米国商工会議所

この決定は、アメリカへの国際投資に冷や水を浴びせかねない。
重要かつ信頼できる同盟国である日本の投資は、アメリカ国内だけでも100万人近い雇用を支えている。

対米外国投資委員会(CFIUS)

USスチールが国家安全保障上のリスクを及ぼすかどうか意見を一本化出来なかった。
その判断を大統領に委ねていた。

国家安全保障上の脅威における判断をCFIUSが判断しない限りは自由な取引が出来るはず。
バイデンの決定は、外交的政治的要因が純粋なビジネス戦略よりも優先されるというシグナルを外国企業に送ることになる。

トランプ政権はどうする?

この合併に反対しているトランプ政権。
ペンシルベニア州の労働者のために再考することを望んでいる。
労働組合のリベラル派上層部は合併に反対だが、その他の労働者全員は合意を支持している。

トランプは明確に反対意見を持っている。

一方、トランプは、ソフトバンクによる米国への1000億ドルの投資を宣伝することで、日本の投資に対する打撃を和らげた。
最近、トランプが外国投資家へメッセージを送った。
「ビジネスはオープンだ」と。

トランプの考え

税制優遇措置と関税を通じて、USスチールを再び強く偉大なものにする。
そして、それはすぐに実現する。

大統領令無効化

CFIUSが取引破棄までの30日間という期限を延長すれば、この取引はまだ可能性が残されている。


まとめ

状況
日本製鉄(世界4位)が、USスチール(世界27位)を買収する合意をしていた。
バイデン大統領が、大統領令で阻止をした。
トランプ次期大統領も合意に反対姿勢。
破談は確定したわけではない。
これからどうなっていくのか?

個人的総評

2024/9/4の大統領令検討の報道で一時は20%以上の急落を見せましたが、9/20には急落前の水準に戻しています。
さらに、2025/1/3にもバイデン大統領は買収阻止の決意を表明し、株価は6%下落。
しかし、2日間で元の株価を回復

つまり、報じられるたびに下落するもすぐに回復する。
まさに小躍りしているのは投資家たちです。
2014年高値から二度も一桁台の株価となり、月足ではレンジ相場
47ドル付近の抵抗線を上抜ければ、株価上昇は必至のチャートを作り出しています。

日本製鉄がUSスチールを買収する理由は何でしょうか?
日本製鉄は生産量では世界4位0.44億トン、USスチールは同27位0.14億トン、合併で世界3位0.58億トンになったところで、中国企業群6社で3.4億トンには遠く及ばない。
日本製鉄は、「雇用と年金を守る」と言っています。

果たして本当でしょうか?
USスチールは直近7年間で純利益がマイナスだったのは2回。
直近3年は純利益プラスを出しています。
しかも、配当は高くないですが毎回出ています。
業績不振、援助が必要な状況とは思えません。
経営が危機的状況であるならば、配当などもちろん出さないはずです。

※ 下記は、USスチールの業績

一方、外資ファンドの日本企業の買収では、何が起こっていますか?
セブン&アイ・ホールディングスは、利益の薄いセクターを売却させられ、株価上昇のためのコストカット、人件費カットを行い、高値で売り抜けようとする。
日本人労働者は、そんな株主のために苦境に立たされるのです。

「自公政権によって日本企業が売却されるロジック!」

バイデン政権とウォール街は裏で繋がっている可能性は高い。
なんせ、ウォール街がもっとも資金提供しているからです。
両党に資金を出しているのですが、8:2くらいに隔たっているのは事実。
メディアを牛耳っていたのも民主党。

バイデン大統領とトランプ大統領の思惑は全く別物です。
であれば、バイデン政権のやったことは最初から出来レース。
そして、わざわざ日本企業にお金を出させて私腹を肥やす算段の可能性もある。

宗主国と属国の投資の結果には、これだけ違う背景があるということに気付かなければいけません。

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